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とても面白い、「退屈な話」

チェーホフの「退屈な話」読了。非常に面白かった。
話の内容は、まあ、ベルイマンの「野いちご」である。つまり、偽善的に、あるいは自己欺瞞的に生きてきた人間の、老年における精神の荒廃だ。
ここで自己欺瞞的というのは、自己節制的、と言ってもいい。つまり、自分の欲望を抑えて理性的に生きてきたわけだ。ところが、すべての欲望がほとんど消滅した老年に残るのは、不満感だけであるわけである。黒澤明の「生きる」も、同じテーマである。まさに「命短し、恋せよ乙女」なのである。
まあ、快楽主義的に生きてきた人間の老年期の精神的荒廃は、もっとひどいかもしれないし、人間は自分の精神が導くようにしか生きないのだから、この種の話は或る種の「警告」にはなるかもしれないが、特効薬にはならないだろう。要は、話としてそれが面白いかどうかだけで、私などには面白い。30代でこれを書いたチェーホフ自身の晩年の精神的状況がどんなだったか知りたいものだ。
この「退屈な話」が退屈かどうかは読む人による。「退屈な話」というタイトルだけで敬遠する人も多いだろう。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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