太平洋戦争中の日本兵の死因の50%か60%は餓死(病死も含むかもしれない)だ、とか聞いた記憶があるが、「兵站軽視」の思想は日本軍だけでもないようだ。(笑)
EUは、食料やエネルギーの多くをロシアとの貿易に頼っていながら、ロシアとの「戦争」に踏み切ろうとしていたのである。EUやアメリカによるロシア制裁措置は、いわば太平洋戦争において日本に突きつけられた「ハル・ノート」のようなもので、いつでも戦争開始の理由となりうるものだった。それを承知の上での制裁措置だったのだろう。ところが、その措置の中身が資源大国ロシアにとっては痛くも痒くもないものだったから、ロシアはじっと我慢して、様々な誹謗中傷に対しても冷静な反応を繰り返していたわけである。だが、とうとうロシア(プーチン)は、EUとアメリカに対して経済的報復制裁を実施することにしたようだ。これで窮地に立ったのがEUであり、このままアメリカと心中するか、ロシアとの関係改善に取り組むかの判断を迫られることになった。この喜劇の成り行きに注目、である。(もっとも、ウクライナの国民やEUの国民にとっては喜劇どころではない話だが、そのような政府を持った国民の自業自得である。などと言いながら、日本も似たようなものだ。)
なお、ロシアと中国は経済的同盟関係に近づいているようである。この両国が手を結べば、落ち目のEUやアメリカ以上に強力な「ブロック経済」が出来上がることになるだろう。日本はもちろん、落ち目の欧米勢力の手下・使い走りのまま没落、となるのではないか。
(以下引用)
米国の命令には背けないEUや日本に合理的判断を期待できないと悟った露国は制裁への報復を決断
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201408070001/
2014.08.08 00:12:53 櫻井ジャーナル
ロシアのウラジミル・プーチン大統領は自国に「制裁」を科している国々、つまり日米欧に報復する決断をした。今後1年間農産品の輸入を禁止または制限するのだという。この段階まで報復しなかった理由はEUや日本がアメリカの暴走にブレーキをかけることを期待していたからだろうが、こうした国々の支配層はアメリカに抵抗できないことを確認し、踏ん切りをつけただけでなく、恐らく、アメリカが戦争を仕掛けてくるなら受けて立つと腹をくくった。
ロシアの報復を批判する声明をEUは発表したが、滑稽である。
http://europa.eu/rapid/press-release_STATEMENT-14-249_en.htm
制裁が話題になり始めた直後から、経済制裁で最もダメージを受けるのはEUだと指摘されていた。ロシアはEUを必要としないが、EUはロシアが必要だからだ。これまでロシアが報復しなかったことを感謝しなければならない。
EUは声明の中でクリミアの併合とウクライナの不安定化を自分たちの「制裁」を正当化する理由として挙げているが、クリミアの住民が独立の道を選んだ理由はウクライナの選挙で選ばれた政権をネオ・ナチが前面に出たクーデターで倒されたことに危機感を感じたからであり、ウクライナを不安定化させているのもそのネオ・ナチやIMFの要求。そのネオ・ナチを操っているのがアメリカ/NATOだ。(これは本ブログで何度も書いてきたこと。)理由になっていない。
今回は農産物だけの話に止まっているが、エネルギーに波及するとEUは破綻する。現在、EUは天然ガスの3分の1以上をロシアからの輸入で賄っているのだ。これだけの量を補填する体制を数年で整えることはアメリカの能力を超えている。この程度のことはEUの「エリート」も理解していただろう。その上で、アメリカの命令に従ったのだ。
いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」で潰すべき潜在的ライバルとされた国々の中にはEUもロシアと同じように含まれていた。アメリカの立場から見るとロシアへの経済制裁は一石二鳥ということ。考えてみれば、第1次世界大戦や第2次世界大戦で戦場になったヨーロッパは衰退、それを利用して世界に君臨するようになったのがアメリカだ。
ロシア側から見ると、EUに替わる新たな天然ガスの販売先がすでに存在する。言うまでもなく中国だ。ロシアと中国は5月21日に天然ガスの供給契約を結び、今後30年間にロシアは中国へ毎年380億立方メートルを供給することになった。
中国としてもこの取り引きには大きな意味がある。アメリカは中国の石油や天然ガスの輸送ルートをいつでも断つことができるように、南シナ海での軍事力を強化している。日本の「シーレーン防衛」もそうした戦略の一環だろう。
そこで中国はミャンマーやパキスタンにパイプラインを建設しようとしてきたのだが、アメリカはミャンマーとの関係改善を図り、そうした動きを潰そうとしている。そうした状況の中、ロシアからの天然ガスを確保する意味は大きい。ロシアへ接近した中国に「制裁」を科すことはアメリカにとって自爆行為だが、それでもやりかねないのがネオコンと戦争ビジネス。早晩、中国もアメリカに対して持っている幻影を捨てなければならない時が来る。