「大摩邇」経由で、「異端医師の独り言」から転載。
ダイエットについての様々な誤解や迷信を打ち破る知識がたくさん入っている記事だ。
「工業圏の住人は、普通に生活していれば肥る」
というのは、私もしばしば述べていることである。当たり前の話だ。過剰に栄養を摂取し、ほとんど運動をしなければ、「過密飼い」の家畜も同然に肥るに決まっている。家畜でも放牧すれば、自由に運動するから、締まった体になる。(農業漫画(?)「銀の匙」参照)特に家庭の主婦などが体重過剰であるのは、その生活が「食べ過ぎ、運動不足」であるからだ。ならば、ダイエットの方法は「食べないこと」、「運動すること」の二つしか無いのは当然であり、「食べてダイエット」というのは愚の骨頂である。
下の「異端医師の独り言」というサイトには、減塩が血圧降下に良い、という考えが、エビデンス(証拠、だろうか)がほとんど無い、ということなど、様々な「医学の迷信」を打破する記事が多い。前にも引用したような記憶もある。
なお、安保徹という医師もそうした「医学の迷信」を打破する活動(言論)を行っており、たとえば血圧に関しては、ほとんど生まれつきであり、高血圧が自然である人もいれば、低血圧が自然である人もいる、という考えだ。むしろ低血圧の方が不活発な体質で不便だ、という考えのようで、彼自身は血圧が常時170~180ある「高血圧」だが、まったく気にしていないと言う。もちろん、降圧剤など飲んでいないのだろう。要するに、血圧は個人差が大きく、「正常値」など存在しない、ということである。
血圧に「正常値」を設けた結果、人為的に「高血圧症」とされて「要治療」となった人間が膨大におり、それは医療業界の一大金蔓になっている、ということである。これが数年前の「メタボ基準」の真相だろう。
(以下引用)
2013年01月29日21:20
おデブの内科的治療
異端医師の独り言さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/leeshounann/archives/51300447.html
<転載開始>
カテゴリ医学、科学論文の要約
工業圏の住人は、普通に生活していれば肥る、これは環境と遺伝子のミスマッチによる。環境とは「美味しい食品を簡単に手に入れられるようになった、座ったままの生活、交通手段、の発達など」。遺伝子とは「かつて人類が飢餓に際し、発達させてきた倹約遺伝子群」。倹約遺伝子群は「飢餓(ダイエット)に際し、基礎代謝を低下させ、飽食時に余分なエネルギーを内蔵脂肪として蓄える」働きをし、生存の可能性を高めた。
100人に一人くらい、ダイエットを意識しなくても肥らないヒトがいる。かかる人類は、万歩計で計れない運動を無意識のうちにしている。例えば、椅子に座っていても無意識に体を傾け、腹筋や大腿筋を使ったり、それにより一日数百カロリー(数字は失念)余計にカロリーを消費する。
さて、ダイエットに科学のメスが入ったのは 1994年、抗肥満ホルモン leptinの発見に端を発する。その後、ghrelinをはじめ食欲をコントロールするホルモンが次々に発見され、2001年頃から超一流の科学誌に肥満やダイエットの総説を散見するようになった。
2008年8月号の NEJM*に首記の「Nonsurgical Management of Obesity in Adults」という論文が掲載されている。著者(Eckel,R.H.)は、減塩政策で失態を演じた国立心肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインをそのまま紹介し、ダイエットを理解しない能天気な論文を鵜呑みにし、そしてダイエット薬服用へと誘導している感がある。しかし、何しろアメリカの超一流内科誌、僕の経験とあわせ、ダイエットの科学を紹介します。
論文*では、まず食事について諸説が紹介されている。「総カロリーを減らして減量に成功した研究」が紹介されているが、摂取カロリーを減らせれば痩せるのは当たり前。
低脂肪食については論争があると記されているが、脂肪は肥らない。いくら血中脂肪濃度が高くなっても、それを体脂肪に変換するホルモン、インスリンがでてこない(=分泌されない)からだ。ヨガの修行に「バターと牛乳だけを食べる」のがある。一日の摂取カロリーは7千数百 Kcalになるが、みるみる痩せる。かつては、これをヨガの神秘性に求めていたが、種を明かせば(科学が進歩すれば)仕掛けは簡単。
低炭水化物食は、一時的ダイエット効果があるが一年続かないと紹介されている。
意外だったのは、低糖化指数ダイエット。糖化指数とは、食べた後 2時間目の血糖値(血糖値の濃度下面積=AUC)、これが高くなりやすい食品は肥りやすいと考えられている。なぜなら、インスリンとインスリン様成長因子が分泌されるからだ。2つの無作為化試験によると、低糖化指数ダイエットは同等のカロリー制限と減量効果に差がなかったそうだが、前者ではインスリン分泌が抑制された。追試を待つしかない。
高タンパク食は肥満ホルモンが分泌されず、基礎代謝を高め、ダイエット中の筋肉量低下を抑制する。だからお勧め。
数社のダイエット食、いずれも減量効果が示されているが、こんなものを一生食うわけにはいかない。
現在の知見をもって、僕がすすめるダイエット食は、高タンパク・中脂肪・低糖化指数食。
運動にいたっては噴飯ものであった。一日 80分の歩行、あるいは 35分のエアロビック運動**、これにカロリー制限を加えると、さらに減量効果があったという研究を紹介している。そんなの当たり前、マラソン中毒者やサーファーでない限り、誰がこんな運動を毎日続けられるの? 差を出せばいいというものではなく、実行可能な役に立つ研究を待ちたい。Science誌***によると、過激な運動は食欲亢進ホルモンを増加させ、食欲低下ホルモンを低下させるので、肥りやすくなる。
FDA(食品医薬品局)で認可されている痩せ薬は 4つ、Diethylpropion、Phentermine、Orlistat、そしてSubtramine。いずれもインターネットで購入できる。
前 2剤は、覚せい剤の誘導体、日本のサノレックスと似たものと思われる。論文では、習慣性の可能性には言及しているものの、長期投与で安全だったという研究結果を紹介している。まだ比較的新しい薬なので 3カ月以上は連用しない方が無難だと思います。
僕はサノレックス(食欲抑制剤)を処方して 20年近くになりますが、日本発の薬なのでエビデンスに乏しく、慎重に処方しています。経験的に、連用しなければ習慣性は無いようです。肥満者、2型糖尿病、脂質異常症や高血圧症には、本剤の助けを借り、5日の断食を勧めています。断食により、血中にケトン体という食欲を抑制する物質が出現し、以降のダイエットが楽になります。減量に成功したら、それをいかに持続させるかが重要。詳細は、カウンセリングしています。
Orlistatは消化管での脂肪吸収を阻害する。結果、文字通り脂肪を排泄する、非常に安全な薬だが便意を感じると待ったなし。論文では、Orlistatを長期間服用しても安全でダイエットを維持できたという研究結果が報告されている。が、だいぶ前に「Orlistatを長期間服用しても痩せない」という論文を読んだ。この痩せ薬、製薬会社を肥らすだけ。
Subtramineは食欲を抑制する薬。スタッフ全員で飲んでみたが、効いたのは一人だけ、僕に至ってはもりもり食欲が亢進した。本剤による心臓死が続いたため、イタリアでは、本剤の承認を取り消した。論文では、副作用として軽度の頻脈と血圧上昇(時に重篤)と紹介されているだけ。
誰しも割れた腹筋にあこがれるので、TVショッピングの類では、次から次へと腹筋商品が紹介されます。引き締った二の腕もしかり。残念ながら、部分痩せはできないのです。ボディービルダーは猛烈に食べ、筋トレをして、そして猛烈なダイエットをするのですよ。
最後に、ダイエットにあたりモチベーションを高める研究結果***を。ダイエットすると、身体がいわゆる「倹約モード」に入り、基礎代謝が低下する。そのため肥りやすくなるのだが、この倹約モードが若さを保ち長寿をもたらすと考えられている。実験に供したすべての動物で、自由に摂食させた場合と強制的にダイエットさせた場合、ダイエット群の方が長生きした。ヒトでは、130歳まで生きると予想されている。アメリカで超一流の科学者たちは徒党を組んで、ダイエットに取り組みだした。彼らの目的は、従来考えられていた天寿をこえて、未来を見たいそうだ。
これは僕の見方ですが、売れっ子モデルはかなり痩せていますよね、世の男性が好むから。もしかすると、子孫を残す上で、わが遺伝子群が健康な女性を選別しているのかもしれない。
*New England Journal of Medicine 358;18:1941, 2008
**有酸素運動なるもの、誤訳から生じたしろもの。30分運動するとして、30分間続けても、10分ずつ分けても、消費される脂肪量は同じ、念のため
***Research on Aging: The End of the Beginning. Science 299:1339. 2003
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com 拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2008年11月の記事、校正)
ダイエットについての様々な誤解や迷信を打ち破る知識がたくさん入っている記事だ。
「工業圏の住人は、普通に生活していれば肥る」
というのは、私もしばしば述べていることである。当たり前の話だ。過剰に栄養を摂取し、ほとんど運動をしなければ、「過密飼い」の家畜も同然に肥るに決まっている。家畜でも放牧すれば、自由に運動するから、締まった体になる。(農業漫画(?)「銀の匙」参照)特に家庭の主婦などが体重過剰であるのは、その生活が「食べ過ぎ、運動不足」であるからだ。ならば、ダイエットの方法は「食べないこと」、「運動すること」の二つしか無いのは当然であり、「食べてダイエット」というのは愚の骨頂である。
下の「異端医師の独り言」というサイトには、減塩が血圧降下に良い、という考えが、エビデンス(証拠、だろうか)がほとんど無い、ということなど、様々な「医学の迷信」を打破する記事が多い。前にも引用したような記憶もある。
なお、安保徹という医師もそうした「医学の迷信」を打破する活動(言論)を行っており、たとえば血圧に関しては、ほとんど生まれつきであり、高血圧が自然である人もいれば、低血圧が自然である人もいる、という考えだ。むしろ低血圧の方が不活発な体質で不便だ、という考えのようで、彼自身は血圧が常時170~180ある「高血圧」だが、まったく気にしていないと言う。もちろん、降圧剤など飲んでいないのだろう。要するに、血圧は個人差が大きく、「正常値」など存在しない、ということである。
血圧に「正常値」を設けた結果、人為的に「高血圧症」とされて「要治療」となった人間が膨大におり、それは医療業界の一大金蔓になっている、ということである。これが数年前の「メタボ基準」の真相だろう。
(以下引用)
2013年01月29日21:20
おデブの内科的治療
異端医師の独り言さんのサイトより
http://blog.livedoor.jp/leeshounann/archives/51300447.html
<転載開始>
カテゴリ医学、科学論文の要約
工業圏の住人は、普通に生活していれば肥る、これは環境と遺伝子のミスマッチによる。環境とは「美味しい食品を簡単に手に入れられるようになった、座ったままの生活、交通手段、の発達など」。遺伝子とは「かつて人類が飢餓に際し、発達させてきた倹約遺伝子群」。倹約遺伝子群は「飢餓(ダイエット)に際し、基礎代謝を低下させ、飽食時に余分なエネルギーを内蔵脂肪として蓄える」働きをし、生存の可能性を高めた。
100人に一人くらい、ダイエットを意識しなくても肥らないヒトがいる。かかる人類は、万歩計で計れない運動を無意識のうちにしている。例えば、椅子に座っていても無意識に体を傾け、腹筋や大腿筋を使ったり、それにより一日数百カロリー(数字は失念)余計にカロリーを消費する。
さて、ダイエットに科学のメスが入ったのは 1994年、抗肥満ホルモン leptinの発見に端を発する。その後、ghrelinをはじめ食欲をコントロールするホルモンが次々に発見され、2001年頃から超一流の科学誌に肥満やダイエットの総説を散見するようになった。
2008年8月号の NEJM*に首記の「Nonsurgical Management of Obesity in Adults」という論文が掲載されている。著者(Eckel,R.H.)は、減塩政策で失態を演じた国立心肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインをそのまま紹介し、ダイエットを理解しない能天気な論文を鵜呑みにし、そしてダイエット薬服用へと誘導している感がある。しかし、何しろアメリカの超一流内科誌、僕の経験とあわせ、ダイエットの科学を紹介します。
論文*では、まず食事について諸説が紹介されている。「総カロリーを減らして減量に成功した研究」が紹介されているが、摂取カロリーを減らせれば痩せるのは当たり前。
低脂肪食については論争があると記されているが、脂肪は肥らない。いくら血中脂肪濃度が高くなっても、それを体脂肪に変換するホルモン、インスリンがでてこない(=分泌されない)からだ。ヨガの修行に「バターと牛乳だけを食べる」のがある。一日の摂取カロリーは7千数百 Kcalになるが、みるみる痩せる。かつては、これをヨガの神秘性に求めていたが、種を明かせば(科学が進歩すれば)仕掛けは簡単。
低炭水化物食は、一時的ダイエット効果があるが一年続かないと紹介されている。
意外だったのは、低糖化指数ダイエット。糖化指数とは、食べた後 2時間目の血糖値(血糖値の濃度下面積=AUC)、これが高くなりやすい食品は肥りやすいと考えられている。なぜなら、インスリンとインスリン様成長因子が分泌されるからだ。2つの無作為化試験によると、低糖化指数ダイエットは同等のカロリー制限と減量効果に差がなかったそうだが、前者ではインスリン分泌が抑制された。追試を待つしかない。
高タンパク食は肥満ホルモンが分泌されず、基礎代謝を高め、ダイエット中の筋肉量低下を抑制する。だからお勧め。
数社のダイエット食、いずれも減量効果が示されているが、こんなものを一生食うわけにはいかない。
現在の知見をもって、僕がすすめるダイエット食は、高タンパク・中脂肪・低糖化指数食。
運動にいたっては噴飯ものであった。一日 80分の歩行、あるいは 35分のエアロビック運動**、これにカロリー制限を加えると、さらに減量効果があったという研究を紹介している。そんなの当たり前、マラソン中毒者やサーファーでない限り、誰がこんな運動を毎日続けられるの? 差を出せばいいというものではなく、実行可能な役に立つ研究を待ちたい。Science誌***によると、過激な運動は食欲亢進ホルモンを増加させ、食欲低下ホルモンを低下させるので、肥りやすくなる。
FDA(食品医薬品局)で認可されている痩せ薬は 4つ、Diethylpropion、Phentermine、Orlistat、そしてSubtramine。いずれもインターネットで購入できる。
前 2剤は、覚せい剤の誘導体、日本のサノレックスと似たものと思われる。論文では、習慣性の可能性には言及しているものの、長期投与で安全だったという研究結果を紹介している。まだ比較的新しい薬なので 3カ月以上は連用しない方が無難だと思います。
僕はサノレックス(食欲抑制剤)を処方して 20年近くになりますが、日本発の薬なのでエビデンスに乏しく、慎重に処方しています。経験的に、連用しなければ習慣性は無いようです。肥満者、2型糖尿病、脂質異常症や高血圧症には、本剤の助けを借り、5日の断食を勧めています。断食により、血中にケトン体という食欲を抑制する物質が出現し、以降のダイエットが楽になります。減量に成功したら、それをいかに持続させるかが重要。詳細は、カウンセリングしています。
Orlistatは消化管での脂肪吸収を阻害する。結果、文字通り脂肪を排泄する、非常に安全な薬だが便意を感じると待ったなし。論文では、Orlistatを長期間服用しても安全でダイエットを維持できたという研究結果が報告されている。が、だいぶ前に「Orlistatを長期間服用しても痩せない」という論文を読んだ。この痩せ薬、製薬会社を肥らすだけ。
Subtramineは食欲を抑制する薬。スタッフ全員で飲んでみたが、効いたのは一人だけ、僕に至ってはもりもり食欲が亢進した。本剤による心臓死が続いたため、イタリアでは、本剤の承認を取り消した。論文では、副作用として軽度の頻脈と血圧上昇(時に重篤)と紹介されているだけ。
誰しも割れた腹筋にあこがれるので、TVショッピングの類では、次から次へと腹筋商品が紹介されます。引き締った二の腕もしかり。残念ながら、部分痩せはできないのです。ボディービルダーは猛烈に食べ、筋トレをして、そして猛烈なダイエットをするのですよ。
最後に、ダイエットにあたりモチベーションを高める研究結果***を。ダイエットすると、身体がいわゆる「倹約モード」に入り、基礎代謝が低下する。そのため肥りやすくなるのだが、この倹約モードが若さを保ち長寿をもたらすと考えられている。実験に供したすべての動物で、自由に摂食させた場合と強制的にダイエットさせた場合、ダイエット群の方が長生きした。ヒトでは、130歳まで生きると予想されている。アメリカで超一流の科学者たちは徒党を組んで、ダイエットに取り組みだした。彼らの目的は、従来考えられていた天寿をこえて、未来を見たいそうだ。
これは僕の見方ですが、売れっ子モデルはかなり痩せていますよね、世の男性が好むから。もしかすると、子孫を残す上で、わが遺伝子群が健康な女性を選別しているのかもしれない。
*New England Journal of Medicine 358;18:1941, 2008
**有酸素運動なるもの、誤訳から生じたしろもの。30分運動するとして、30分間続けても、10分ずつ分けても、消費される脂肪量は同じ、念のため
***Research on Aging: The End of the Beginning. Science 299:1339. 2003
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com 拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2008年11月の記事、校正)
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