482: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/04/02(金) 00:07:58.52 ID:+Do7/IBY0


ドナルド・キーンが京都に留学生として下宿していたときのこと。
「或る晩のことです。十五夜で、それはそれはきれいな月の晩でした。
私は大学からの帰り途、
その月を見上げて惚れ惚れしながら京都の町を歩いておりました。」
キーン博士は思ったのだそうだ。こんな月の光に照らされた竜安寺の石庭はさぞ美しかろう。
是非見てみたい。博士はその足で竜安寺へ向かった。当時(大戦前)の京都の寺はいずこも
終日門が開いていて、人の出入りも自由だったという。





「私は竜安寺の門をくぐって本殿に入り、あの有名な石庭を前にした縁側に座り込みました。
月光に照らされた石庭の美しさ。私はしばらく身動きができませんでした。 
三十分、いえ小一時間ほども私はぼんやりと庭を眺めていました。 
もう十分すぎるほど石庭に見惚れた後です。 
ふと傍らへ目をやると同時に私は驚きました。 
いつの間にか私のそばに、一杯のお茶が置いてあったのです。 
誰が?いつの間に?どうして? 
想像するしかないのですが、おそらくお寺の誰かだったのでしょう。 
外国人の若い学生が石庭に見惚れているのを見て、邪魔をしないように、 
そうっとお茶を置いていってくれたのです。私は、とても感激しました。」 
こんなもてなし方ができる民族は日本人だけだ、と博士は思ったそうである。 
「そして、だからこそ私は日本のことが大好きになりました。」