「和田秀樹のブログ」から転載。本来のブログタイトルは「テレビでは言えない本音のブログ」とか何とか言う。
彼のブログは時々面白い発言があるので、たまに読む。下記記事はなかなかいいことを言っている。ここだけ読むと、まるでプロレタリアを煽動する革命家みたいだが、彼はふだんはどちらかというとこの資本主義社会の擁護者なのである。その彼でさえ、今の「残酷な資本主義」は目に余るということだろう。
引用は、連続する二つの記事である。上の方が新しい。下の方の記事が、私が紹介したい中心の記事だが、上の記事にある「飲酒運転罰則の異常な厳しさ」についても同感する。前の晩に酒を飲んで、数時間寝て酔いはさめていても、呼気にはアルコールが検出されるので、その状態で運転すると厳罰である。つまり、安全のために運転せずに置いてあった車を取りにいくことすらできない。これが今の道交法である。
まあ、道交法が厳罰化(罰金高額化)したことで警察はずいぶん潤っただろうが。
(以下引用)
疲れる議論
テーマ:徒然記
昨日のブログに対するメッセージがいくつかきたが、正直なところがっかりした
本筋である金持ちによる中流と貧困層の分断については何のメッセージもこないで飲酒運転厳罰化について私が否定的な考え方をもっていることに攻撃的なメッセージばかりが届く
強いてあげれば私が都市部に貧困層がいることや都市部のワーキングプアとされている人の年収をご存じかというメッセージもいただいた
そんなことは何度も書いているつもりだが、すごく嫌な気分になった(元国語の先生らしいが、心情読解のプロであるはずなのに、どうして、こんなに人のことを小馬鹿にしたような文体で書かれるのだろう)地方と都会の格差のことを書くと、都会には貧困問題がないということになるのだろうか?現実には都会のほうがはるかにホームレスが多いのは常識だし、私のように精神科の臨床医をやっていると生活保護は患者さんの3分の1近くになってしまう(今は減っているのは福祉が厳しくなっているからとみている)東京の平均所得が多いのは、貧困問題がないからではなく、ヒルズ族のような1億円以上の年収の人が多いので平均を引き上げているのは、確実に言えることだろう)
ただ、なぜこの文章が不快に感じたかというと、言外のニュアンスが、お前は貧乏を経験していないだろう、そんな奴に何がわかるというものに感じ取れて仕方なかったからだ
私は、格差は是正してほしいし、ベーシックインカムや子供手当のように給付型の政策にはむしろ賛成だ(このほうが消費を増やすし、よけいな公共事業を行うより無駄なコストがかからない。ただし、何らかの公共事業を行うのと比べると、官僚も政治家もおいしくないので、彼らがそれについてのマイナスの情報を流すことが、この間の上杉さんや茂木さんが参加した勉強会で問題になった。そしてマスコミが簡単に官僚の流す情報に乗ることも)その財源がなければ、消費税を増やすより、累進課税と相続税の大幅増税、あるいは金融資産税で対応すべきと思っている。どれも私にとってみれば、損なことであるが、格差があるのと比べると安心して生活ができる
というのは、私は贅沢が好きな人間であるからだ
貧しい人間が飢えているのに平気で贅沢をするのは、なんとなく抵抗はある。たまたまラジオで藤原正彦氏が、日本人にはそういうのを嫌う情があることを強調していた
しかし贅沢はやめたくない。貧しい人の味方と名乗るなら贅沢はやめろというなら、金持ちの味方に戻るしかない。そのくらい弱い人間ではある。
貧しい人、弱い人と連帯するのは難しい。自己愛が満たされていない人と連帯しようとすると、すぐにひがみのパワーを受けることになる。勝ち組どうしで負け組の人をバカにしているほうがはるかに楽だ。
しかし、マスコミであれ、政治家であれ、勝ち組が政策決定する以上、いわゆる勝ち組の中に貧しい人の味方を増やしていかないと世の中は変わらない。ましてや共産党も組合も弱く、革命など私が生きている間に起りそうにない国ではなおのことだ
飲酒運転問題について本質的に抜け落ちている視点を明日提示したいが、一つだけ確認したいのは、私は飲酒運転を合法化したいと思っているわけでないことだ
私が言いたいのは、
1.世界一厳しい基準である必要があるのか(家族がファミレスにいってビールを飲むくらいでつかまる基準は妥当なのか)?
2.飲酒死亡事故の厳罰化のあと相当飲酒死亡事故が減っているのに、わざわざふだんの取り締まりを強化したり、とくに朝に検問して前日の酒が残っている人間まで懲戒免職にする必要があるのか?(これによって福島などでは、飲み会がみんな金曜日になって、月曜日から木曜日は閑古鳥がなく店が多いらしい。震災で福島、とくに浜通りあたりの飲食店や飲み屋が潤っているのは僥倖だ)
3.そして、一番言いたいのは、夜中に人がほとんど歩いていない上に帰りの交通手段のほとんどない地方とその逆の東京や京阪神や中京圏などで同じ取り締まりにしないといけない理由があるのか
ということだ
さて、
交通事故の一件あたりの経済損失を計算したことありますか?。一度計算して見ろと言いたい。厳罰化を緩めたら、 経済損失が大幅に激増し、全国年間で、現在でも兆の単位の被害額が更に激増する。 交通事故の数が増えるほど日本経済を駄目にしている元凶であると考えても良い。(原文ママ)
というメッセージをいただいた
ですます調とである調がごったになっている上に、随分失礼が物言いだと思うが、この人は、交通事故が今よりはるかに多かった時期のほうがはるかに日本の経済状態がよかったことや、日本が世界の先進国の中でいちばん厳しい取り締まりをやり、世界で人口当たりの死亡事故が少ないのに、なぜ先進国の中でもっとも経済成長率が悪い状態が続いているのかを考えたことがあるのだろうか?
このロジックは、損保の保険会社のロジックそのものだ。交通事故での経済損失は確かに小さくないだろうが、日本経済に大きな影響を及ぼすレベルではない。
厳罰化を緩めたら経済損失が大幅に激増(このいい方もちゃんとした日本語でない。激増と書くなら大幅は不要だ)とかいうが、たとえば飲酒死亡事故は年間200-300件で、経済に大きな影響を与えるレベルでない。それより一桁多い、スピード違反による事故についてはどうなのか?経済への影響が心配なら、日本中でねずみとりを増やして、飲酒並みの厳罰化をやったらどうなのか?
年間三〇〇〇〇以上の自殺が続いている国で、年間100件にも満たない小中学生の自殺だけが教育政策を変えるほどの大きな問題として取り扱われ、年間300件にも満たない飲酒死亡事故が諸悪の根源のように言われる
犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛むとニュースになるとか言うが、実際、珍しいが目立つこと、腹の立つことにばかり(原発問題もその一つと考えると書くと、また噛みつかれるのだろうが)に目がいく、マスコミ的な発想から、国民が自由になるのはいつのことなのだろう?
金持ちとマスコミによる貧乏人と中流の分断作戦
テーマ:徒然記
私が銀座では、どんなに雨が降っていても、どんなに高齢な人でも、タクシーに乗ろうと思えば、とぼとぼとタクシー乗り場にまで歩かないといけないのに、大金持ちや政治家ややくざのように運転手が使える人は、店のすぐ前から車に乗れるというブログを書いたら、貧乏な人はタクシーに乗れないから認識を改めろというメッセージをいただいた
確かに貧乏な人はタクシーに乗れない
そんなことはわかっている
地方は東京の年収の半分などということがざらだからなおのことタクシーに乗れない
それなのに、東京のマスコミがあおって、地方も飲酒運転厳罰化をされるはめになった
東京とちがって夜中に歩いている人などいないのに、飲酒運転は厳罰化され、地方の飲食店はぼろぼろになった。そして、仕事の愚痴をいったり、うさを晴らす場を地方の従業員は奪われている
もちろん、地方の警察のトップは地方警察出身でない、警察官僚で、地方の実情を無視した取り締まりをさせる
それも断罪し続けてきたつもりだ
さらに、大学院を出ても就職できないとか、教育産業の落伍者、高校、大学などの非常勤講師が、食えなくてタクシーの運転手、代行の運転手をしているというこのメッセージの主の話は悲痛だ。こういう高学歴ワーキングプアの問題を解決しないと、よけいに一般の子どもたちは勉強しなくなるし、そういう高学歴者が、金持ちの子どもの慶応の幼稚舎あがりのような人間にこきつかわれるのが目の当たりにされると、ますます勉強のモチベーションは崩される
気づいたら、東アジアの人間に、学力もない、金もないで、劣等民族の扱いを受けるのがオチかもしれない
だから、私はどんなに顰蹙をかっても相続税100%を訴え続けている
ただ、私はこのインテリの方の考え方に与することはできない
森永卓郎氏も指摘するように、格差社会というのは一人の勝ち組と99人の負け組に分かれる社会だ。森永氏の試算だと一人の勝ち組は年収1億になり、99人は年収300万円。つまり勝ち組は運転手つきになり、99人はタクシーに乗れないということだ(こんな社会ではタクシーの運転手も食えない。現に地方にいくとタクシーの運転手の年収が100万円程度なので、定年退職者しかやらないなんてことがざらにある)
ただ、厄介なことに資本主義国は建前は民主主義で選挙もやる
99人に団結されると金持ちの財産が接収されかねない
だから、99人の分断をやる。そうすれば金持ちがひきずりおろされることなく、自分たちと関係ないところのけんかによって政党やイデオロギーがわかれるからだ
その中で相対的に豊かな人間とそうでない人間とけんかをさせたり、公務員と民間をけんかさせたり、正規雇用と非正規雇用でけんかをさせる
日本はまさにこれがうまくいっている
経営者の年収は増え続け、企業の収益は増え続けているのに、一般従業員の賃金は下がり続けている
それでも経営者を恨むのではなく、公務員に憎しみを向けさせている
公務員より年収の多いマスコミも、高所得のタレントも、一緒になって声をあげ、公務員はボロクソにたたかれる
経営者がこんなに儲かっているのだからストをやればいいのに、ストをやらないから、組合は金が余って仕方がない
そういう組合の資金や資産の実態をマスコミがたたいて、今度は組合は正規雇用の味方とか言って、非正規雇用の人間に正規雇用の人間を叩かせる
今回のメッセージの主も、タクシーの乗れる人間と乗れない人間の分断を考えている
タクシーに乗れるだけましだろうという憎悪を感じさせる文章だった
しかし、庶民がタクシーに乗れなくなったのは、格差社会が本格化した90年代半ばからだ
本来はタクシーに乗れる人も乗れない人も連帯して、格差社会を作りだした運転手つきの車に乗る人間をたたくべきなのに、タクシーに乗れない人間がタクシーに乗れる人間を憎悪するのを正当化し、私はタクシーに乗れるブルジョワだと言わんばかりの責め方だ
本来中流の味方のはずのインテリが、貧しい暮らしを強いられると、それを作りだした富裕層でなく、インテリ層が目指すべき中流層をたたくという現実がとても悲しい
無知な大衆が、マスコミにだまされて公務員やタクシーに乗れるレベルの中流や正規雇用をたたくのならまだ救われるが、立派なインテリまで金持ちとマスコミに洗脳されるというのが当たり前というのであれば、日本の格差社会は本物になるだろう
金持ちは太り続け、中流は貧困層から脚を引っ張られて、どんどん貧困層に落ちていくという構図(たとえば大幅な公務員のリストラや正規雇用者の非正規雇用化)が現実のものになりそうだ
このメッセージの主は、これでも私の認識不足を怒り続けるのだろうか?
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