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天国の鍵30

その三十 アリーナの災難

木陰で眠っていたハンスは、ふと目をさましました。
すると、となりにいたはずのアリーナの姿が見えません。昼間おぼれて体が弱っているだろうと、毛布をかけただけで寝かしておいたのですが、他の四人が眠ったすきにまた逃げ出したようです。
ハンスはピエールをゆり起こして、アリーナが逃げたことをつげました。
そして、すぐに空中に飛び上がってさがそうと思いましたが、できません。精神がよほど集中しないと、空中浮遊はできないようです。
ハンスは犬のピントと猿のジルバ、オウムのパロに、アリーナをさがすようにたのみました。ジルバは驢馬のグスタフに乗って、走っていきました。ピントはアリーナの寝ていたあとの匂いをかいだあと、方向の見当をつけて走っていきます。ハンスも早足でその後を追いました。パロは上空からアリーナのすがたをさがします。
一方、逃げ出したアリーナは、一時間ほど逃げたあと、疲(つか)れて、ある森の中で眠り込んでしまいました。川でおぼれた上に、夕飯も食べず、何キロも走ったのですから疲れるのも当然です。
アリーナは、ぐっすり眠り込みました。ところが、とつぜん左手の指先にはげしい痛みを感じて目をさまし、見てみると、なんと小さな黒いヘビが彼女の指先にかみついているではありませんか。
アリーナは悲鳴をあげて、そのヘビを指から振り落とそうとしましたが、ヘビははなれません……。
ピントの後を追ってきたハンスは、アリーナの悲鳴を耳にしました。
急いで駆(か)けつけた時、アリーナはふらっと地面に倒れました。
ハンスはアリーナの左手の薬指にかみついている毒ヘビに気がついて、その口をこじあけてはなしました。持っているナイフでヘビの首を切り落として片付けたあと、アリーナの指先の噛(か)み口に口を当て、毒を吸い出します。
念のために指の根元を革紐でしばり、ぐったりとなっているアリーナを、そこにジルバとともにやってきたグスタフの背中にのせ、ハンスは仲間のところにもどりました。
オウムのパロは、月明かりの中を飛んでいる二羽のコウモリが、魔法使いの手下であることを感じ取り、そいつらと戦っています。
やっとコウモリをやっつけて、パロもハンスたちのところにもどってきます。
荷物の中の薬草を砕(くだ)いてアリーナの指先にその汁(しる)をぬり、包帯をします。これで応急処置(おうきゅうしょち)は大丈夫のはずですが……。
翌日の朝になっても、アリーナは気がつきません。熱もあるようです。でも、このままここにいるわけにもいかないので、ハンスたちは出発することにしました。
少なくとも、これでアリーナが逃げ出す心配はなくなったので、旅ははかどります。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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