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高校生のための「現代世界」1

   高校生のための「現代世界」

 始めに

 高校や中学で習う社会科が退屈な学科だということは、多くの学生が感じていることです。その原因は、それが我々の日常生活と無縁な、地名や年号暗記などの些末的知識の習得だけを強制しているからでしょう。我々の生活と無縁な? はたして本当にそうなのでしょうか。
 地理や政治経済は、まさしく現在の我々が生きている世界そのものです。では、それがこんなにも退屈なのはなぜでしょうか。それは、そこには生きている人間の姿が感じられないから、何のドラマも無いと思われるからです。しかし、そこが間違いなのです。
 歴史と地理と政治経済は、実はすべて同一です。いや、同一のものとして扱わなければならないのです。どのような意味で? それは、生きている人間が自らの欲望を実現するための舞台がこの世界であり、そのための手段が政治経済であり、その結果を書いたのが歴史だからです。別の言い方をすれば、この世界は欲望と闘争の世界であり、その記録が歴史です。みなさんは、自分がこれから生きていく世界がどのようなものであるかを知り、その闘争の中に入っていかなければならないのです。政治経済、地理の知識が無い人間は、そして歴史から学ばない人間は、他人に精神的に、そしておそらくは実際的にも支配される人間になるでしょう。つまり、奴隷的国民になるわけです。
 ある意味では、これまでの社会科教育は、その科目を退屈なものにすることによって、日本人の社会意識そのものを希薄にし、政治参加の意欲を失わせたという点で、為政者(官僚や政治家)や社会の実質的支配者(経済的支配層)たちにとっては有益なものだったでしょう。国民の無知や無気力ほど上の人間にとってコントロールしやすいものは無いのですから。だが、それによって精神的な奴隷となっているのが今の日本人なのです。
 みなさんは、いや、我々はもっと真剣に社会科を学ぶ必要があります。学校や予備校の社会科だけではなく、また、スポンサーの意向によって偏向を受けている新聞テレビなどのマスメディアだけでなく、様々な書物やインターネットなどをとおして真の情報を手に入れ、この社会について自らの頭で正しく判断できる人間にならねばなりません。そして、選挙の投票行動を通して、この社会をより良くしていく必要があります。今の社会が悪いのは、確かに、今の大人やその前の世代の無知と無責任のためですが、その原因は実は彼らを無知に追いやった社会科教育のためであり、彼らも被害者なのです。この悪循環をどこかで断ち切らないと、日本に未来は無いでしょう。
 この本は、一応は高校生のための社会科参考書ですが、そこに述べてある事柄のほとんどは、他の参考書にも出ていることです。いや、ほとんどの教科書や参考書は記載された事実や資料に違いはありません。大事なのは、その書物が生きるための武器となるかどうかであり、興味深く、効率的に学べるテキストかどうかなのです。
 では、現代世界(「現代社会」では、限定された科目の話になりますから、私のこの本の題名は「現代世界」とすることにします。)を学ぶポイントは何でしょうか。私の考えでは、それは、次のようなものです。①、②、③、④は世界の見方、⑤は勉強の仕方です。

① 政治は経済を目的として動いている。(簡単に言えば、誰か…個人や団体…が、自分が得をするために政治的手段でそれを実現するということです。)
② 経済は、物的人的資源を金に換える手段である。したがって、地理と経済は密接に関連し、政治とも関連する。(たとえば、ある国が戦争を起こすのは、正義や大義名分のためではなく、その裏に常に金や利益という目的があるということです。)
③ 近現代史は西欧(注:「西欧」は「西洋」の誤記。以下同様)中心の歴史として捉えねばならない。(もっと露骨に言えば、現在の世界は、十九世紀から二十世紀前半に西欧国家が世界を支配したその延長にあり、弱小の国々は、外見上は独立国家でも、実質的には元の宗主国等の支配を受けているということです。日本は十九世紀の侵略からは免れましたが、第二次世界大戦での敗戦によりアメリカに占領され、サンフランシスコ平和条約で名目的には独立は果たしたということになっていますが、今なお日本の中に米軍基地が居座っているという「被占領国家」です。)
④ 国家と国民と政府は区別して捉えねばならない。(これは、我々が日常的にやりがちな誤りです。たとえば、日本の国債残高が何百兆円あって、それは国民一人当たり何百万円の借金に当たるという「説明」がよく新聞に載りますが、借金したのは政府であって、国民ではありません。そうした言い方で責任の所在を誤魔化すのはよくあることです。一般に、新聞記事は「誰が何のためにそういう情報を流しているのか」という視点で見る必要があります。)
⑤ 一般的に、物事の幹となる部分と枝葉の部分を分け、まずは幹となる部分を身につけた上で枝葉の部分を勉強していくこと。(地理で言うならば、まずは西欧の大国と、その関連国家を学ぶべきだということです。たとえ大国でも現代世界の主役ではない南米やアフリカの諸国は最初からは学ぶ必要はありません。また、小国でもベトナムやカンボジアのように大国の植民地政策の犠牲になってきた国々や、現在の世界の焦点である中東諸国は、政治の実際を知るためにも学んだほうがいいでしょう。歴史なら、まずは近現代史のトピック的事件を中心に学ぶべきです。)

 では、これから一緒に「現代世界」について学んでいきましょう。ただし、勉強の主役はあなたであり、自ら主体的に学び、調べていくという姿勢が無いと、ここで学んだものは役に立たないと思ってください。それでは、いざ、未知の世界へ!



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自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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