忍者ブログ

ロシアのシリア空爆の経済的損得勘定

「田中宇の国際ニュース解説」記事の後半だけ転載。
「ロシアの対シリア内戦介入の経済的損得勘定」が面白いので、転載した。
戦争を引き起こして、それで商売をする、ネオコンのやり口は唾棄すべきものだが、ロシアのように、正当な理由でシリアの助太刀をすることは結構なことだ。空爆で殺されるのはテロリストたちだから、彼らが何百人死のうと構わない。(と思ってしまうから、憎悪の連鎖、復讐の連鎖が無くならず、戦争が永遠に続くのかもしれないが、ISIS団などがシリア征服地で行っている非道で残酷な民衆支配の話を聞くと、彼らには生きる資格は無い、とどうしても思ってしまう。つまり、平時なら殺人犯、強姦犯として刑務所に入っているべき野獣的人間が、地方都市を支配しているのである。)(空爆のあおりを受けて巻き添えで死ぬ一般民衆には同情を禁じえないが、それでなくても彼らは既に地獄的状況にいたのである。)
ロシアは、シリア空爆で空軍の「実戦的演習」を行ったようなものだ。いや、演習ではなく本物の戦争なのだが、「こちら側にはまったく被害が無い」のだから、演習と同じである。空軍のスキルアップになり、古い弾薬やミサイルの在庫処理ができ、兵器の確度も実証でき、シリアの内乱状態を救うことになり、世界からも評価されることになる。
これほど見事な「内乱介入」は世界史上初めてではないか。まさにプーチンの「名人芸」的な世界政治である。



(以下引用)



露メディアでプーチン批判が比較的強いリベラルなモスクワタイムスによると、露軍のシリア進出費用は今のところ1日あたり400万ドルだ。1年分で約15億ドルだ。ロシアの防衛予算は年に500億ドルなので、15億ドルは大した額でない。米軍のイラク戦争(03-08年分)は、1日平均4億ドルかかっていた。露軍シリア進出は、その100分の1の費用しかかかっていない。露軍がシリアで使っている爆弾の多くは昔の非誘導型で、ソ連時代に作られた長期在庫品だ。 (The Cost of Russia's War in Syria

 米軍の「強敵」だったシリアのテロ組織を、露軍が短期間に駆逐するのを見て、米国製より安いロシアの兵器を買いたがる国が世界的に増えそうだ。ロシアの兵器販売は年間155億ドルで、売り上げが少し増えるだけで、シリア進出費(年15億ドル)がまかなえる。シリア進出はロシアにとって儲けになりそうだと、リベラルなモスクワタイムスでさえもが示唆している。


 こうした分析を読んで、反露派や反戦派はご立腹かもしれない。だが露軍の進出は、シリア政府の要請を受けて「極悪」のテロリストを退治する合法的な活動だ。シリアやイラクの人々は露軍を歓迎している。国境なき医師団がTPPに反対しているからといって、アフガニスタンの彼らの病院をわざと空爆し、証拠隠滅のために事後に戦車を派遣して追加の破壊までした米国の方が、ロシアよりはるかに「悪」である。そもそも米軍がISISやアルカイダをこっそり支援しなければ、露軍のシリア進出もなかった。 (Doctors Without Borders bombed by the Pentagon opposed the TPP, pharma monopolies) (MSF Hospital Was in US `Restricted' Database Before Attack


 アレッポの戦いは今後3週間から3カ月ぐらいの間にシリア露イラン軍の勝利になる。露軍が空爆頻度を上げたのは、米トルコからの追加支援が増える前にテロリストを倒したいからだろう。アレッポが奪回され、トルコからのテロ補給路を絶てば、ラッカを中心とするシリア東部のISISは弱くなり、イラクに越境逃避するだろう。この時点で、シリアは内戦後の再建と政治協議の時期に入り、戦闘の中心はシリアからイラクに移る。イラク政府はすでに露軍の空爆支援を受けたいと公式に表明している。


 シリアではISISが東部地域を乗っ取ったかたちだが、イラクではフセイン政権が米軍に倒された後、国民の2割強を占めるスンニ派がずっと冷遇弾圧され、その不満の上にISISが登場している。イラクのISISを解散させるには、多数派のシーア派が政権をとった今のイラクで、スンニ派の不満をどう軽減するかという政治問題を解決せねばならない。そこまで考えると、シリアだけなら3-4カ月で終わる露軍の駐留が、イラクを含めて1年以上に延長されることが説明できる(そうでなくて、今は顕在化していない新たな軍事的な障害があるのかもしれないが。予測の間違いがわかったら、その時点でまた分析を書く)。


・・・ここまで書いたところで、シリアのアサド大統領が10月20日に突然モスクワを訪問してプーチンと会ったという報道に出くわした。アサドが自国を離れるのは2011年の内戦開始以来初めてだという。アサドは露軍の空爆についてプーチンに感謝の意を表明した。これはまるで、すでにシリア露イラン軍がアレッポの戦いで勝ってテロリストから街を奪還したかのような展開だ。アレッポで苦戦しそうなら、アサドはシリア国内にはりついて指揮するはずだ。自国を離れてロシアまでやってくる余裕はないし、プーチンに礼を言うのも早すぎる。すでに露シリアの側がテロリストに勝って内戦を終結させる見通しがついていないと、アサドがモスクワに来てプーチンに謝意を述べることはない。すでにシリア露イランは、この戦いに勝っている。アレッポの戦いは意外と早くけりがつき、ISISやヌスラの敗北が決定的になりそうだ。 (Assad makes surprise visit to Moscow to thank Putin for air strikes) (U.S., Russia to Meet at Syria Conference


 イラクでは議会が、ロシアにISISの拠点を空爆してもらうことを依頼する決議を10月中に可決することをめざしている。米軍司令官はイラクのアバディ首相に会い「露軍に支援を頼むなら、米軍はもうイラクを支援しない」と通告した。アバディは「ロシアに支援を頼むことはしません」と述べたようだが、これは口だけだ。イラク軍の司令官は「役に立たない米軍の支援を受ける必要はもはやない」と断言している。 (Iraqi Parliament to Vote on Request for Russian Airstrikes) (U.S. to Iraq: If Russia helps you fight ISIS, we can't) (Iraq Moves to Exclude US from Anti-ISIL Campaign


拍手

PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
13
14 19
27
28 29 30

カテゴリー

最新CM

プロフィール

HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

ブログ内検索

アーカイブ

カウンター

アクセス解析