まあ、桃太郎が侵略者であり、押し込み強盗であり、今ならばイスイス団のようなものだ、というのは、この御伽噺を読んだり聞いたりした人なら誰でもすぐにそう思うことで、芥川龍之介もそういうパロディ小説を書いているし、私の幼いころの愛読漫画であった「ストップ! 兄ちゃん」の一話がそういう話だった。
今で言えば、米国が桃太郎、となり、日本は犬か猿か雉、ということになる。強盗の仲間入りである。
(以下引用)
もし安倍首相が桃太郎を読んだら
昔々あるところに、おじいさんとおばあさん、おじいさんとおばあさんがですね。住んでいたと、わたくしはそのように、うかがっております。
おじいさんが山へ、山へですね、柴刈りに出かけまして、おばあさんは川へ洗濯に、洗濯に出かけました。わが国では、伝統的にこのような家族観を持っており、現代のグローバル社会でも、その価値を見失ってはならない、のであります。
おばあさんが川で洗濯を、洗濯をですね、しておりますと、川上から大きな桃が、桃がですね、ドンブラコ、ドンブラコと音を立てて流れてきたのであります。あたかもそれは、ヤンキー・スタジアムにメタリカの"Enter Sandman"が鳴り響くがごとくです。おばあさんは川へ飛び込んで桃を拾いましたが、川の流れは完全に、完全にコントロールされておりますので、飛び込むことによっておばあさんのリスクが増大するという指摘は、これはまったく当たりません。
おばあさんが桃を、桃をですね、持ち帰りまして、おじいさんが切ってみたところ、桃の中から男の赤ちゃんが生まれました。少子高齢化、少子高齢化が問題となっている昨今ですが、われわれ政府は、このように出産や子育てのしやすい社会、すべての女性が輝くことのできる社会を作り、女性を、女性をですね、活用していくのであります。
桃太郎と名付けられた男の子は、すくすくと育ちまして、やがて自ら志願して、鬼ヶ島での平和維持活動に参加いたしました。これはあくまで彼の自由な、自由意志に基づくものでありまして、一部マスコミがいうような、狭義の強制性、狭義の強制性はまったく認められないものであります。ましてや、徴兵制は憲法によって禁止されておりますので、わたくしはまったく、まったく考えていないものであります。
鬼ヶ島での平和維持活動が、憲法で禁じられている武力行使にあたるという、一部の憲法学者の方々の意見はうかがっておりますが、国際法学者の方々は、合憲だという人が多いのではないでしょうか。それに、武器使用は国際法で認められた権利でありまして、桃太郎の戦友であります犬が、鬼に噛みつくのも、猿が鬼をひっかくのも、キジが、えー、キジがですね、鬼の目をつつくのも、憲法ではこれらの行為は禁じられておりません。これは、砂川判決に鑑みましても、明白に、明白にですね、明らかであります。
我が軍が、いや桃太郎が鬼ヶ島へ派遣される法的根拠となります、集団的自衛権と申しますのは、みなさまにわかりやすくたとえて申しますとですね、ここに「鬼ヶ島家」と「桃太郎家」という家が、道路を隔てて建っております(ジオラマを置く)。そして、鬼ヶ島の家が火事で燃えております(生肉を立てる)。このとき、桃太郎は鬼ヶ島で消火することはできません。しかし、放っておいたら、鬼ヶ島の火が桃太郎の家まで燃え移ってきます。そうならないように、鬼ヶ島で消火をしている鬼たちに、桃太郎は消火器を届けることができる。これが、これがですね、わが国の憲法で禁じられていない、集団的自衛権なのであります。これは正しいと思いますよ、わたしは総理大臣なんですから。
(やくみつる:「鬼はむしろ放火する側じゃないんですか? 消火じゃなくて放火魔の手伝いをさせられることになるんじゃないですか?」)
そのようなことは、まったくありません。これは正しいと思いますよ、わたしは総理大臣なんですから。
(犬山紙子:「メリットばかりおっしゃっていますけど、総理が考えるデメリットを聞かせてください」)
あえて申しますならば、きび団子を作る任務が増えるというのがデメリット、デメリットといえるかもしれません。