前に書いた、「撃たれると痛い」のパーネル・ホールの作品が市民図書館にもう一冊(「パズルレディの名推理」というあまり食指の動かない題名だが。)あったので読んでいるが、やはり面白い。で、8割がた読んでも、犯人が分からないので、読書を中断して、作中にあったクロスワードパズルをしてみた。(作品内の事柄に関する言葉が使われているので、作品内容を思い出す役に立つ。)そちらも7割か6割程度しか完成していないが、解いている途中で、作中の犯罪の意味と犯人が分かった気がしたので、書いて みる。たぶん、正解だと思うので、これから読んでみたいという人は、以下の文章を読まないほうがいい。
では、私の推理を書く。この話は、アガサ・クリスティの「ABC殺人事件」のバリエーションだと思う。つまり、本命の殺人を隠すために、別の殺人を行って偽装するわけだ。
そう考えた理由は、第一の殺人の捜査の描写がほとんど無く、他所者である家出娘が、舞台となる田舎町で、不自然な死体となって殺される理由がわからないことだ。単なる殺害なら、死体が靴も靴下も脱がされている必要はない。つまり、これは、第二の殺人(本命の殺人)のための布石であるわけだ。第二の殺人は、被害者が、話の舞台となる町の住人だが、第一の死体と同じ姿勢で、同じように裸足にされて、同じように墓場の墓石の前に置かれている。そこから、第一の死体と第二の死体には関連がある、と読者は思うだろうが、そこがトリックであるわけだ。確かに、殺人者は同じ人間だろうが、二つの死体には関連性は無いのである。関連性が無いからこそ、死体に同じポーズを取らせ、同じように裸足にさせて、関連性があるように見せかけたわけだ。「ABC殺人事件」と同様に、「本命を隠すための偽装のための殺人」だろう。犯人は、第二の死体の夫である弁護士である(と推理する)。
なお、その結論に至った後で、先ほど解いたクロスワードパズルの中に、「妻には親のーーがあった。それが殺人の動機に……」とあったのを思い出したww まあ、全部読み終わってからクロスワードパズルは解け、と注意がされていたので、以上の推理は、完全には自力ではないことになるわけだ。しかし、二つの死体が「似ているからこそ無関係」というのは面白いのではないか?
念のために言うが、パーネル・ホールは、人物や会話が面白いので、特に推理小説として読む必要はなく、ただ、「小説として面白い」のである。つまり、「謎」を作るために不自然な虚構に頼った、小説としては低レベルな無数の推理小説より価値は高い。そのように「小説として面白い」推理小説は、ポー、ドイル、クリスティ、フィルポッツくらいではないか。乱歩の作品の幾つかもそうである。
(追記)先ほど読了したので、結果を報告すると、私の推理は完全に正解だった。で、このことは、この作品が推理小説としてフェアプレーだということである。「合理的に考えて、これしかないという答えが正解だ」からである。これは、クリスティの多くの作品にも言えることだ。