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自主退避? サラリーマンにそれができるか!

「内田樹の研究室」ブログへ宛てた一主婦のメールである。
政府が30キロメートル以内を避難区域としたのは、植草教授によればこの後の補償額をできるだけ圧縮するという「役人根性」によるもののようだ。だから最初は5キロ、次に10キロ、次に20キロとまるで商売人の値下げ交渉みたいに少しづつ区域を大きくしていったわけである。そのせいで避難が遅れて放射能障害を抱え込むことになった人間もたくさんいるだろう。
そしてもう一つ問題なのは、「自主退避」である。自主退避と言っても、会社勤めの人間は、会社からの指示が無いかぎり、勝手に勤めを休むことはできない、つまり、避難はできないのである。
この主婦のメールは、そういう社会の鎖のせいで生命を危機にさらしている人間の悲痛な叫びである。
もちろん、「きっこのツィッター」にあるように、何よりも命が大事だと思えば、無一文で逃げ出すという選択も可能だ。だが、本当にそれができるか。まったく見知らぬ土地で、無一文からやり直すという選択ができる人間は、そんなにはいないだろう。ほとんどの人間は「もしかしたら放射能障害は起こらないかもしれないから」というギャンブルをしてそこに残るはずである。


(以下引用)




読者からのメール
内田樹先生

お忙しい中、お返事本当にありがとうございます。
一主婦として、この状況に立ち向かう術がなく、無力感に襲われていました。

夫は現在、避難を希望しているのにも関わらず、勤務先が営業している為に避難出来ない状況です。
上司・並びに会社側は、行政判断の30キロ圏外であるため、避難の必要がないとの判断を下しています。
自主的に避難すれば解雇となるでしょう。

こうしている間に最悪の事態になったらと思うと、本当に怖い。
夫同様に、本人と家族が避難を希望しているのに、勤務先の判断で留まっている方が沢山おられるのではないでしょうか。

行政判断の区域になるまでは、本人の意思に関わらず避難出来ない異常な状況なのです。
30キロ圏外の方が県外へ避難されたニュースを見る度に、この僅か20キロが恨めしくさえ思えます。

原発・放射能に関して、個人で感じ方が違うのは無理のない事です。
問題は、今回の様な異常事態に、あまりにも個人の判断にまかせ過ぎている点にあるように思います。

もし夫が被爆したら、会社側は行政判断に従ったので問題ないと言うでしょう。
上司が危機感を持つ方であれば、夫はすでに避難出来ているのです。

もはや個人の判断に委ねるレベルではないと思うのです。

郡山市では、かなり高い値の放射線量が観測されています。
現時点で高い値になる地域は、次に何か起きた時にも、被害が大きい可能性があるのではと怯えています。

早急に、避難すべき圏内を再検討して頂きたい。
個人の判断に委ねても100%安全と断言出来る地域までは、全てを避難対象にして頂きたい。

郡山市内では、赤ちゃん連れの買い物客・散歩をしているお年寄り、そして避難先の小学校の校庭で遊ぶ子供達が見受けられました。
これらの人達も自己責任という名の元で被爆していたらと思うと、怒りで胸が張り裂けそうです。

避難圏内か圏外かの違いが僅かな距離であるなら、普通の生活をおくっていて安全と言える根拠が分からないのです。

夫が一日でも早く避難出来るよう、毎日を祈るような気持ちで過ごしています。

追伸
避難区域の見直しを待たずに、解雇される事なく夫が避難出来る手段があれば、どうかアドバイスをお願い致します。

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