自作「天国の鍵 その12」より引用。
グリセリードを治めているのはシルヴィアナという女王ですが、本当はロドリーゴという宰相(さいしょう、総理大臣みたいなものです)が政治のすべてを行い、女王はかざりみたいなものでした。こういうことはよくあることで、みなさんが大きくなったら、世の中はうわべと中味のちがいがずいぶん大きいことにおどろくでしょう。うたがいを持たないすなおな気持ちはたしかに美しいものですが、はっきり言ってこの世は、だます人間とだまされる人間、そしてだましもだまされもしない人間の三種類がいます。みなさんは前の二つではなく、最後の種類の人間になってください。つまり、かくれたものを見抜ける人間になることです。汚いものだけではありません。愛情や、他人の本当の人間性も、見えない人には見えません。サン・テグジュペリという人が言うように、見えないものこそが大事なのです。ついでに言っておくと、ものが見えない、わからないというのは、自分のせいであって、だから相手が悪いとか無価値(むかち)だと考えないことです。見えるまで、わかるまでには時間がかかることが多いのです。あわてて答えをだすのはテストの時だけです。人生の答えはゆっくりだすこと。
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