「産経ニュース」から転載。
最近の産経はどうしたの、と言いたくなるくらい、まともな記事が目につくようになってきた。まあ、一過性のものかもしれないから過大評価はしないが、少なくとも下に書かれた記事は正論も正論、すべてのマスコミに載せてほしい内容だ。
TPPは日本を経済的に滅ぼす、と私は言い続けているが、もちろん、これまでの日本経済の既得権益を保護するのがいいというわけではない。農業や漁業への外部からの参入はもっと認めていい。株式会社的経営も考えられていい。だが、そこに外資がからんでくると、問題は違ってくるのである。彼らは、ただの掠奪者であり、「日本で生活する人間」ではない。狩猟民族である白人の思考法は、「奪え」だけなのである。「育てる」思考法はない。だから、会社などでも、有望会社を見つけて乗っ取り、その資産を売り払うだけだ。自分で経営して安定的恒常的に細々と利益をあげるなどというのは馬鹿のやることと思っている。こうした、「人間の皮をかぶった狼」を相手にするには、相手に付け入れられる隙を作らないことである。「三匹の子ブタ」の話のように、草ぶきの家ではなく、煉瓦造りの強固な家を作り、相手の侵入を防ぐことである。それを、「狼さん、いらっしゃい」と門戸を開放してどうしようというのか。
(以下引用)
ジャーナリスト・東谷暁 TPP、オバマ政権の愚策
2011.9.16 02:56
野田佳彦政権に代わってから、急速に復活してきたのがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参加問題である。前政権が昨年10月に突如参加を唱え、その後、東日本大震災が起こると鳴りを潜めたが、オバマ政権の働きかけも国内賛成派の動きも続いていた。いまも賛成派は震災前と同じことを主張するが、それは議論としてまったく成立しない。いまさら指摘するのも気が引けるが、事が重大だから繰り返したい。
まず、賛成派はTPPに参加すると輸出が飛躍的に増加するというが、これは完全な間違いである。TPP参加国のほとんどは経済的規模が小さく輸出増加が見込まれるとすれば対米輸出だけだが、いまの円高ではそれはまったく不可能だ。財界は韓国が米韓FTA(自由貿易協定)によって対米輸出を急増させたというが、米韓FTAはいまも批准すらされていない。韓国が対米輸出を急増させたのは通貨ウォンのレート急落によるもので、もういいかげんにこんな嘘はやめるべきだろう。
また、前原誠司元外相が「農業などの第1次産業は対GDP(国内総生産)比で1・5%。残りの98・5%を犠牲にしている」と発言したため、いまもTPP問題は農業問題であるかのようにいわれるが、日米ともにTPPの作業部会は24あって、農業はその一分野にすぎない。経済規模の小さい4カ国だけの経済協定に、米国が加わってから新たに加えられたのが金融サービスと投資の徹底的な自由化だった。農業分野においても、米通商代表部が課題としているのは対日コメ輸出の増加などではなく農協共済の解体である。
さらに、投資においても米通商代表部の狙いは、政府調達の分野での規制撤廃や制度の見直しであり、日本側の行政刷新会議などの動きを見れば、農地の自由な売買や農協の解体も射程内にあると思われる。すでに林地における売買は匿名で可能であり、外資の農地へのアクセスが容易になれば、日本国の農業政策だけでなく安全保障すら危うくなる。
加えて、TPP参加は安全保障を強化するという人がいるが、それは日米安全保障条約に任せればよい。冷戦後の地域経済協定では安全保障例外条項を設けるのが普通で、米国が結んだFTAでも、中東の小国とのFTAやイラク戦争時に交渉した米豪FTAなどを例外とすれば安全保障には立ち入っていない。
米国にとってTPPは自国の雇用対策だが、小国が相手では効果がないと批判され、そこで引っぱり出されたのが外交で失態を重ねる民主党の日本だった。民主党は足元を見られており、オバマ政権と菅政権の間で日米関係修復とTPP参加が取引された可能性は高い。しかし、TPPは米国からしても愚かな政策で、米国がこれまで日米FTAを言い出さなかったことからも推測できる。
そもそも、米国経済は二番底のリスクが高まっていて35兆円の追加財政支出も効果は限定的だといわれる。そのような状況で日本の対米輸出を増加できると考えるほうがどうかしている。そして何より大震災後の日本はオバマ政権の愚策に付き合っていられるほど余裕がない。迷うことなくTPP参加は見送って、着実な国内経済の立て直しとオバマ政権後の堅実な米国との関係を考えるべきだろう。(ひがしたに さとし)
最近の産経はどうしたの、と言いたくなるくらい、まともな記事が目につくようになってきた。まあ、一過性のものかもしれないから過大評価はしないが、少なくとも下に書かれた記事は正論も正論、すべてのマスコミに載せてほしい内容だ。
TPPは日本を経済的に滅ぼす、と私は言い続けているが、もちろん、これまでの日本経済の既得権益を保護するのがいいというわけではない。農業や漁業への外部からの参入はもっと認めていい。株式会社的経営も考えられていい。だが、そこに外資がからんでくると、問題は違ってくるのである。彼らは、ただの掠奪者であり、「日本で生活する人間」ではない。狩猟民族である白人の思考法は、「奪え」だけなのである。「育てる」思考法はない。だから、会社などでも、有望会社を見つけて乗っ取り、その資産を売り払うだけだ。自分で経営して安定的恒常的に細々と利益をあげるなどというのは馬鹿のやることと思っている。こうした、「人間の皮をかぶった狼」を相手にするには、相手に付け入れられる隙を作らないことである。「三匹の子ブタ」の話のように、草ぶきの家ではなく、煉瓦造りの強固な家を作り、相手の侵入を防ぐことである。それを、「狼さん、いらっしゃい」と門戸を開放してどうしようというのか。
(以下引用)
ジャーナリスト・東谷暁 TPP、オバマ政権の愚策
2011.9.16 02:56
野田佳彦政権に代わってから、急速に復活してきたのがTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参加問題である。前政権が昨年10月に突如参加を唱え、その後、東日本大震災が起こると鳴りを潜めたが、オバマ政権の働きかけも国内賛成派の動きも続いていた。いまも賛成派は震災前と同じことを主張するが、それは議論としてまったく成立しない。いまさら指摘するのも気が引けるが、事が重大だから繰り返したい。
まず、賛成派はTPPに参加すると輸出が飛躍的に増加するというが、これは完全な間違いである。TPP参加国のほとんどは経済的規模が小さく輸出増加が見込まれるとすれば対米輸出だけだが、いまの円高ではそれはまったく不可能だ。財界は韓国が米韓FTA(自由貿易協定)によって対米輸出を急増させたというが、米韓FTAはいまも批准すらされていない。韓国が対米輸出を急増させたのは通貨ウォンのレート急落によるもので、もういいかげんにこんな嘘はやめるべきだろう。
また、前原誠司元外相が「農業などの第1次産業は対GDP(国内総生産)比で1・5%。残りの98・5%を犠牲にしている」と発言したため、いまもTPP問題は農業問題であるかのようにいわれるが、日米ともにTPPの作業部会は24あって、農業はその一分野にすぎない。経済規模の小さい4カ国だけの経済協定に、米国が加わってから新たに加えられたのが金融サービスと投資の徹底的な自由化だった。農業分野においても、米通商代表部が課題としているのは対日コメ輸出の増加などではなく農協共済の解体である。
さらに、投資においても米通商代表部の狙いは、政府調達の分野での規制撤廃や制度の見直しであり、日本側の行政刷新会議などの動きを見れば、農地の自由な売買や農協の解体も射程内にあると思われる。すでに林地における売買は匿名で可能であり、外資の農地へのアクセスが容易になれば、日本国の農業政策だけでなく安全保障すら危うくなる。
加えて、TPP参加は安全保障を強化するという人がいるが、それは日米安全保障条約に任せればよい。冷戦後の地域経済協定では安全保障例外条項を設けるのが普通で、米国が結んだFTAでも、中東の小国とのFTAやイラク戦争時に交渉した米豪FTAなどを例外とすれば安全保障には立ち入っていない。
米国にとってTPPは自国の雇用対策だが、小国が相手では効果がないと批判され、そこで引っぱり出されたのが外交で失態を重ねる民主党の日本だった。民主党は足元を見られており、オバマ政権と菅政権の間で日米関係修復とTPP参加が取引された可能性は高い。しかし、TPPは米国からしても愚かな政策で、米国がこれまで日米FTAを言い出さなかったことからも推測できる。
そもそも、米国経済は二番底のリスクが高まっていて35兆円の追加財政支出も効果は限定的だといわれる。そのような状況で日本の対米輸出を増加できると考えるほうがどうかしている。そして何より大震災後の日本はオバマ政権の愚策に付き合っていられるほど余裕がない。迷うことなくTPP参加は見送って、着実な国内経済の立て直しとオバマ政権後の堅実な米国との関係を考えるべきだろう。(ひがしたに さとし)
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