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組織と個人

日経ビジネス所載の連載対談で、対談者は同級生である二人。
全体に面白いが、特に松下的「リーダー至上主義思想」が面白い。それが畜産社会(羊飼い)の経験から来ているというのは卓見だと思う。リーダー至上主義とは愚民軽蔑思想であり、また集団主義思想でもある。軍隊などその典型で、兵士は使い捨てだ。

(以下引用)



:たとえばね、僕が3年生で4年生にとっては最後の早慶戦の時に、親が田舎から見に来ているのに、ある4年生をすぐに引っ込める指示をベンチに出したりしていたから。つまり、引っ込める指示は、その選手が下手だったからなんだけどね。そのゲームに勝つことが僕の責任なんだから、勝てる2年生をレギュラーにした方がいいわけですよ、正論では。で、そういうふうに行動していたんだけど、それをやると、結局、勝ったけれども、僕は4年生に激しく恨まれるという。運動選手なんて女々しいもので、僕のことを許せないわけ。そういう人が何人かいて、2年の時も殴られたし、3年の時も最後の納会の日に、殴られた。あるいは、罵倒された。


小田嶋:ひどい。


:ひどいよっ。やめてやろうっ、とも思ったけど、むしろ、これが人と生きるということなのか、と(笑)。


小田嶋:殴るという形で表れるのが、スポーツ部のよさみたいなところはあるけどね。


:まあね。


小田嶋:悪さでもあるんだけど、分かりやすい形で露出するでしょう、不満が。


:そうかもしれないけど、まあ、殴らないにしても、不満だということだよ、誰かの気持ちの中では。そしてそれは、結果がよければ解消するかというと、そうじゃない。OBになった後だって、その人たちとは、どうもうまくいかない、というか、なるべく顔を合わせたくないものね。


小田嶋:岡はクオーターバックで、そういうことは学んだとは思うけど、同時にそれがちゃんとできるとは、俺は思っていないんだよね。


:実はオレも思っていないんだよ(笑)。もう、当然のように思っていないんだけどさ、そういうことがあるということだよ。

同情するより、膝を打て

小田嶋:だって岡は、空気を読めないでひどいことをしちゃう人なんじゃなくて、分かっていても、それを我慢して何かを長く続けられる人じゃないわけだから。


:おっしゃる通り(笑)。

コラムニスト 小田嶋隆氏

小田嶋:だから、前にこの対談で話したけど、四谷のスナックで隣り合わせた電通のおっさんに岡の名前を出したら、ああ、あのアタマのいいヤツね、という、その言い方の冷たさがね(『「息子」と「宴会芸」と「君が代」と』を参照)。何という冷たさだ、と思ったけど、ちょっと膝を打ちましたね。そうか、そういう取り扱いなんだ、なるほど、と。


小田嶋さんは岡さんに同情したのではなくて、膝を打っていたんですか?


小田嶋:うん。


:だから、それは、結構、生涯にわたる問題だよね(苦笑)。別にアタマがいいわけじゃないけど。


小田嶋:中には岡を面白い部下だと思うやつがいるかもしれないけど、上司からしたら、この野郎と思う場面の方が多いと思う。


:その方が多いよ、圧倒的にそれは。


どういう部分でこの野郎って思うんでしょうか。


小田嶋:伝わっちゃうんじゃないかな、相手をばかにしているというのが(笑)。具体的に何か問題を起こさないでも、こいつ、俺のことを軽く見ているな、というのが伝わってくる、ひしひしと。


:それはあるかもしれない。


ばかにしているんですね。


:うーん、こっちもばかなんだけど、相手もばかにしていますよね(笑)。ただ、相手を全員ばかにしているわけじゃない。でも、そういう意味で、本当にリスペクトできる人というのは数えるほどしかいなかったわけだし。それを覆い隠して、上司は上司ということでやっていけるのがサラリーマンをまっとうできる人で、僕らみたいなのは、その点に関してはねえ。まあ小田嶋の方がもっとひどいと思うけど。


小田嶋:俺は、それはもうダメだよ、って降りているようなところがあるから。


:最初から降りているもんな。


小田嶋:もう潔く。


:いずれにしても、リーダーシップというのは本来、僕たちは非常に得意ではないということだね。

「リーダー」に求めてしまうもの

小田嶋:俺はこの間、仕事の関係で、松下幸之助の『リーダーを志す君へ』という本を読んだんだけど、イヤな本だなと思ってね。松下幸之助が嫌な人だったわけじゃないんだけど、ああいう松下政経塾の関係の人たちの本も同時に結構たくさん読んでね。分かったのは、彼らは「リーダー」という言葉が大好きで、人間をリーダーである人間とフォロワーである人間の2通りに分けるんだよ。だから、羊飼いと羊という、そういう世界観なんだよね、そもそもが。それが気持ち悪くて。


:僕が聞いた話は、松下さんが社長をやっている時に、どうしても誰か、たとえば小田嶋を、釧路かどこかの支店に飛ばすことが必要で、飛ばしたんだって、という話でさ。家族もいるのに釧路にやってしまうのは気の毒だったけど、松下電器を大きくするためには、そういう冷たいことをせざるを得なかった。


 で、飛ばされた小田嶋が15年ぶりに松下さんに会った時に、松下さんはいなりずしかなんかを昼食に用意したんだよ。それは、15年前に別れた時に、小田嶋がいなりずしが好きだったということを覚えていたからなんだ。それがいい話だという文脈で聞かされたんだけど、俺は嫌な話だなと(笑)。そんな嫌なヤツはいないよ。


小田嶋:おっかないよね、むしろ。


:そう。だから、そういうことをすごくいいことのように言う態度に、もう、全然付いていけないと思って(笑)。

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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