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公務員の仕事と残業

私自身、自分のよく知りもしない話題をブログで取り上げて得々と論評したりしているし、ブログなんてその程度のものでいい、とも思っている。べつに学者の論文ではないのだから。しかし、後で話題の事件の内情を知って自分の軽挙妄動を後悔することも無いではない。
さて、一部で問題視されている「埼玉県職員残業2000時間問題」だが、これについて「海を往く者」氏が貴重な発言をしているので、「引用2」で紹介する。これを読めば、内部事情を知らずに騒ぐことの愚かしさが分かる。私自身はこの件についてはまだ発言していなかったが、うっかりすると私自身ブログで書いていた可能性もある。まあ、書いていたとしても、私は「官僚は批判してもいいが、公務員は無闇に批判するべきではない」という意見なので、穏健な内容になっていたとは思う。(毎度言うが、「官僚」は「一般公務員」と区別して、「公務員中の支配層」の意味で私は使っている。昔で言えば「キャリア組」である。)この記事を読めば、公務員の仕事が我々のイメージとどれほど違うものか、よくわかる。貴重な証言である。ただし、部署や個人による労働量の偏りは民間企業以上にひどすぎるようだ。これは政治的に是正するべきものだろう。
蛇足ながら、一言。「海を往く者」氏は、最後に不要な憎まれ口をきいて、それまでの内容を台無しにすることが多い。なぜそのような毒々しい罵言を締めの言葉にするのか理解しがたいが、一応、全文を転載する。



(引用1)

「税金泥棒」…埼玉県職員「残業2000時間」に苦情25件

• 産経新聞
• 2012年11月07日09時16分
 昨年度、一部の埼玉県職員の残業時間が2千時間を超えていた問題で、上田清司知事は6日の定例記者会見で県民からの苦情の手紙などがこの日までに25件届いたことを明らかにした。「民間の常識では考えられない」「税金泥棒」など、辛辣な批判が多かったという。
 このほか県民からは、「長時間の労働が何日も続いたら効率がいいわけがない」などの指摘もあり、上田知事も「正鵠を得ている」。一方、「民間ではサービス残業でやるものだ」という意見については「厳密に言えばサービス残業は労働基準法違反になる」と反論した。
 今後、職員数を増やすかと問われた知事は「コンピューターやシステム開発で労働時間は短縮されている。同じ仕事でも人によって時間は変わる」などと否定した。





(引用2「海を往く者」より)


公務員の時間外残業
<< 作成日時 : 2012/11/07 06:22


実はよくあること。


 この県会議員の「単純計算」がおかしい。二倍と言っても土日祝日で110日くらいあるから、土日祝日の7割で12時間登庁していたらそれだけで時間外924時間。1ヶ月平日20日×12で240日あるから、2017-924=1093時間で、1093÷240すれば1日の残業時間は4時間半~5時間程度だ。決してありえない数字ではないし、「住んでいたのか」と思うような数字ではない。おそらく「通常の二倍働いてる」=「一日16時間労働」=「朝から翌日未明まで働いている」なんて浅はかな考えをしたんだろうが、だいたい一日16時間も働くような人間が何故週に2日も休みが取れていると思うのか。こんなアホな発言をする議員は要らない。即刻辞職すべきだ。実際これに近い勤務をしている都道府県職員は実在する。都道府県庁の本庁舎などだ。議会対応している知事部局の総務担当課や経理系の職員は激烈な残業が横行している。予算編成、他部局への聞き取り、調整、執行状況の確認のほか、総務省からの天下り部長や財政課長からの厳しい締め付け、厳しい県財政からどのように予算配分するかなど上と下からの板挟み状態。深夜や土日に県庁の窓に光がともっていることも珍しくない。県庁も他の組織と同様、現場の職員レベルで合理的な事務処理方法を見出しても、「そんな方式は認められない」と一蹴されてしまう(上記の天下り部長や財政課長の責任になるから)。ちなみに霞ヶ関の残業は、省庁や部署にもよるが国会対策で大臣はもちろんのこと、政治家の先生が官僚への嫌がらせに深夜に「資料をまとめて明日までに出せ」「改革案を至急まとめろ」「答弁書を作れ」をやるからだ。これでは定時という概念など関係なくなる。巷で言われる、無駄な人員、無駄な仕事は、それらのような組織が抱える諸問題にまで言及しないとナンセンスである(役所は労働者じゃないので労働3法適用対象外)。公務とか公のサービスというのは、売上や成績に評価されない以上、ゴールはないから、やろうと思えばいくらでも時間をかけ質を高めることができる。だが、果たしてそれだけの価値があるのかはわからないし、みえにくい公務も多い。おまけに働かない奴は本当に働かない。何年も前だが、鬱病だからデスクに座ってるだけって奴を知っている。病気や頭が悪くて仕事ができない奴が頭数に入れられるためにそいつに仕事を回せないから他の職員が大変になる。

 財務・税務部門なら、開発と平行して出力テストとか半年以上やっていてもまったくおかしくない(開発工程がA税の開発→A税のテストとB税の開発→B税のテストとC税の開発…etcとかいう流れ作業なのは当たり前なので、テスト期間が1年くらいあっても驚かない)。税のこととシステムのことをすべて把握した上で、システムを構築しなくてはならないから、このような芸当が可能な人は少ない。47都道府県中、自前でシステム開発をやっていないのは2県しかない。後は県庁内にシステム開発部門を抱えている。財務・税務は情報漏洩対策で、委託業者に開発委託しても、業者に庁舎内で開発やテストをさせているからだ。その監視役はブラックIT土方のデスマーチを監視していなければいけないので、下手をすると開発タコ部屋に居座っぱりになる。これに加えてしょっちゅう微妙でつまらん法律改正を繰り返すから、昭和の頃に作った古いシステムなんかだとプログラムがツギハギだらけになっているので、全然関係のないところに影響が出たりして、テストも大変だし、更にシステム改修中に総務省や本庁がいきなり見解の変更とかした日にはまたプログラムの見直し、組み直しになる。さらに税務は夜間バッチ・夜間出力をしばしばやっているから、通常の印刷オペなんか立会いが0:30~5:30とかいうのはざらだ。しかも税収などは1回送ったら終わりじゃなくて、未納者に滞納通知とかも出さなければならないので、毎月のようにアホみたいに夜間処理をやっている。通常業務でも意外と不規則労働で、深夜作業が多いから体を壊す人間が多い。しかも予算の上限があるのと、表向きの残業時間を減らすために届け出ずにサービス残業している人も多い。専門知識がある職員に仕事が集中するが、それをカバーするために派遣や臨時任用で職員を雇っても、上記の理由で税務と技術の両方を兼ね備えている人間などいるわけがないので、コピーとかワープロ打ちぐらいしか委任できず、正規職員の穴埋めにはならない。むろん、そういう人間が必要な部署は通常業務時間内に業務が終了するように増員(適正配置)するのが妥当であるが、そういう動きは少ない(優秀な人間ほど手放したがらないのは官も民も一緒)。

 今回の問題点は,公務員はセクショナリズムが行き過ぎているので自分の仕事以外は完全ノータッチになるのは仕方がないにしても、管理職がそれを理解し、その業務ができる人間に職務命令しなかったのと、忙しい部署と暇な部署の仕事の配分を部門を超えて管理出来ない役所の縦割り行政にある。とてつもなく多忙な部署でも皆2、3年で異動できると判っているので我慢している。こういう業務に耐えられない人は仕事ができないという評価を人事にされるため、そこで堪えれば出世コース、耐え切れなければ一生窓際コースだからだ。同じ例として何か工事を行う場合に、民間なら、知り合いの業者に来てもらって、値段交渉して安くしてもらって、口頭ベースでも双方が納得すれば次の日からでも工事ができる。ところが役所では、それから設計して、仕様書を書いてから入札公告を出して、指名業者を選んで入札。その上で契約書を交わして、工程表を確認して、やっと工事開始。終わったら検査。それも検査調書を作成して、それから支払い。工事にかかれるのは最速で一カ月先。万が一、価格が安すぎたり、期限が短すぎたりして誰も入札しない場合には再度公告。途中で業者が工事を放り投げたらその対応にも当たらなければいけない。このようなやり方を変えなければ、残業しても仕事はたまる一方だ。しかし、決まりとおりに事業をしなければ国に交付金や補助金を返還しなければならない。国がやり方を変えなければ残業は減らないし、人を減らしても、残業が増えるから同じこと。人を増やせというが、そこらの素人を他の部署から引っ張ってきても、仕込むのに1年以上かかる。その場合、もっと現場の人間に負担がかかる(教育係をつけるとマイナス2人になってしまうので、余裕のあるところしかできないが、余裕があるのなら増員する必要が無い)。むしろ 残業代もうちょっとくらいなら払っても 他に人を雇うより安い計算になるんじゃないか? そういう意味では節約していると言える。仕事ができなくても制度上おいそれとクビにできない上に、当然行政サービスを滞らせるわけにはいかないので、結果として仕事のできる人材を限界まで使い倒し、できない人間は閑職に行き適当に過ごしている。実際に役所に必要なのは、能力のない不真面目な人間を切る事ができる仕組みを作る事と有能な人を育てて忙しい部署に配属する事だ。

 「それなら複数年でやれば良いではないか」と思ったそこの人、甘い。自治体の会計は法律で「単年度会計」が義務付けられている(憲法第八六条の「予算」で、議会の予算に対する審議権の確保の要請があるから)。だから、その年に入ってきた金はその年に使わないと憲法違反でアウトだ。民間なら推奨される「経費節減で金を残しました」も基本的に憲法違反でアウト。そもそも、国からの交付枠は前年度の予算要求で何に使うか紐がついているから、他に流用するのはもちろんの事、ヘタな経費削減をやると国の監査で一発アウト。どうしても複数年度にまたがってやらなければいけない業務については、議会に諮って「債務負担行為」として認めてもらえれば出来るが(例えば研究開発や施設の立替とか、5年リースの機械とか。「たかだか官用車のリース契約や自販機ごとき、一々議案出すのかよ」てのもあるが、敢えてここでは問わないw)、公務員の世界は、民間が手出ししない幅広い範囲をカバーしなければいけないから、いろいろな業務がある。民間ならより好みして非効率部門として止められるが、公務員の世界はそうではない。非効率だからといって止められない業務がたくさんある。上記のような工事関係でよく要求されるのが技術士という国家資格だ。これは合格率が15%を切っているような難関資格で、民間人でも持っている人がかなり限られる上に、これを持っている人は基本的に「専門職」扱いになる。専門職のスペシャリストが残業の嵐になるのはお役所も民間も変わらない。そして資格持たない新人やオチこぼれや派遣や臨時採用が9時5時の暇暇になってしまうのは、お役所も民間も変らない。問題は、この「専門職お役人」の仕事は、基本的に一般市民からは見えない場所にいる(窓口にいないし、ほぼ業者しか出入りしない執務室で仕事している)から「公務員は皆暇」という誤解が生まれる。「銀行員は3時に窓口閉まるから暇だろ」と同じ理屈だ。公務員と一口で言っても業務は窓口・福祉・財政・税務・農政・建設・教育などなどめちゃくちゃ幅広い。忙しさに偏りが出るのはある程度仕方のないことだと思う。例えば、教育は価値が計りにくいので、大学を除いて裁量労働制でもないのに教員に残業代は一切出ない。だから何十時間もかけて準備した授業だってできるし、その場しのぎの授業だってやろうと思えばできてしまう。

 今回の場合、県職員はまだ残業手当を満額でもらっているようだが、出向で職場に来ていた知り合いの市役所職員は月40時間で打ち止め、毎月サービス残業。災害があれば休日だろうが夜中だろうが出勤している由。多分毎年ブラックな仕事させられていたと思う。そこで一番簡単に経費削減できるのが人件費だ。文句を言わない公務員の給料を下げて、新規採用を控えればいい。ただそれがこういう事態を招くし、今回の大震災のような災害時の対応の遅延にもつながる。自衛隊など直接救助に携わる公務員のみがクローズアップされるが、避難所を開くのも食べ物を供給するのも公務員だ。もともと日本の公務員の数は他の国家と比較して、対住民あたりの数は1/2程度と極めて少ない。これでは他国と同程度の公共サービスが出来るわけもなく、それを補完しているのが独立行政法人である。役割分担は、「国や地方の政府が政策を立案しスタート、それの運営を独法に任せる」というパターンが多い。だから縦割り行政で無駄が出るところはあるが、もともとはメディアや左系政治家からの意味のない役人攻撃で減った労働力を補完してのものだ。業務の無駄を省くことは大事だが、必要以上に冷遇するべきではない。他に、「公務員は仕事が遅い」という批判もよく散見されるが、実際に民間と役所の両方を見たことがあるものの、必ずしも民間の方が公務員より優秀とは思えないし、効率的な働きをしているとも思えない。どっちにも優秀な人もいるし無能な人もおり、その比率は民間も役所も変わらない。役所には、民間よりも厳しい公平性や説明責任が求められ、法律の規制などもあるし、前述のような「議会待機」という無駄な事務もあるから、そういった点で民間からすると非効率だとは思うが、「民間の方が役所よりも優れている」と言うのは、思いあがりだと思う。行政改革だなんだといって人減らし、給料減らしをされる中、こういうモンスターペアレントや悪質クレーマーが増えているのも事実だ。知事は管理職が悪いと言うが、管理職は残業がつけられないから、同じように残業しても残業したことにならないから、実態がわからないだけ。最終責任は知事にあるんだから、責任回避のような発言は止めてほしい。つまり、結局本来あるべき業務運営が不十分な状況で、このような状況では行政、その他都道府県民等の動向を左右するかじ取りを任せることについて大いなる疑問が生じざるを得ないということもできそうだ。

 ・・・一応、組合と言うのはあるが、あれは政治活動と民主党の応援しかしないのでまるで役に立たないので、即刻解散すべき。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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