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易の思想の大要

市立図書館から借りてきた「中国古典文学体系 書経・易経」の解説に易の基本思想が簡潔明瞭に書かれていたので、備忘のために書き写しておく。この思想要約は、私が易に関して漠然と抱いていた感想と完全に一致している。こうして、個人の中の形の無い状態の思想を言語化してくれた先人がいると、実に助かる。

易の思想

1.ものごとの変化を重視し、その変化に随順すべきことを説いていること。
2.異なった性質・位置・境遇の者の相互協調を重視していること。
3.ものごとの最初の行動や転換の際の行動を慎重にすることを戒めていること。
4.ものごとの極端・極度な行いを避けるべきこととしていること。
5.自分の意欲や行動を抑制する謙遜を人の行いの根本としていること。
6.現世超越を説いていること。


上記の6.は、他の1.~5.が現世で生きる上での処世訓であるのに対し、「当面の社会に受け入れられなければ、ひとりその信じる道を行う」(孟子)生き方も賢明な選択だ、ということだろう。(赤塚忠氏の解説による。「忠」は「きよし」と読むらしい。)

私自身の補足を少し。
易の卦にはしばしば「貞であるのが利(よろ)しい」という言葉が出るが、この「貞」は通常は「ただしい」と読まれている。しかし、これは「現在の考えのままでそのまま進むこと」つまり、「貞固」であることだ、というのが私の考えだ。そうでなければ「貞に利あらず」というような「正しさ」を否定する卦はありえないだろう。もちろん、正しさなどは各自の主観にすぎない、という現代的な発想を易が主張しているとも思えない。易は変化を重視するが、生き方の根本としては「節義」を貞固に守ることも大切だ、という考えなのである。そうでなければ社会そのものが成り立たないだろう。たとえば、ある言葉を発した人が次の瞬間にそれとまったく矛盾することを平気で言うならば、その人間とはつきあえないし、そうした人間で満ちた社会は崩壊するしかない。これが「貞」が必要だということを簡単な比喩で言ったものだ。
だが、宇宙の現象や社会の時勢は常に変動する。その変動に対応するには「臨機応変」という姿勢が重要なのである。機に臨んでもぼうっとしており、変に応じないならば、3.11の時ならば洪水に流されるしかないだろう。人事もまた然りである。愛憎すら変化するのだから、その変に対応して生きるしか、現世で生きる道は無い。貞である部分を守りつつ、変の兆しに注意深くあれ、というのが易の教えだろう。言葉を変えれば、物事に過度に固着せず、中庸を守る生き方が知恵ある生き方だ、ということだ。
なお、私が特に好きなのは3.である。というのは、これは物理の法則や人間感覚の法則に合致しているからだ。たとえば自動車事故というものは動き始めや進路変更の時に起こるのがほとんどである。
人生の事故の大半は入学・入社・結婚といった「動き始め」での慎重さの欠如から来ている。また、長い間仲良く付き合っていた恋人同士が「結婚」という「進路変更」を機にお互いの違う側面(お互いの家族の事情や社会人としての別人格など)を見ることで破綻する、という「進路変更」の事故もあるものだ。



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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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