忍者ブログ

信長殺しに見る、心理操作による犯罪

ずいぶん前に出版された本だが、杉山光男という人の「本能寺殺人事件の真相(信長殺しの犯人は秀吉だった!)」(同文書院)という本が面白かったのでメモしておく。
私は、以前に、得体の知れない創作衝動に動かされて「昇る太陽」という、秀吉の生涯をわずか10ページ程度に圧縮して描いた短編小説を書いたことがある。(徽宗皇帝のブログの「創作小説」ジャンルに入れてある。)たしか、何の資料も見ずに、1日で書いた記憶があるのだが、その内容を修正する必要は、あまり無さそうだ、というのが感想の一つ。
で、これは新しい知見だが、信長殺しの真犯人は秀吉だった、という説は、かなり有力だと言えそうである。もちろん、実行犯は光秀だが、秀吉が彼を心理的に操作して、彼を信長殺しに向かわせた、という話なのである。ミステリー小説としても素晴らしいプロットだが、実際、その大きな証拠もある。
それは、毛利攻めの陣中から、何の必要も無いのに、秀吉が信長に救援を求めた、という事実だ。従来の説では、これは秀吉が信長にゴマをすって功績を譲るためのものだ、とされている。実際、この頃の信長は天下統一を目前にして、彼の宿将たちを次々と粛清し、家臣たちを戦々恐々とさせていたのである。光秀の造反も、おそらく「次は自分だ」という、その恐怖からのものだろう。
そして、信長の有力家臣たちの中で、当時遊軍であったのは光秀だけであり、信長は、秀吉からの要請を受けて光秀に秀吉の応援に向かうことを命じた。つまり、信長はわずかな手兵を除いて、まったく無防備の状態で京都にいたのである。光秀に与えられたその完璧な機会が、彼に信長殺しという「犯罪」を犯させたのは明らかである。では、その機会を作ったのは誰か。秀吉だ。
秀吉からの援軍要請がなければ、光秀が軍を動かすことはできなかっただろう。信長は自分が命じた事だから、光秀軍が間近に来るまで、何の疑いも持たなかったのである。
こうして光秀の「敵は本能寺にあり」で、信長という一世の英雄は滅ぼされた。
では、信長殺しの犯人は光秀か? それとも彼に完璧な犯罪機会を与えた秀吉か?
これは、犯罪実行犯と教唆犯という単純な話ではなく、教唆された側が、その事実にすら気づいていなかったという、超高度な心理的犯罪なのである。

拍手

PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

11 2024/12 01
S M T W T F S
25 26 27 28
29 30 31

カテゴリー

最新CM

プロフィール

HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

ブログ内検索

アーカイブ

カウンター

アクセス解析