田中宇の「国際ニュース解説」無料版(笑)から転載。
いや、「無料版(笑)」というのは自嘲である。金が無いから有料版には手が出ないので、甲斐性の無い自分を笑っているのである。もっとも、無料版でも会員登録が必要なサイトには私は足を踏み入れないことにしているのだが。
以前に私は田中宇は有料サイトにしてから読みたい記事が無くなったと書いたが、有料記事は読んだことが無いのだから、これは理不尽な発言だった。まあ、無料記事の方には面白い記事が無くなったと言うべきだっただろう。
しかし、今回のこの記事は興味深い。
北朝鮮の脅威が薄れると、日本国内の右翼たち(商売右翼ね)は困るのではないか。北朝鮮脅威論によって自衛隊や在日米軍の存在根拠が維持されてきたのだから。今度は中国脅威論に一本化するしかないだろう。ところが野田総理は中国との貿易をドル建てではなく円と元の直接的交換で行うという大胆な取り決めをした。今のところは中国国債の購入に関してだけだが、これが堤防が崩れる蟻の一穴になる可能性もある。経済は政治の根底であるから、いわば日中同盟を結んだも同然である。
田中宇は中国との関係強化で日本は経済的に劣勢に立たされると見ているが、収奪される一方だった日米関係よりははるかにましだろう。
さあ、これからどうなるか、見ものである。
(以下引用)
北朝鮮が好戦策を引っ込めると、日本と韓国の安全保障戦略の根幹が変わってしまう。日韓の安保戦略は、北の脅威に対抗することが大前提だった。日韓が米軍に駐留してもらっていたのは、北の脅威が前提だった。今後、脅威が消えていく方向が見えだしたのだから、日韓は、米軍駐留を不要とみなすなどの安保戦略の見直しが必要になる。
北朝鮮が好戦策を引っ込めそうな方向性は、日本のマスコミでほとんど報じられていない。マスコミは、対米従属を基本方針とする官僚機構の下部組織だから、北朝鮮が好戦策を引っ込めて、在日米軍駐留の必要が低下してきそうなことを、国民に伝えない。北朝鮮をめぐる実態が変わっても、マスコミ報道でしかイメージを形成できない日本人の頭の中は変わらない。
▼中国の脅威は軍事でなく経済
北朝鮮だけでなく中国も日本にとって脅威だから、中国の台頭が続く限り、在日米軍の駐留が必要だと考える日本人も多い。中国は確かに台頭しているが、その脅威は、軍事面でなく、経済面から来ている。
軍事面の中国の脅威は、10年秋に尖閣諸島で中国漁船の船長を逮捕・送検した時の日中間の緊張激化に象徴されている。だがあの時、中国漁船の船長を送検し、起訴まで進める方向に持っていったのは、当時国交相だった民主党の前原誠司である。前原の目的は、日中の軍事対立を激化して、中国を敵とする日米同盟を強化することだった。当時の日中の軍事対立の激化は、日本側から仕掛けたもので、中国は呼応したにすぎない。その後、日本政府は、中国と軍事対立することをやめ、日中の軍事対立は起きていない。昨秋、再び中国漁船が領海内に迷い込んできた時、日本政府は船長を逮捕したものの、送検せず帰国させている。(日中対立の再燃(2))
日本の自衛隊は、米軍の支援を何も受けなくても、世界有数の強い防衛力を持っている。日本人独自の技術力が、実は、民生部門と同様に軍事部門で強く発揮されることは、戦前の歴史が証明している(外交力が低いので敗戦した)。たとえ今後、米国が財政破綻して日米同盟が事実上失効し、その後、中国の経済成長が50年続いたとしても、中国が日本に軍事侵攻するのをためらうぐらいの軍事力を、日本は保持し続けるだろう。
日本にとって中国の脅威は、軍事面でなく経済面だ。中国はここ数年、アジアや中東、アフリカ、中南米など世界中で、エネルギー開発や、インフラ整備の受注、中国製品の市場開拓など、経済的な利権あさりを貪欲に続けている。対照的に日本は、米欧の経済利権を高く売りつけられる買い手に徹しており、敗戦から65年以上、独自の国際経済利権をほとんど行っていない。今後、米欧の覇権が世界的にかげり、中国やBRICが台頭すると、日本は国際経済利権の面で窮乏していくだろう。(America vs China in Africa)
中国は日本に対してだけでなく、米国に対しても、米国債の世界最大の保有国であるなど、経済面で対米優位に立っている。また中国製品は、世界的に人々の消費生活に不可欠になっている。日本国内で売る製品も、コンビニ商品やユニクロからiフォンまで、中国製がこの10年前後で急増した。中国は脅威だと声高に言う人も、ユニクロを着てiフォンを持ち、コンビニで買い物している限り、中国から乳離れできず、しかも自分でそれに気づいていない。
日本が経済面で中国に対抗したければ、日本も米欧に頼らず、独自に世界中でエネルギー開発やインフラ整備などを受注すればよい。しかし実際のところ、日本でマスコミや著名言論人が誘導する中国脅威論は、対米従属の裏返しでしかない。「日本も中国に負けないよう、米欧に頼らず、世界中で石油ガスの利権をあさろう」という呼びかけは全く行われず、それと正反対の「中国は危ないので、日米同盟(独自の利権あさりをタブー視する対米従属)を強化しよう」という呼びかけが席巻している。日本で流布する「ナショナリズム」は、実はナショナリズムからほど遠い、日本より米国の国益を重視する売国的態度だ。売国的態度を愛国的態度と勘違いしている人が多いのが、今の日本の悲劇である。
いや、「無料版(笑)」というのは自嘲である。金が無いから有料版には手が出ないので、甲斐性の無い自分を笑っているのである。もっとも、無料版でも会員登録が必要なサイトには私は足を踏み入れないことにしているのだが。
以前に私は田中宇は有料サイトにしてから読みたい記事が無くなったと書いたが、有料記事は読んだことが無いのだから、これは理不尽な発言だった。まあ、無料記事の方には面白い記事が無くなったと言うべきだっただろう。
しかし、今回のこの記事は興味深い。
北朝鮮の脅威が薄れると、日本国内の右翼たち(商売右翼ね)は困るのではないか。北朝鮮脅威論によって自衛隊や在日米軍の存在根拠が維持されてきたのだから。今度は中国脅威論に一本化するしかないだろう。ところが野田総理は中国との貿易をドル建てではなく円と元の直接的交換で行うという大胆な取り決めをした。今のところは中国国債の購入に関してだけだが、これが堤防が崩れる蟻の一穴になる可能性もある。経済は政治の根底であるから、いわば日中同盟を結んだも同然である。
田中宇は中国との関係強化で日本は経済的に劣勢に立たされると見ているが、収奪される一方だった日米関係よりははるかにましだろう。
さあ、これからどうなるか、見ものである。
(以下引用)
北朝鮮が好戦策を引っ込めると、日本と韓国の安全保障戦略の根幹が変わってしまう。日韓の安保戦略は、北の脅威に対抗することが大前提だった。日韓が米軍に駐留してもらっていたのは、北の脅威が前提だった。今後、脅威が消えていく方向が見えだしたのだから、日韓は、米軍駐留を不要とみなすなどの安保戦略の見直しが必要になる。
北朝鮮が好戦策を引っ込めそうな方向性は、日本のマスコミでほとんど報じられていない。マスコミは、対米従属を基本方針とする官僚機構の下部組織だから、北朝鮮が好戦策を引っ込めて、在日米軍駐留の必要が低下してきそうなことを、国民に伝えない。北朝鮮をめぐる実態が変わっても、マスコミ報道でしかイメージを形成できない日本人の頭の中は変わらない。
▼中国の脅威は軍事でなく経済
北朝鮮だけでなく中国も日本にとって脅威だから、中国の台頭が続く限り、在日米軍の駐留が必要だと考える日本人も多い。中国は確かに台頭しているが、その脅威は、軍事面でなく、経済面から来ている。
軍事面の中国の脅威は、10年秋に尖閣諸島で中国漁船の船長を逮捕・送検した時の日中間の緊張激化に象徴されている。だがあの時、中国漁船の船長を送検し、起訴まで進める方向に持っていったのは、当時国交相だった民主党の前原誠司である。前原の目的は、日中の軍事対立を激化して、中国を敵とする日米同盟を強化することだった。当時の日中の軍事対立の激化は、日本側から仕掛けたもので、中国は呼応したにすぎない。その後、日本政府は、中国と軍事対立することをやめ、日中の軍事対立は起きていない。昨秋、再び中国漁船が領海内に迷い込んできた時、日本政府は船長を逮捕したものの、送検せず帰国させている。(日中対立の再燃(2))
日本の自衛隊は、米軍の支援を何も受けなくても、世界有数の強い防衛力を持っている。日本人独自の技術力が、実は、民生部門と同様に軍事部門で強く発揮されることは、戦前の歴史が証明している(外交力が低いので敗戦した)。たとえ今後、米国が財政破綻して日米同盟が事実上失効し、その後、中国の経済成長が50年続いたとしても、中国が日本に軍事侵攻するのをためらうぐらいの軍事力を、日本は保持し続けるだろう。
日本にとって中国の脅威は、軍事面でなく経済面だ。中国はここ数年、アジアや中東、アフリカ、中南米など世界中で、エネルギー開発や、インフラ整備の受注、中国製品の市場開拓など、経済的な利権あさりを貪欲に続けている。対照的に日本は、米欧の経済利権を高く売りつけられる買い手に徹しており、敗戦から65年以上、独自の国際経済利権をほとんど行っていない。今後、米欧の覇権が世界的にかげり、中国やBRICが台頭すると、日本は国際経済利権の面で窮乏していくだろう。(America vs China in Africa)
中国は日本に対してだけでなく、米国に対しても、米国債の世界最大の保有国であるなど、経済面で対米優位に立っている。また中国製品は、世界的に人々の消費生活に不可欠になっている。日本国内で売る製品も、コンビニ商品やユニクロからiフォンまで、中国製がこの10年前後で急増した。中国は脅威だと声高に言う人も、ユニクロを着てiフォンを持ち、コンビニで買い物している限り、中国から乳離れできず、しかも自分でそれに気づいていない。
日本が経済面で中国に対抗したければ、日本も米欧に頼らず、独自に世界中でエネルギー開発やインフラ整備などを受注すればよい。しかし実際のところ、日本でマスコミや著名言論人が誘導する中国脅威論は、対米従属の裏返しでしかない。「日本も中国に負けないよう、米欧に頼らず、世界中で石油ガスの利権をあさろう」という呼びかけは全く行われず、それと正反対の「中国は危ないので、日米同盟(独自の利権あさりをタブー視する対米従属)を強化しよう」という呼びかけが席巻している。日本で流布する「ナショナリズム」は、実はナショナリズムからほど遠い、日本より米国の国益を重視する売国的態度だ。売国的態度を愛国的態度と勘違いしている人が多いのが、今の日本の悲劇である。
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