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お前たちには浮かれ騒ぎの種を、俺たちは金を (追記、追追記あり)

「泉の波立ち」のOPENブログから転載。
ノーベル賞の科学部門は「先駆的研究」に与えるものであり、実はそれが真に先駆的であると証明される頃には、その研究は実用化されていて、「業界的」には陳腐なものとなっていることもあるわけだろう。もちろん、ここではまだ全然陳腐どころではないし、山中教授の業績の偉大さを称えるのは当然だ。
しかし、問題は、それがどのように実用化されるのか、ということであり、日本人がノーベル賞受賞によってやっとiPS細胞というものの存在を知った時には、すでにアメリカがその特許を独占し、早くも実用化が実現しつつあったのである。
要するに、A(「発見」や「新発明」)と、B(「実用化」や「特許」)のうち、金に結びつくのは当然Bであるから、資本主義的に言えばAの栄誉など日本人が取ろうが、かまわない、ということなのである。これがノーベル賞を「与える側」の考えだろう。ついでに言えば、今回の山中教授は「抱き合わせ受賞」であり、それによって白人の名誉は保たれている。
今回の南堂氏がこの事実を指摘したことは素晴らしいが、「だから研究費を増やせ」、という結論には私は不賛成だ。
井口博士のブログによく書かれているように、今や国立大学の科学研究費は膨大なものになっているらしい。問題は、せっかくの研究が「特許取得」や「実用化」の過程で様々な障害に遭うという日本の官僚システムや産業界システムにある。

(追記)

上の記事は今朝未明に書いたものだが、今朝のテレビやネット記事によると、ハーバード大学側はこのことを否定しているようだ。どうもよく分からないのだが、大学の関与だけを否定しているのか、それともこの「人体実験」の事実そのものを否定しているのか、あるいは「人体実験の成功」を否定しているのか、後報を待つしかないだろう。
まあ、私の邪推では「これはまだ公表してはいけないものだった」ために、どこかからストップがかけられたのではないか。つまり「人体実験」自体は成功していたが、何かの事情でうやむやにされた可能性がある、と見ている。
などと、自分の「フライング」のミスを強弁するわけだが、実際、世間で報道される「事実」なんてその程度の「操作された事実」なのだから、そうした記事に基づく私の記事の誤りなども別にどうということはない。内田樹ではないが、誤りも正しさに至る道の一つでしかない。
ただし、上の記事に書いた部分のうち、「すでに特許を取ってあった」は完全な間違いだろう。だからこそ、「まだ公表できない」のかもしれない。

(追追記)

「ネットゲリラ」に関連記事があるので、これを先に転載しておこう。コメントにあるように、「つまり、どういう事だってばよ」である。
なかなか、このドタバタ騒ぎは面白い。

1 エジプシャン・マウ(神奈川県) 2012/10/12(金) 01:50:38.31 ID:JZkpJX5i0
米マサチューセッツ総合病院がiPSの臨床応用を否定

体を構成するさまざまな細胞になり得る人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った初めての臨床応用を行ったとの森口尚史氏の説明に対し、治療を実施したとされた米マサチューセッツ総合病院の広報担当者は11日、共同通信の取材に「病院や(関連する)ハーバード大の内部審査委員会が治験を承認したとの事実はない」と否定した。
またハーバード大は、森口氏が1999年11月末~2000年初めにかけ1カ月ほど在籍したが、その後の関わりはないとしている。
森口氏は客員講師を務めていると話していた。
森口氏はロックフェラー大で開かれているトランスレーショナル幹細胞学会で治療の内容をポスターで発表したが、主催するニューヨーク幹細胞財団は「内容に疑義がある」として、ポスターを撤去した。

学会も、森口氏の発表内容に疑義があるとして発表の展示を撤去した。
ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった山中伸弥京都大教授のiPS細胞をめぐり混乱する異例の事態となった。
ハーバード大は、森口氏が1999年11月末~2000年初めにかけ1カ月ほど在籍したが、その後の関わりはないとしている。

2 スペインオオヤマネコ(福岡県) 2012/10/12(金) 01:51:43.03 ID:xWzA165n0
つまりどういうことだってばよ





(以下引用)*こちらが最初の引用。「泉の波立ち」より。


2012年10月11日


◆ iPS細胞(日本の敗北) その2

 「 iPS細胞は日本が米国に敗北するだろう」という私の予測が、すでに実現しつつある。米国では日本に先だって、人間への臨床適用に成功した。大成果だ。

 ──

 これは読売新聞の特ダネらしく、他の新聞にはほとんど掲載されていないようだ。(後追い記事は少しある。)
 簡単にまとめれば、次の通り。
  ・ iPS細胞を人間への臨床適用に成功した。
  ・ 成功したのは米ハーバード大学の研究者。
  ・ その研究者は日本人。
 
 皮肉なことに、米国の勝利のために貢献しているのは、日本人だ。ではどうして日本人が米国でやっているかというと、日本では研究体制が整っていないからだ。まともな研究をするとしたら、米国でやるしかない。つまり、
 「iPS細胞で成果を上げたければ米国へ」
 という状況になっている。研究者は、日本の名誉のためにやっているわけではなく、人類のためにやっているのだから、米国でやるのが当然だ。
 そして、米国は、日本人研究者の知恵を使って、特許などを頂戴して、ボロ儲け、という仕組み。日本は金や制度をケチっているせいで、どんどん米国に負けていく、というわけ。
 山中さん一人で米国の巨大な体制に勝てるはずがない。その懸念を、すでに表明していたが、それがたったの三日程度で実現してしまったわけだ。
 「予測が当たった」と喜っべきか悲しむべきか。  (^^); 

 ──
 
 以下では、記事を一部引用しよう。(ネットから。詳細は読売の紙の新聞を参照。)

 《 iPS心筋移植、ハーバード大で…初の臨床応用 》
 あらゆる種類の細胞に変化できるiPS細胞(新型万能細胞)から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を米ハーバード大学の日本人研究者らが6人の患者に実施したことが、10日わかった。
 iPS細胞を利用した世界初の臨床応用例で、最初の患者は退院し、約8か月たった現在も元気だという。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京都大の山中伸弥教授がマウスでiPS細胞を作製してから6年、夢の治療として世界がしのぎを削る臨床応用への動きが予想以上に早く進んでいる実態が浮き彫りになった。
 iPS細胞を利用した心筋の細胞移植を行ったのは、ハーバード大の森口尚史(ひさし)客員講師ら。
( → 2012年10月11日 読売新聞 )



 《 iPS世界初の臨床応用 心筋細胞作り患者6人に移植 》
 森口講師らによると、今年2月に初の移植を受けた34歳の米国人男性は回復し、経過を見守っているが、現状では異常は出ていないという。
 米国人男性は09年2月に肝臓がんのため肝臓移植を受けたが、今年2月に心臓から血液を送り出す力が弱まる虚血性心筋症となった。
 摘出後に保存してあった男性の肝臓組織から、肝細胞になる手前の前駆細胞を取り出し、細胞増殖に関わるタンパク質や薬剤を加えてiPS細胞を作製。これを心筋細胞にして増殖させた上、弱った心臓の約30カ所に特殊な注射器で注入した。
 拒絶反応やがん化などの兆候はなく、心機能が徐々に回復して10日後にはほぼ正常になった。
( → zakzak 2012-10-11 )



 森口講師は再生医療の研究をしており、今年2月、アメリカ人の心不全患者に同意を得た上で、山中教授とは異なる手法で作ったiPS細胞を利用した治療を世界で初めて行った。ハーバード大学の倫理委員会は、動物実験などのデータで安全性を確かめた上で、暫定的に承認を与えた。
 森口講師らは、計6人に対し、山中教授とは異なる手法でiPS細胞から作った心筋細胞を注入しているが、今のところ異常は起きておらず、「元気に社会復帰している」という。
 iPS細胞を使った研究は、これまで動物実験にとどまっていたが、今回、実際に細胞を患者に移植したことで、研究は大きな節目を迎えた。実用化に向けて大きく前進したことになるが、今後も安全性の確認など課題が残されている。
( → 日本テレビ 2012-10-11 )



 この治療に関係する研究費用は約1億5000万円。起業投資家から集めた。森口氏は、「日本では税金が使われるから、成果を上げなければならないが、こちらでは投資家がリスクをとってくれる」「日本では、いろいろな規制があって実施できなかっただろう」と、新しい医療技術に対する日米の制度の違いを指摘。研究者側についても、「日本にも優秀でやる気のある人はいるが、結集しにくい。懸命に働き、本気で声を上げなければいけない」と述べた。
 森口氏は成功の背景として、「少人数の機動的な研究チーム」の結成を挙げた。同大やマサチューセッツ工科大で機械工学を学ぶ大学院生ら5人ほどが積極的に研究に参加し、心筋細胞の増殖に必要な「過冷却」技術を提供したうえ、この治療に関係する研究費用の調達を一手に担った。
( → 2012年10月11日 読売新聞 )

 以上の記事を読んで、「日本人が成功した!」と思っている人もいるだろうが、それは勘違い。今回の権利はすべて米国のものだ。米国のハーバード大学と米国の投資家のものだ。日本人がそれを使いたいときには、多額の権利料を払う必要があるだろう。

 とにかく、今回の成果を見たら、「米国に出し抜かれた」「米国に負けた」と思うべきだ。また、その理由は、日本人の優秀な研究者が貢献したからだ。さらにまたその理由は、日本の開発体制が全然ダメだからだ。

 ともあれ、これで日本は、米国に周回遅れ。1周どころか3周か5周ぐらい遅れている。つまり、あと3~5年ぐらいたたないと、日本では人間への臨床適用ができない。
 完全敗北。いわば、「真珠湾の緒戦で大勝利」と思って浮かれたあとで、本土爆撃で全面敗北するようなものか。
  
( ※ だからあれほど言っておいたのに。……)


--------------------------------------------------------------------------------

 [ 付記 ]
 近く専門論文が発表されるそうだ。詳しい話を知りたい人は、続報を待つといいだろう。
 
 【 関連項目 】
 「 iPS細胞は日本が米国に敗北するだろう」という私の予測は、私はすでに何度か書いている。最近でも何度か書いたが、古いものでは、下記項目がある。
  → iPS細胞(日本の敗北)

 これが「その1」にあたるので、本項は「その2」となる。

  ※ 予測だけじゃなくて、原因も記している。どちらも
    「予算不足」などを理由としている。

 【 関連サイト 】
 文部科学省が10年間で300億円を出す、というニュースがある。

 文部科学省が今後10年間、約300億円を助成する方針を固めました。iPS細胞の研究を巡っては、国はこれまでに2008年度から5年間で約100億円を助成していました。助成の上限が原則的に5年間の科学研究の分野では異例の措置。
( → Yahoo ニュース )

 すごい金額のように見えるが、10年間の総額だから、1年間ではたったの 30億円だ。全然、足りない。桁が違っているんじゃないかと思うぐらいだ。
 これじゃ米国に負けるのは当然というものだ。
 で、山中教授は「金を出してください」と頭を下げるのに忙しくて、研究に専念できない。

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