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高校生のための「現代世界」政治経済編7


第六章 国際経済と貿易

 江戸時代末期に幕府が窮乏した原因の一つは、ペリーの要求で開国したばかりの江戸幕府が国際経済を知らなかったことです。当時、日本では金と銀の価値には大きな差がなかったのですが、世界的にはそれよりも大きな差があったのです。たとえば、日本での金と銀の交換レートが1対2で、世界では1対4(つまり金は銀の4倍の価値があった)だとしましょう。日本との貿易の代金を銀で受け取らずに金で受け取れば、それだけで相場の2倍の値段で売ったことになるのです。もちろん、自分の銀を日本で金に換えるだけで大儲けできます。江戸幕府がこの事実に気づいた時には、すでに日本の中の金は、ほとんど西欧諸国に流出していました。
 これは江戸幕府だけの問題ではありません。日本全体の財産が海外に流出し、日本全体を貧しくさせたのです。為政者の経済に対する無知の罪は重いと言えます。
 このように、貿易すればするほど国全体としては貧しくなることがあるということを知っている人は多くありません。ほとんどの人は自由貿易(貿易に対する国家の干渉をやめ、自由に貿易させること。保護貿易に対比される。)のメリットだけを聞かされているはずです。これは、世界経済支配層による洗脳の一つです。
 自由貿易論者の代表がリカードです。彼の比較生産費説(比較優位説)は、各国が、他の国に比べて相対的に生産費が安くつく商品を生産し、それを交易するほうが互いの国にとって利益になる、という説です。しかし、この考えは、一方にとっての利益は、必ず他方にとっての不利益であり、両者にとって利益となる商売はありえないという取引の大原則(トレードオフ関係と言います)を無視しています。では、なぜ自分にとって不利な取引をするかというと、別の相手との取引でそれ以上の利益を得るためです。つまり、AとBという2者の間だけに限定すれば、互いにとって利益になる取引はありえないのです。(ただし、価値そのものは主観的なものですから、利潤面からは不利益でも、価値としては有益な取引ももちろんあります。)リカードの説があやしいことは、商品作物を作っている農業国が、いつまでも貧困から抜け出せない事実からも分かるはずです。
 自由貿易のメリットは、比較優位説などよりも、国際競争によって商品の質が向上し、価格が下がるという、消費者にとってのメリットが大きいでしょう。しかし、これは独占企業は必ず堕落し、国民に不利益をもたらすということを世界的に拡大しただけの話です。
 独占企業がなぜ国民にとって不利益かは、少し想像してみれば分かるでしょう。その商品を作っている会社が1社しかなく、それが国民にとって是非とも欲しい商品なら、いくら高い値段をつけても売れる道理です。
 では、その商品を生産する(あるいはサービスを提供する)会社が2社か3社なら? 答えは、その会社同士が手を結んで(談合して)、価格を高く設定することです。飛行機料金などがその代表です。こうした行為は、独占禁止法によって制限されていることになっていますが、事実上の独占行為はたくさんあります。電力やガス、水道などはすべて独占企業です。
 自由貿易の反対が保護貿易です。その目的は、国内産業の保護ですから、国民自体にとっては高価格、低品質の商品をいつまでも我慢させられる欠点があります。しかし、生活の基盤となる食糧に関しては、国際分業に頼ることはあまりにリスクが大きすぎると言えるでしょう。食糧輸出国は、いったん戦争状態になったら、敵国に食糧を売らなければいいわけですから、食糧輸入国は常に戦々恐々としていなければなりません。しかし、食糧自給率(自分の国で生産される食糧で、どの程度必要量をまかなえるかという割合)が非常に低い日本の状態に対し、政治家も役人も危機意識はまったく持っていないようです。
 
貿易と為替レートについてお話しましょう。
 海外との取引代金は、たとえば日本とアメリカなら円もしくはドルで支払われます。お金には交換比率があり、それを為替レートといいますが、それは絶えず変動しています。(お金そのものが投機の対象で、ドルが買われるとドルの価値が上がります。ドルを買うとは、たとえば、円をドルに変えるということで、円の価値は相対的に下がります。)
 ある商品Aを日本の会社がドル建て(ドルで支払うこと。)でアメリカの会社に売ったとしましょう。製造原価や諸費用が80円のものを100円で売れば、20円の利益です。契約段階での為替レートは1ドルがちょうど100円だったことにします。ところが、代金支払いの段階になって、為替レートが1ドル80円の円高(つまり、円の価値が上がったから円高と言うのです。)になったとしますと、支払われた1ドルは、80円にしかなりません。つまり、この取引でこの日本企業はまったく利益が出なかったことになります。
 円高が輸出企業にとって望ましくないことが、この例で分かるでしょう。このリスクを避けるためには、円建てで取引をするほうがいいのですが、逆に、円安になれば思いがけない利益になるのですから、どちらでも同じだと考えることもできます。要するに、輸出企業は、円安になることを神に祈り、あるいは政府の力で円安傾向に持っていって貰うことを願っているわけです。
 しかし、現在のアメリカは、産業が空洞化し、毎年のように膨大な貿易赤字を積み重ねています。ということは、その輸入に対して支払われるドルに何かの裏づけが無いかぎり、ドルへの信頼が失われ、ドルが売られてドル安(円高、ユーロ高)傾向が続くことになります。現在のところ、ドルへの信頼とは、アメリカが軍事大国であるという一点だけです。しかし、その事は、裏を返せば、アメリカはいつでも借金を踏み倒す力があるということですから、アメリカとの取引は常に危険であると言えます。商売に危険は付き物と言えば、それだけの話ですが。

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