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高校生のための「現代世界」政治経済編1

第三部 政治経済

 地理は政治と経済のための舞台であり、歴史は政治と経済の記録です。現代の世界を知る総仕上げは政治と経済ですが、高校生にとって(いや、大人にとっても)これほど分かりにくいものはありません。特に、近代の経済学は、数学が付き物ですから、文系の人間は最初から敬遠してしまいがちです。しかし、恐れる必要はありません。数学は、学者が自分の学説を権威づけるための装飾にしかすぎないと思っていいのです。我々が知りたいのは、本物の経済であり、経済「学」には用はありません。
 経済学者なんて楽なものです。なにしろ、マルサス(マルクスではありませんよ。)なんてのは、「食糧生産は算術級数的にしか増えないが、人口は幾何級数的に増える」という言葉だけで歴史に名を残したようなものです。要するに、人口の増加に食糧生産は追いつかないから、そのうち人類は深刻な食糧危機を迎えるぞ、ということです。この考えは、ローマクラブの「成長の限界」に換骨奪胎されています。人類の文明の発展によるエネルギー消費は、やがてエネルギー資源の枯渇を招き、人類はエネルギー危機を迎えるというのが、その考えです。ごく当たり前の話のようですが、それまでは誰も言わなかったのです。
 マルクス(マルサスと名前が似てますが、こちらは例の髭親父です。)は、労働による生産は、資本家によって搾取されているという、当たり前の事実を述べただけで、二十世紀の世界を動かしました。彼の説を簡単に言うと、「ある大きさのパイ(でもケーキでもかまいません)をある人数で分けるのに、誰かがズルをして多く取ったら、他の人の取り分が少なくなる」という、幼児でも分かるような説なのです。しかし、彼の説の欠点は、パイの大きさは不変ではなく、文明が進むにつれてパイが大きくなり、一人一人の取り分も大きくなることを無視していたことです。そのため、労働者が、与えられるパイ以上には働く意欲のなかった社会主義国家は、労働者が資本家に飴(給料や昇進)と鞭(解雇される恐怖)で追い立てられ働かされ、パイが自動的に大きくなっていく資本主義国家に経済的に敗北しました。
 そして、経済的敗北とは、そのまま政治的敗北でもあります。
 それによって、資本主義と社会主義の優劣の比較は終わったと思われていますが、果たしてそうなのか、これは後で考えましょう。その前に、資本主義と自由主義、社会主義と共産主義の違いも説明したいと思います。
 政治経済の問題、知るべきことはいろいろありますが、なるべく大事な問題、興味深い問題を中心に、軽く読めるように書いていきましょう。ただし、この本は、みなさんが自分の頭で考え、議論ができるようにするための土台であり、ここに述べられた考えは、私の主観的考えでしかありませんので、その点は注意してください。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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