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天国の鍵32

その三十二 不思議な詩

白い雲は見る見るうちに近づいてきましたが、その上には人が乗っています。杖をついて白い服を着た、はげあたまで白ヒゲのおじいさんです。腰はすっかり曲がっていますから、そうとうな年齢のようです。
「お前さん、わしに何用じゃな」
おじいさんは雲から地上に下りると、ハンスに言いました。
「あなたはロンコンさんですね?」
「コンロンかロンコンか、名前などわすれたよ。うちのセイルンはわしを老師とよんどる」
「では、老師、あなたは天国の鍵をごぞんじですか」
「ほほう、天国の鍵をさがしとるのか。むだなことじゃ。天国など行かなくとも、この世で満足すればよい。満足できぬのは無知のためじゃ」
「でも、ぼくは天国の鍵をさがしたいのです」
「そうしたければそうすればよい。いいものをやろう」
 ロンコンは家に入って、中から一つの巻物を手にして出てきました。
「ここに天国の鍵をさがすてがかりがある。もっとも、これまで何人もの人間に、同じ巻物は与えたが、誰一人として天国の鍵のありかを見つけ出した者はいない」
 ハンスは巻物を見てみましたが、みょうな文字で書かれていて、読めません。
「わしが読んでやろう」
 ロンコンは巻物を広げて読みました。
「賢者の庭、黄金の戸口のなか、
七つの噴水のそば、見張るはヘスペリアの竜。
聖なる見者の夢のなか、常世に燃える枝のごとく、アジアの教会の象徴のごとく、
あの栄光の噴出が現れる。
魔法の水を三度、翼竜は飲み干さねばならない。
その時、鱗ははじけとび、心臓は二つに裂かれよう。
放たれた流出に聖なる形は現れ、
太陽と月の助けのもと、魔法の鍵は汝のものとならん」
 読み終わって、ロンコンは、どうだ、というようにハンスを見ました。
「きれいな詩ですね。でも、どういう意味です?」
ハンスは言いました。
「アジアとは、別の世界でのこのグリセリードの呼び名じゃ。ヘスペリアが、おそらく天国の鍵のある場所じゃな。それとも天国そのものかもしれん。つまり、竜は天国の使いじゃ。魔法の鍵は天国の鍵のことじゃ。それ以外はわしにもわからん」
ハンスはオウムのパロに、今のロンコンの言った詩を覚えておくようにたのみました。携帯テープレコーダーのかわりですね。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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