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野田が増税に命を賭けるなら、さっさと死ぬのが日本国民の幸福

「苫米地英人のブログ」から。
彼のブログ内の人気記事のようだから、既に読んだ人も多いだろうが、論理明快であり、猿でも分かる増税否定論なので、ぜひ拡散したいものである。


(以下引用)


2012年02月10日00:38
デフレ不況時の増税は最悪の選択だ。
これからこのブログを通じて、最近私が考えていることを不定期でまとめて発信しようと思っている。 時間があまり取れないので、私が話したものをクラブ苫米地にまとめてもらうスタイルだ。質問や意見はfacebookのアカウントにして欲しい。ツイッター140文字程度の意見は受け付けない。

デフレ不況時の増税は最悪の選択だ。

 市場に流通しているお金の量は、その国の経済規模(GDP)に応じて調整する必要があります。たとえばGDPが伸びている場合、新たに市場へ資金を供給しなくてはいけません。経済規模が拡大しているにもかかわらず資金が供給されないと、人材や設備などの投資にお金が回せなくなってしまいます。このように本来必要な資金が市場で足りていないために不況に陥っているのが、いまの日本の「デフレ不況」の構図です。

 市場に資金が供給される仕組みについて、簡単な例で解説しましょう。たとえば、土の中から「金」を掘り出すコストが10万円だったとします。それが100万円で売れた場合、新たに生み出される価値は90万円。GDPとは付加価値そのものですから、90万円はそのままGDPの伸び率につながります。では、その90万円に対するお金は、どこから来るべきでしょうか?

 これまで世の中になかった価値が生み出されたわけですから、すでに刷られている(市場に流通している)お金でその対価をまかなうべきではありません。新たにお金を刷って供給する必要があるのです。それが90万円。それ以上でも以下でもダメ。たとえば80万円分しか刷らないと市場に資金が足りなくなってデフレになり、100万円分も刷ると資金が過剰となってインフレになってしまいます。

 したがって、前年度のGDPが伸びていれば、それに合わせて新たにお金を刷る、というのが経済の原則です。これを忠実に守っている国は、インフレもデフレもありません。「インフレになる」「デフレになる」というよりは、これがインフレ・デフレの定義なのです。

「いまはデフレです」と言うと、必ず「そんなことはない。物価は上昇している」と反論する人が出てきます。たしかに、円高にも関わらず電気や原油の価格は上昇している不思議な価格上昇は事実ですが、これは個々の価格の上下動に過ぎません。「インフレ=物価の上昇」と勘違いしている人もたくさんいるようですが、マクロ経済では「モノ」といったら、すべてのモノとサービスの合計であり、「カネ」といったら市場に流通しているお金の合計のことです。個々の企業の業績、物価の上下動などはミクロ経済の発想なので、それらの合計指標としての物価の上下動と国家単位の現象であるインフレ・デフレとは、同列には語れません。お金を刷り過ぎて、すべての「モノ」に対して相対的に「カネ」の価値が下がるのがインフレ、逆に供給不足で相対的に「カネ」の価値が上がってしまうのがデフレです。つまりインフレ、デフレはお金の価値の下がったり、上がったりです。価値が変動するのはお金の方で、「モノ」の価値がお金の量で変わるわけがありません。インフレやデフレは、本来あることがおかしいのです。

 インフレやデフレは、市場に投入された資金の量で決まります。それがマネーストックです。マネーストックが上がったり下がったりする要因は単純で、中央銀行が新たにお札を刷るからです。これが民間銀行に供給されれば、BIS(ビス)規制下で中央銀行が刷った分を1とすると、民間銀行は理論的にその12.5倍のお金を貸し出すことができます(この比率を貨幣乗数と呼ぶ)。実際にはバーゼルIIIによって新たな規制が加わったため、7~8倍までしか融資できなくなりましたが、それでも中央銀行が新たにお札を刷れば、その何倍もマネーストックを増やすことができるのです。

 いまの日本でマネーストックが縮小している理由は、日銀が刷ったお金を本来は何倍にも増やさなくてはいけないはずの銀行が、逆に貸し渋りや貸しはがしをしているからです。その元凶はなにか?

 もちろん、BIS規制です。

 日本はBIS規制をまじめに受け入れたからデフレ不況になったのです。しかも、ヨーロッパでのめちゃくちゃな経済運営の例にみるように、世界中どの国よりも忠実に運用しているために不況が激しいという、じつに皮肉な状況に陥ってしまいました。したがって、いまの日本は「BIS不況」とさえ言えるでしょう。

 一方、ウォールストリートはデリバティブを含む「銀行を通さない資金供給」によってBIS逃れをしました。「デリバティブは、あくまでも金融“派生”商品であって、銀行融資ではない」という論理でBIS規制の対象から逃れて来ました。これによって、アメリカの銀行は、名目上ではBIS規制を守っているように見えます。しかし、実際の金融経済のなかで巨大な資金を供給してきたのはほかでもない、このデリバティブなのです。

 かつて同じ理由で発明されたのが、REIT(リート)でした。REITは不動産を証券化して市場でばらまくため、当初はBIS規制の対象になりませんでした。銀行による融資ではないため、BIS規制を逃れることができたのです。ちなみに、私がかつて三菱地所で働いていた頃に買収案件として担当したロックフェラーセンターは、世界最初の大型REITの例でした。やがてREITもバーゼルII(新BIS規制)の対象になり、代わって利用されたのがこのデリバティブだったのです。

 現在の日本は、デリバティブ市場がアメリカほど広がっていません。良いか悪いかは別にして、おもな資金調達源は依然として銀行であることに間違いない。もちろん、通常の直接金融(株式・社債)による資本調達は行っています。しかし、不況で企業の信用力も下がっているため、結果として資本市場からの調達も難しくなっています。つまり、本来は銀行の代わりになるはずの資本市場が、その役割を果たせていない。だからこそ、ウォール街はデリバティブという新商品に走ったのですが、彼らはまさにそのデリバティブでしくじりました。したがって日本としては、アメリカの二の轍を踏みたくない。では、どうすればいいか?

 繰り返しになりますが、第一に日銀がお札を刷り、第二にそれを銀行が7~8倍に増やしてマネーストックを上げること。この2つの要因だけが勝負なのです。にもかかわらず、日本はBIS規制をあまりにも真面目に運用しすぎているため、結果的に自らBISデフレ不況を招いている、というわけです。

 次に、デフレ不況下における震災復興の話です。
 ここで「土の中から金を掘り出す話」を思い出してください。震災復興は、まさにその典型的な例と言えます。復興のための建造物は、すべて「これまで世の中になかった付加価値」です。土の中から「金」を掘り出す構図とまったく同じ。したがって、震災復興を進めるには新たにお札を刷らなくてはいけません。そうしないとデフレ不況を悪化させてしまいます。

 現在、東北の一部では、すでに震災復興ブームで儲けている人が出始めています。しかし、仮に10兆円の付加価値が生まれた場合、同じ額のお札を刷らない限り、デフレは一気に悪化します。一部の誰かが儲けたからといって、経済全体という大きな枠組みで見ると景気が良くなるわけがないのです。

 では、復興財源を捻出するために、日本はどうすべきなのでしょうか。

 これは単純な話で、復興資金として日銀が新たに円を刷ればいい。それは日銀が国債を引き受けるということです。法律上では建前として禁止していますが、実際にはすでに行われている方法ですし、実際、日本のマネーストックの動きは日銀の引き受け量に統計的にも連動しています。

 これを現実的な手段として考えると、国が復興国債を発行し、それを全額日銀が円を刷って引き受ける必要があります。さらに良いのは、野田政権が日銀を通さずに、「震災復興財務省円」(いわゆるFiat money, 憲法通貨)を直接刷ってしまうことでしょうが、これは、通貨発行権に民主党が手を出すという事ですから、総理にはそれなりの覚悟がいります。

アメリカでそれをやったリンカーン大統領、ケネディ大統領の2人は偶然か必然か憲法通貨発行直後に暗殺されています。通貨発行権のカラクリに詳しかった興銀出身の中川昭一財務・金融担当大臣も財務省円論者でしたが、志半ばで亡くなったのは記憶に新しいことです。逆に中川昭一財務相のG7会見で隣に座っていた財務官はIMFの副専務理事に抜擢されているのが対象的です。

ただ、震災復興にマネーストックを増やす理想は財務省円の発行です。日銀が国債を発行すると金利が発生してしまうからです。もちろん日本の場合、国債の金利は日本人が日本人に払っているわけですから、本質的に問題は起きないのですが、将来の世代に利払いのツケを増税の形で回すことになります。未曾有の大震災の復興という極めて特殊な話ですから、総理はFRBなどの通貨発行権者達によく説明して、特例として「震災復興財務省円」の発行を認めてもらうのが理想です。

 一方、現在のデフレ不況のもとで最悪な手段が、増税です。理由はこれまでにお話した通り、復興資金のための円を新たに刷らないからです。財源を国民の財布から持ってくるからです。これでは右のポケットから左のポケットにお金を移し替えるだけで、マネーストックは増えません。それどころか、預金に回る分が税金の支払いに使われるならば、貨幣乗数で増えるはずの貸し出しが消滅し、7~8倍のマネーストックが失われます。また、預金ではなく消費に回る分が税金の支払いに使われる場合は、政府が税収を実際に復興に消化するまでタイムラグで、消費が落ち込みます。

 したがって増税で復興予算をまかなうと、復興が不況を悪化させる、つまりこのままいくと日本は、復興不況に陥るリスクさえあるのです。だからこそ、復興財源を増税でまかなおうとする現在の財務省主導の政策は誤っていると言えるのです。

 もちろん、増税を実施すると、国民の可処分所得が減ります。するとモノを買わなくなり、消費が落ち込みます。企業の景気が悪くなると、給料が下がります。そしてさらに消費が落ち込み……こうして絵に描いたようにデフレスパイラルが悪化するのは目に見えています。

 結論。

 デフレ不況時の増税ほど愚かな政策はない。また、震災復興のように新たに付加価値を創出する、つまりGDPを増やす財源には新たにマネーストックを増やさないとデフレ不況を悪化させる。デフレ不況時に復興財源を増税でまかなうのは最悪の選択だということです。

これほど単純な論理なのに、国会では話し合われていません。その事実を、私たちはしっかりと認識しておかなければいけないでしょう。

今年は総選挙が予想されます。皆さんの投票行動で国民の利益を守りましょう。

今から、皆さんの選挙区の各党議員に上記の議論を持っていき、それに対する態度で、投票行動を熟考するのがいいでしょう。国会議員に意見を伝えるのは有権者の当然の権利です。

【語句解説】

【マネーストック】
金融機関から経済全般へ供給されている通貨の総量。金融機関や中央政府を除く経済主体(一般企業、個人、地方公共団体など)が保有する通貨量の残高を集計して作成されている。2008年、日本銀行は従来の「マネーサプライ統計」を見直し、新たに「マネーストック統計」として作成、公表を行っている。見直しの際、マネーサプライでは証券会社、短資会社、非居住者が通貨保有主体に含まれていたが、2008年以降は除外された。また、各指標に含まれる金融商品の範囲についても変更されている。

【BIS(ビス)規制】
銀行における財務上の健全性を確保するため、1988年7月にBIS(Bank for International Settlement=国際決済銀行)がホストするバーゼル銀行監督委員会で合意された銀行の自己資本比率規制のこと。国際的に活動する銀行に対して、銀行の自己資本を分子、リスクの大きさを分母とする比率(自己資本比率)が8%以上であることが求められている(海外拠点を持たない銀行は4%)。日本では1993年3月末から適用された(バーゼルI)。

【貨幣乗数】
マネタリーベース(現金および中央銀行への準備預金の合計のこと)1単位に対して、何単位のマネーストックを作り出すことができるかを示す指標。日本においては、通貨供給量(マネーストック)を、日本銀行が金融機関に回すお金(マネタリーベース)で割って算出される。

【バーゼルIII】
BIS規制(バーゼルI)、新BIS規制(バーゼルII)に次ぐ、新たな枠組み(規制強化策)のこと。2008年以降、世界的な国際金融経済危機の背景となった銀行監督問題を教訓に、銀行の自己資本の質の向上、リスク管理の一段の強化といった観点からバーゼルII改訂作業が進められた。新たな合意の基本的な内容は2011年1月に公表されており、今後は2019年度までに全面的に採用される予定となっている。

【デリバティブ】
金や原油などの原資産、株式や債券などの原証券の値の変化に依存してその値が変化する証券のこと。原資産、原証券に関しては制限はないが、通常は取引されている証券の価格を用いる。代表的なものに、先物取引、スワップ取引、オプション取引などがある。ちなみに、“derivative”とは「派生的」「副次的」という意味。

【REIT(リート)】
Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)。2000年11月に施行された改正投資信託法により、投資信託の運用対象に不動産も認められたことから導入が可能になった。多くの投資家から集めた資金をもとに不動産を購入し、その賃貸収入や売却により生じた収益から不動産の維持・管理費用や支払い金利を差し引いた後に残る利益を投資家に分配(還元)する、という仕組み。対象となる不動産には、オフィスビルや商業施設、ホテルやマンション、倉庫などがある。

【バーゼルII(新BIS規制)】
銀行の抱えるリスクの大きさ(自己資本比率の分母)をより精緻なものとするべく、1998年からBIS規制(バーゼルI)の抜本的な見直しが開始され、2004年6月に新BIS規制(バーゼルII)が公表された。なお新BIS規制では自己資本比率の分子と達成するべき水準についてはBIS規制と変更がない。日本では2007年3月末から適用された。

(取材Club Tomabechi   http://www.club-tomabechi.jp/)

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