自動車メーカーのダイハツ工業は、国の認証取得の不正問題で新たに174件の不正が見つかったと発表しました。会社は、国内外のすべての車種で出荷の停止を決めました。
■不正データ問題 ダイハツ・トヨタ会見
ダイハツ工業では、ことし4月、海外向けの乗用車の衝突試験で不正が発覚し、その後、国内向けの車種でも国の認証を不正に取得していたことが明らかになっています。
会社は20日、第三者委員会によるその後の調査で、新たに25の試験項目で174件の不正が見つかったことを公表しました。
衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれ、不正は1989年から確認されたということです。
生産をすでに終了したものも含めて64車種に上っています。
この中には他社ブランドで販売される車としてトヨタ自動車の22車種、SUBARUの9車種、マツダの2車種が含まれています。
ダイハツは20日、国内外のすべての車種で出荷の停止を決めました。
不正の原因について、第三者委員会は、
▽短期間での開発の推進や、
▽激しい叱責や非難が行われる組織風土などの問題を指摘しています。
ダイハツは、「責任は経営陣にあり、自動車メーカーとしての根幹を揺るがす事態だと大変重く受け止めております。企業風土の抜本的な改革に取り組んでまいります」などとするコメントを発表しました。
■第三者委「認証試験 軽視と言わざるをえない」
一連の不正について、調査にあたった第三者委員会が記者会見を開き「認証試験を軽視していたと言わざるをえない」などと厳しく指摘しました。
委員長を務める貝阿彌誠 弁護士は「不正が発生した大きな原因は、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われ、『認証試験は合格して当たり前』という強烈なプレッシャーがあったことだ。認証試験を軽視していたと言わざるをえない。まずもって責められるべきは現場の従業員ではなく経営幹部であると考える」と述べました。
報告書での指摘内容 原因や再発防止策は
第三者委員会の調査報告書によりますと、新たに見つかった不正は、衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれて、装置の不正な加工や交換、速度の改ざんなどがあったとしています。
【事例】
具体的には、
▽エアバッグについて衝突試験では、本来、衝突をセンサーで検知し、エアバッグを作動させる必要があるにも関わらず、タイマーによって作動させていた事例がありました。
▽衝突時の衝撃試験では、運転席側のかわりに助手席側の試験結果を使用していた事例がありました。
【原因・背景】
報告書の中では、一連の不正の原因に経営の問題があると指摘しています。
▽短期間の開発が会社の存在意義として根付き、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによって現場が極度のプレッシャーを受け、「認証試験は合格して当たり前」という環境にあったこと
▽現場任せで管理職が関与しない態勢で職場環境がブラックボックス化し、チェック体制が構築されていなかったこと
▽過去から踏襲されたグレーな方法として漫然と現場で繰り返されていた不正行為があり、「技術的には問題なければ法規上も問題ないはず」というような法規適合性について正確な知識や理解が不十分であること
▽開発日程に余裕がない中で認証試験を軽視し、不正確な情報を記載してはならないというごく当たり前の感覚を失うほどコンプライアンス意識が希薄化していた、などと指摘しています。
こうした現場の実情を管理職や経営幹部が把握できなかった背景には、
▽現場の実務や状況に管理職が精通しておらず、現場サイドから報告や相談ができない現場任せの対応になっていたこと
▽開発や認証のプロセスにおけるチェック体制が構築されておらず、モニタリングに問題があったことなどが指摘されています。
こうしたことから、短期開発の強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだもので、今回の問題でまず責められるべきはダイハツの経営幹部だとしています。
そのうえで、低コストで良質な自動車を提供するために短期開発を会社らしさと捉える経営方針の中で、組織内のゆがみや弊害を察知する経営幹部のリスク感度が鈍かった
以下全文はソース先で
NHK 2023年12月20日
■不正データ問題 ダイハツ・トヨタ会見
ダイハツ工業では、ことし4月、海外向けの乗用車の衝突試験で不正が発覚し、その後、国内向けの車種でも国の認証を不正に取得していたことが明らかになっています。
会社は20日、第三者委員会によるその後の調査で、新たに25の試験項目で174件の不正が見つかったことを公表しました。
衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれ、不正は1989年から確認されたということです。
生産をすでに終了したものも含めて64車種に上っています。
この中には他社ブランドで販売される車としてトヨタ自動車の22車種、SUBARUの9車種、マツダの2車種が含まれています。
ダイハツは20日、国内外のすべての車種で出荷の停止を決めました。
不正の原因について、第三者委員会は、
▽短期間での開発の推進や、
▽激しい叱責や非難が行われる組織風土などの問題を指摘しています。
ダイハツは、「責任は経営陣にあり、自動車メーカーとしての根幹を揺るがす事態だと大変重く受け止めております。企業風土の抜本的な改革に取り組んでまいります」などとするコメントを発表しました。
■第三者委「認証試験 軽視と言わざるをえない」
一連の不正について、調査にあたった第三者委員会が記者会見を開き「認証試験を軽視していたと言わざるをえない」などと厳しく指摘しました。
委員長を務める貝阿彌誠 弁護士は「不正が発生した大きな原因は、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われ、『認証試験は合格して当たり前』という強烈なプレッシャーがあったことだ。認証試験を軽視していたと言わざるをえない。まずもって責められるべきは現場の従業員ではなく経営幹部であると考える」と述べました。
報告書での指摘内容 原因や再発防止策は
第三者委員会の調査報告書によりますと、新たに見つかった不正は、衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれて、装置の不正な加工や交換、速度の改ざんなどがあったとしています。
【事例】
具体的には、
▽エアバッグについて衝突試験では、本来、衝突をセンサーで検知し、エアバッグを作動させる必要があるにも関わらず、タイマーによって作動させていた事例がありました。
▽衝突時の衝撃試験では、運転席側のかわりに助手席側の試験結果を使用していた事例がありました。
【原因・背景】
報告書の中では、一連の不正の原因に経営の問題があると指摘しています。
▽短期間の開発が会社の存在意義として根付き、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによって現場が極度のプレッシャーを受け、「認証試験は合格して当たり前」という環境にあったこと
▽現場任せで管理職が関与しない態勢で職場環境がブラックボックス化し、チェック体制が構築されていなかったこと
▽過去から踏襲されたグレーな方法として漫然と現場で繰り返されていた不正行為があり、「技術的には問題なければ法規上も問題ないはず」というような法規適合性について正確な知識や理解が不十分であること
▽開発日程に余裕がない中で認証試験を軽視し、不正確な情報を記載してはならないというごく当たり前の感覚を失うほどコンプライアンス意識が希薄化していた、などと指摘しています。
こうした現場の実情を管理職や経営幹部が把握できなかった背景には、
▽現場の実務や状況に管理職が精通しておらず、現場サイドから報告や相談ができない現場任せの対応になっていたこと
▽開発や認証のプロセスにおけるチェック体制が構築されておらず、モニタリングに問題があったことなどが指摘されています。
こうしたことから、短期開発の強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだもので、今回の問題でまず責められるべきはダイハツの経営幹部だとしています。
そのうえで、低コストで良質な自動車を提供するために短期開発を会社らしさと捉える経営方針の中で、組織内のゆがみや弊害を察知する経営幹部のリスク感度が鈍かった
以下全文はソース先で
NHK 2023年12月20日