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西洋人の細密描写と日本人の簡潔描写(あるいは図書館での奇跡の出逢い)

9月27日の「盗侠行」記事の内容を一部訂正する。その前に、事情説明をしておく。下記文章で訂正に関する部分は下線をつけた。

昨日、市民図書館に借りた本を返しに行き、新しく読む本を探した。物色した本が貸し出し限度の10冊近くになったので、何の気なしに児童文学の棚へ足を向けた。深層意識の中で、「盗侠行」の原詩の作者が童話作家だという情報が動いていたのだろう。棚をほとんど見終わって最後のあたりで、「ウィルヘルム・ハウフ」という名前を見つけ、もしかしたらこの作家が、探していた人物ではないか、と思って本を取り出し、中身を見ると、目次の最初に「隊商」という作品名がある。ドンピシャだ、と喜んで少し読むと、詩ではなく小説(童話というには大人向けの内容のようだ。)だが、その内容はまさしく「盗侠行」そのものである。しかし、どうやら「枠物語」のようで、幾つもの話を挟んだもののようだ。
立ち読みするのももったいないので、借りだした。(数えると、それがちょうど貸し出し限度の10冊目だった。)
家に帰って読むと、詩の「盗侠行」を数倍にふくらましたというか、細かい描写がされて、全体が200ページほどもある。つまり、「おもかげ」で「盗侠行」を書いた人は、このエッセンスを見事に抜き出してあの簡明かつ雄渾な「盗侠行」という詩にしたのである。だから、私が「『盗侠行』の原詩」という言い方をしたのは誤りだったということだ。ただそれだけのことに長い説明をしたが、これは、「小説のエッセンスを物語詩にする」作業が偉業であることを言いたかったからである。詩のほうの作者は鴎外とは限らない。「新声社」というグループで、その代表名が森鴎外である。

小説の「隊商」は、まだ「盗侠行」関連部分しか読んでいないが、細部の描写が膨大にあり、悪くない描写だが、私のような日本人には無くもがな、という気がする。我々は事物のエッセンスを17字や31字で簡潔に表現することに慣れた民族なのである。

たまたま興味を持った作品の関連図書を同じ図書館で見つけるというのは、実際にはかなり稀だと思う。私がいつも利用している市民図書館は蔵書数そのものがひどく少ないのである。だが、それでもこのような「奇跡」を与えてくれたわけで、図書館という存在の素晴らしさを教える話だ。


盗侠行

何か創作的な作業をしないと頭が寂しいので、鴎外の詩集「おもかげ」から、少し珍しい物語詩を口語訳してみる。ただし、図書館の返却期限が明日なので、今日中に出来るかどうか。意味不明の部分はほとんど適当訳である。つまり、「超訳」だ。原詩はウィルヘルム・ハウフの「隊商」である。話の意外な展開(ただし冒頭は淡々としている。)が非常に面白い物語詩だ。

盗侠行     (夢人注:「行」は物語詩の意味。白楽天の「琵琶行」など)

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