【AFP=時事】先週仏パリ(Paris)のユダヤ人向け食料品店で起きた銃撃事件をはじめ、反ユダヤ主義的な襲撃事件がフランスで急増している──これらの社会問題がきっかけとなり、同国を後にすることを考えるユダヤ人が増えている。
50代のポーランド系ユダヤ人男性のローランさんは、もし自分が30歳だったら、フランスを離れてイスラエルに移住しただろうと話す。「私はユダヤ教の教えを実践する敬虔な信者ではないが、一部の人たちは私のことを『イッド(ユダヤ人に対する軽蔑的な呼び方)』として見ているという印象を受ける」。苗字を伏せたままコメントした。
パリ(Pari)では9日、同市東部のユダヤ人向け食料品店に押し入り買い物客を人質にしたアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者が4人を殺害。その2日前には、サイド・クアシ(Said Kouachi)容疑者と弟のシェリフ・クアシ(Cherif Kouachi)容疑者が風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社を襲撃し、12人を殺害している。
フランス史上最悪のこの一連の襲撃事件は、同国の50万~60万人のユダヤ人コミュニティーを大きな混乱に陥れた。
2012年3月に仏・トゥールーズ(Toulouse)のユダヤ人学校でイスラム過激主義のモハメド・メラ(Mohamed Merah)容疑者が生徒3人、教師1人を射殺した事件をユダヤ人らに思い出させたためだ。
氏名を公表しないことを条件に取材に応じたパリ北部の食料品店で店長を務める女性は、2013~14年にかけて反ユダヤ主義者による襲撃や脅迫の件数が倍増しており、日々びくびくしながら暮らしていると語った。
こうした中、同国を離れることを選択するユダヤ人も大勢いる。フランスを離れイスラエルに移住したユダヤ人の数は、2014年に約7000人に上り、前年の2倍となった。
9日の襲撃事件を受けて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、より多くの人々に移住を呼び掛けている。
不安の鎮静化を目指す仏政府首脳部は、イスラエルと米国に続く世界第3位のユダヤ人コミュニティーを安心させるためにあらゆる努力を行っている。
マニュエル・バルス(Manuel Valls)首相は、「ユダヤ人のいないフランスは、フランスではない」と述べ、またフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領も11日の歴史的な反テロを訴えたデモ行進に先立ち、ユダヤ人指導者らと面会しコミュニティーの警備強化を約束している。
仏国内のユダヤ系施設を統括する組織代表によると、オランド大統領は、すべての学校とシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝堂)の警備に、警察だけでなく軍隊の投入もありうると述べたという。
【翻訳編集】AFPBB News