「日の当たらない邦画劇場」という面白い邦画サイトがあるが、その中から石川達三の原作を巨匠山本薩夫が映画化した政治ドラマ「金環蝕」を転載して紹介する。
この粗筋を読むだけで、「えっ、これって今の政治状況のドキュメンタリーじゃないの?」と思う人が多いだろう。
つまり、日本の政治の正体は、大昔から同じだし、大昔からそれが分かる人には分かっていたし、それをちゃんと伝えてもいた、ということである。
しかし、世間のほとんどの人は「あれは小説や映画だから」と思いこんで来たわけだ。
実は、新聞やテレビニュースよりも、こうしたフィクションにこそ真実は描かれてきた、というのが今になれば分かるだろう。
ちょうど今年は金環蝕もあったし、リバイバル上映か、せめてテレビ放映でもしてくれないだろうか。
しかし、石川達三は偉いなあ。山本薩夫も偉い。今はこういう硬骨漢が作り手の中に少なくなった気がする。特に若い連中は趣味の世界に溺れているようだ。
(以下引用)
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金環触
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■公開:1975年
■制作:大映
■監督:山本薩夫
■助監:
■脚本:田坂啓
■原作:石川達三
■撮影:小林節雄
■音楽:佐藤勝
■美術:
■主演:仲代達矢
■寸評:
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原作本が存在する場合「映画を見る前に原作を読まない」のが筆者の主義。アレコレ想像して舞台も役者もできあがってしまうので、他人のキャスティングにはどうしても違和感を感じてしまい、フィルタがかかる。こういう「頭でっかち」映画にはなぜか新劇畑出身者が大活躍する。理屈っぽいのは映画畑には不向きということか?理屈っぽいのにうそ臭い、その両方を股にかけた仲代達矢ってやっぱスゲー。
民政党の総裁選挙にからむ、公共工事の汚職事件とその裏で、欲にまみれた大人が時には下世話に、ときにはスマートに他人様のお金(税金)使い放題のバブリーな政治群像劇。
民政党の総裁選挙、現職・久米明と最大派閥の神田隆は、実弾ビシバシつかって争ったが、官房長官・仲代達矢の貫禄勝ち(か?)で現職が勝利。ところがこの現職は総裁になったとたんに病気になってしまう。仲代は秘書・山本学を闇の金融王・宇野重吉のところへ借金させに行かせるがあっさり断られる。これは、ちびちび金を貸すよりは、業界紙の社長・高橋悦史を派遣して、公共工事の汚職事件の証拠をつかんでエリートどもに吠え面かかせようという宇野の執念。
九州・福竜川ダム建設工事をお世話になっている土建屋へ血税まわして御礼をしたい電力会社の総裁・永井智雄は、それでもわりかし潔癖(相対評価で)な性質。部下の神山繁も権力大好きっ子なので永井を蹴落としたい。永井には神田隆がバックについたので総裁留任を勝ち取る。神山は仲代達矢に「首相をスキャンダルから守りたければ潔癖症の永井が総裁だとヤバイよ」と持ちかける。仲代は首相夫人・京マチ子の名前を使ってダム建設工事を永井のシンパから取上げ、ライバル会社へ持って行かせようとする。
永井は京マチ子が「××会社をよろしく」と書いた証拠の名刺を高橋悦史に撮影させる。仲代達矢は業者へ手を回し、神田隆の一派に献金させて篭絡。巨額献金を約束した西村晃は指名を勝ち取り、永井智雄は莫大な退職金とバータで総裁を辞任。仲代達矢が嫌いである宇野重吉が山本学を買収、名刺写真のネガをゲットして揺さぶってくる。
国会で代議士・三國連太郎に事件を追及されそうになった仲代達矢はエリートだけど卑怯な手口も暴力沙汰も全然平気なので、金と暴力ですべての証拠を隠滅、偉そうなことを言う割に権力に弱いマスコミを大いに活用して久米総裁を守りきる。
金環触、外側はきらきらと光っているがその中味はドロドロ。国民不在どころの騒ぎじゃない。党利党略のためなら「なんでもする」それが政治の世界だと言い放つ公僕のみなさま、真実を書くのではなく書かれた事が事実になると言わんばかりのマスコミ、事件を摘発するフリをして真相を闇に葬る検察庁、そのパシリが警察庁、税金の二重払いは常識って感じの土建屋業界。
なんてオッカナイ映画なんでしょうね、映画で良かったですねえ、、、って本当に映画の中だけの事なのかな?
新聞がウソっぱちだと言う公知の事実はともかく、このオッカナイ映画のトドメは検事総長・加藤嘉の暗躍。そうだよな、コイツだって税金貰って仕事してるという点において代議士とは同業者なわけだ。犯罪捜査で大企業に乗り込む検察庁の職員、一見正義の使途だけど実はマジでヤバイ証拠が外へ出ないようにしているだけだとしたら?
三権分立なんて学校の教科書だけの話だと、思っちゃうかも。
(1999年09月13日)
【追記】
2003年05月03日:加筆訂正
※本文中敬称略
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■日のあたらない邦画劇場■
この粗筋を読むだけで、「えっ、これって今の政治状況のドキュメンタリーじゃないの?」と思う人が多いだろう。
つまり、日本の政治の正体は、大昔から同じだし、大昔からそれが分かる人には分かっていたし、それをちゃんと伝えてもいた、ということである。
しかし、世間のほとんどの人は「あれは小説や映画だから」と思いこんで来たわけだ。
実は、新聞やテレビニュースよりも、こうしたフィクションにこそ真実は描かれてきた、というのが今になれば分かるだろう。
ちょうど今年は金環蝕もあったし、リバイバル上映か、せめてテレビ放映でもしてくれないだろうか。
しかし、石川達三は偉いなあ。山本薩夫も偉い。今はこういう硬骨漢が作り手の中に少なくなった気がする。特に若い連中は趣味の世界に溺れているようだ。
(以下引用)
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金環触
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■公開:1975年
■制作:大映
■監督:山本薩夫
■助監:
■脚本:田坂啓
■原作:石川達三
■撮影:小林節雄
■音楽:佐藤勝
■美術:
■主演:仲代達矢
■寸評:
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原作本が存在する場合「映画を見る前に原作を読まない」のが筆者の主義。アレコレ想像して舞台も役者もできあがってしまうので、他人のキャスティングにはどうしても違和感を感じてしまい、フィルタがかかる。こういう「頭でっかち」映画にはなぜか新劇畑出身者が大活躍する。理屈っぽいのは映画畑には不向きということか?理屈っぽいのにうそ臭い、その両方を股にかけた仲代達矢ってやっぱスゲー。
民政党の総裁選挙にからむ、公共工事の汚職事件とその裏で、欲にまみれた大人が時には下世話に、ときにはスマートに他人様のお金(税金)使い放題のバブリーな政治群像劇。
民政党の総裁選挙、現職・久米明と最大派閥の神田隆は、実弾ビシバシつかって争ったが、官房長官・仲代達矢の貫禄勝ち(か?)で現職が勝利。ところがこの現職は総裁になったとたんに病気になってしまう。仲代は秘書・山本学を闇の金融王・宇野重吉のところへ借金させに行かせるがあっさり断られる。これは、ちびちび金を貸すよりは、業界紙の社長・高橋悦史を派遣して、公共工事の汚職事件の証拠をつかんでエリートどもに吠え面かかせようという宇野の執念。
九州・福竜川ダム建設工事をお世話になっている土建屋へ血税まわして御礼をしたい電力会社の総裁・永井智雄は、それでもわりかし潔癖(相対評価で)な性質。部下の神山繁も権力大好きっ子なので永井を蹴落としたい。永井には神田隆がバックについたので総裁留任を勝ち取る。神山は仲代達矢に「首相をスキャンダルから守りたければ潔癖症の永井が総裁だとヤバイよ」と持ちかける。仲代は首相夫人・京マチ子の名前を使ってダム建設工事を永井のシンパから取上げ、ライバル会社へ持って行かせようとする。
永井は京マチ子が「××会社をよろしく」と書いた証拠の名刺を高橋悦史に撮影させる。仲代達矢は業者へ手を回し、神田隆の一派に献金させて篭絡。巨額献金を約束した西村晃は指名を勝ち取り、永井智雄は莫大な退職金とバータで総裁を辞任。仲代達矢が嫌いである宇野重吉が山本学を買収、名刺写真のネガをゲットして揺さぶってくる。
国会で代議士・三國連太郎に事件を追及されそうになった仲代達矢はエリートだけど卑怯な手口も暴力沙汰も全然平気なので、金と暴力ですべての証拠を隠滅、偉そうなことを言う割に権力に弱いマスコミを大いに活用して久米総裁を守りきる。
金環触、外側はきらきらと光っているがその中味はドロドロ。国民不在どころの騒ぎじゃない。党利党略のためなら「なんでもする」それが政治の世界だと言い放つ公僕のみなさま、真実を書くのではなく書かれた事が事実になると言わんばかりのマスコミ、事件を摘発するフリをして真相を闇に葬る検察庁、そのパシリが警察庁、税金の二重払いは常識って感じの土建屋業界。
なんてオッカナイ映画なんでしょうね、映画で良かったですねえ、、、って本当に映画の中だけの事なのかな?
新聞がウソっぱちだと言う公知の事実はともかく、このオッカナイ映画のトドメは検事総長・加藤嘉の暗躍。そうだよな、コイツだって税金貰って仕事してるという点において代議士とは同業者なわけだ。犯罪捜査で大企業に乗り込む検察庁の職員、一見正義の使途だけど実はマジでヤバイ証拠が外へ出ないようにしているだけだとしたら?
三権分立なんて学校の教科書だけの話だと、思っちゃうかも。
(1999年09月13日)
【追記】
2003年05月03日:加筆訂正
※本文中敬称略
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■日のあたらない邦画劇場■
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