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慢性的低血圧の人生

中島たい子の「漢方小説」は、東京に住む30代独身女性の日常を、彼女の漢方医療体験を中心に書いた、コメディ色の強い小説で、文章が実に面白いが、その中にこういう一節がある。

先生は血圧計を出して、私の腕に腕帯を巻きつけながら言った。
「目盛りの方も見ておきましょう」
上が120の下が68だった。こんな立派な値になったのは今までにないことだった。

念のために言えば、主人公の女性は慢性的な体調不良で、ここで言う「こんな立派な値」は皮肉でも何でもない。つまり、彼女は慢性的な低血圧で、彼女の体調不良の原因もそこにある、と想像できるわけだ。なお、話の最初のあたりで彼女が原因も病名も不明の胃痙攣のような症状で(西洋医療では処置なしとされて)初めて漢方医にかかり、その時測った血圧の数字が「上99下60」である。私がかつて急性の(降圧剤のためとはっきり原因が特定できる)低血圧の時に測定機に出た数字がこれに近い。こういう数字が「普通である」状態が異常だからこそ体調不良の一生になるのではないか。
ちなみに彼女(主人公)は下戸である。酒飲みなら、自然と辛いつまみを食べるから、まず低血圧にはならないだろう。




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