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現今の政治論議の行き詰まりとその盲点

「阿修羅」から転載。
中に、私の愛好するブログらしきもの(そうでない気もするが)への批判があり、その部分はカットする。途中に出てくる雁屋哲批判にしても、雁屋哲がこうした天皇制批判の発言をしているという事実を私は知らないが、天皇制論議としては大事な事が論じられている部分なのでそのまま載せておく。
ここに抜粋した部分は、私が常々ぼんやりと考えていたことをうまく、明確に表している。
ただし、論旨や論拠が不明の部分(特に雁屋哲批判の部分)もあるので、その部分には「突っ込み」を入れておく。
なお私は、雁屋哲は一流の思索人(妙な言い方だが、手垢のついた「知識人」や「識者」や「思想家」とは少々違うニュアンスだと思って貰いたい。これらの「商売人」だけでなく、在野のブロガーなども「思索人」である。)だと思っている。特にマスコミに生きる人間でありながら「反原発言動」を堂々と行っていることには敬意を持っており、今日の「徽宗皇帝のブログ」にもその引用をしたくらいだ。彼が「反天皇制論者」であろうと、彼への敬意は変わらないし、天皇制についてはいろいろな考え方があって当然だと思っている。


(以下引用)*特に重要と思う部分は赤字にしておく。


グローバル勢力は天皇制と日本文化の破壊を狙う
http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/538.html
投稿者 裏の浦 日時 2013 年 9 月 08 日 14:40:00: tePdV.gYjMrNs


■あなたの本当の敵と、その狙い

相も変わらずTPP、原発、消費税、軍国化、監視社会化など国民騙しの政治が続く。
これらが少なからず「新自由主義」と「グローバル化」を進める国際大資本の
目論見を反映していることは言うまでもない。

果たして国際大資本が「完全な一枚岩ではなく、例えば軍産勢力と金融勢力、
一極主義と多極主義といった具合に勢力争いがある」のか、あるいは未だ根強く
「欧州とBRICsなど、国家間の争いの構図がある」のか、「じつは強大な資本家が
敵対する勢力の両方に資金を提供し、思うように操っている」のかは分からない。

しかし互いに出し抜き合おうとしている勢力同士も、共通の利益がある時は
やはり協力し合う。要は「新自由主義」と「グローバル化」を建前とした
「資本と情報統制による支配体制」を確立すること。あなたの生活を苦しめる
敵の正体が分からなくとも、その狙いは分かり切っているということだ。


■3つの支配体制

昔からあった2つの支配体制――即ち「文化、宗教的価値観、権威による統治」と
「軍事力による支配体制」、これらは「資本が全て」という歪んだ価値観を
99%の人間に刷り込むためには最大の障害だ。破壊するか、取り込む必要がある。
そのためには国際大資本は喜んで共謀するだろう。

もっとも、今や「軍事力による支配」は「資本と情報による支配」に吸収済みだ。
残る障害は「文化的権威」ということになる。狙われるのは欧州なら一部に残る
王室やローマ法王庁。中東ならイスラム文化。日本なら…そう、天皇制だ。


■詐欺師は一度手の内をバラしてから、改めて騙す

さて、政治ブログやツイッターを流して見ると「TPPも原発も消費税も間違い」
「金融支配やマスコミ、代理店による情報支配が元凶」「アメリカによる
支配体制から早く脱却すべきだ」と訴える人はいる。

で、抗議行動を起こせとなるわけだが、ではそうした論者が単刀直入に
内外の金融勢力や大企業、それと癒着する官僚やマスコミを攻撃するよう
呼び掛けるかというと、不思議とそうはならないことが多い。ここで何故か

1「マスコミも官僚も在日外国人が支配している」と矛先を排外憎悪に向ける。
2「○○党や政治家のAさんを応援しよう」と新しい御輿を担ぐ。
3「こんな日本からはさっさと逃げたほうがいい」と海外脱出を煽る。

となってしまうのである。しかし結局

1→アジア間の対立を煽ることになり、軍産勢力にも多極主義勢力にも得。
 さらには情報統制やデモ規制のいい口実になる。
2→奴隷頭を挿げ替えるだけのガス抜き、もしくは勢力間の主導権争い。
3→むしろグローバル化を進め、賃金抑制や民族対立、文化の破壊をもたらす。

わけで、じつはどれも新自由主義、グローバル主義者を喜ばせるだけだ。
平たい話が、これらは巧妙なミスリードなのである。しかし特に1は、
戦後の排外極右のイデオロギーや“匿名掲示板的なノリ”に合致してしまうため、
引っ掛かってしまい易いのかも知れない。


■天皇制が狙われる

さて最近、第4の誤誘導パターンが登場している。

4「こんな日本になってしまったのは、そもそも天皇制をはじめとする
 日本の文化伝統が間違っていたからだ」と言い出す。

というものである。かなり酷いこじつけだが、それでも1とは対照的に
戦後左翼のイデオロギーと合致するので真に受ける人間も出て来かねない。

見え見えと言うべきか、ここで出て来るのがリチャード・コシミズや
News-USのような「オカルト陰謀説」の論者だ。彼らが「天皇エタ」「裏天皇」
などと訳の分からない言葉を用いているのを目にしたことがないだろうか。

要はオカルト陰謀論者は、在日外国人に対しての憎悪扇動と全く同じ要領で
ずっと以前から天皇制の権威を貶めてきたわけだ。陰謀を暴くふりをしつつ、
むしろ日本解体の陰謀に加担していると言っていいだろう。

また原発事故の被害を言い募るネット著名人が突然、天皇制を批判する
発言をすることもある。原発事故で社会問題に興味を持った人は多いだろうが、
そうした人は原発問題以外には注意が向いていない。無警戒に乗じて安々と
偏った思想を刷り込めてしまうという寸法である。

しかし本当に厄介なのが、「美味しんぼ」の雁屋哲のような、そこらの
ネット右翼やオカルト陰謀論者よりずっと知名度のある人間による
天皇制批判である。また天皇制や貴族制を暗黙に批判するブログや
ツイッターアカウントも、それなりに日本史、特に明治維新のもたらした
矛盾に精通しているものがあって、以下のような批判を展開する。
________________________________________
明治維新は西洋列強に篭絡された国内勢力によるクーデターであった。

明治政府は天皇を旗印とし、国家神道を謳って廃仏毀釈や神社の統廃合で
日本各地の文化遺産や伝統を悉く破壊した。そして行き着いたのが、
自他国民に多大な犠牲を強いた昭和の戦争の惨禍である――
________________________________________

じつは筆者も、ここまでは同意見だ。しかしここからが違う。
________________________________________
欧米に呼応する国内支配層は、日本支配の旗印として天皇制を利用してきた。
だからその体制から脱却するためにも、天皇制の存在に疑問を持つべきだ――
________________________________________

果たしてそうだろうか?


■天皇制攻撃の詭弁

一見もっともなようで、じつは後半の説は2つの点で明らかに間違っている。
1つは「旗印」を掲げる人間は、その陰に隠れて悪事を働くわけだから、
いくら「旗印」を攻撃されても痛くも痒くもない。むしろそのための旗印だ。
明治維新の時点で、既に天皇制は権力者の責任回避のための盾だったわけだ。

もう1つは、先述したように天皇制を最も疎んじているのは他の誰でもない
国際大資本ということだ。ネット右翼がいつまでも中韓が敵だと
信じ込まされているように、日本人自身による天皇制への攻撃も
わざわざ本当の敵が喜ぶことを、その敵に騙されてやらされるに過ぎない。

雁屋は「戦後、GHQはうまく天皇制を利用した」と言うだろうが、
これは不正確な物言いだ。言うまでもないが、GHQは当初、天皇制廃止を
検討していた。しかしそれだと当時の日本人が徹底して抵抗することが
考えられた――だから「GHQは逆に、天皇制を利用した」のである。(夢人注:? 雁屋が「言うだろう」という、ただの想定に基づいて論じても無意味だし、「GHQはうまく天皇制を利用した」と「GHQは逆に、天皇制を利用した」がなぜ「逆に」なのか意味不明である。)

この文脈を語らずに「GHQは天皇制を利用した」とだけ強調するのは
あまりにもイデオロギーありきであろう。「天皇制を利用するだけして、いざとなったら切り捨てる」のがアメリカ外交筋の狙いである。雁屋の言動(夢人注:この「雁屋の言動」を明確に紹介しないと、意味が不明になる。少なくとも私には「雁屋の言動」が実際にどのようなものか、この文章からは理解できない。雁屋が「GHQは天皇を利用した」と言っているというだけなら、それは左右を問わず、ほとんどの人間にとって常識だろう。)はGHQの悪事を暴いているようで、逆にGHQの書いた筋書きをなぞろうとしている。
これではリチャード・コシミズとやっていることが同じだ。


■文化、文明なしに「資本支配」に対抗出来ると思うなかれ

先に述べたような「金融と情報操作による支配体制」に抵抗することが、
何よりも我々が生き残るための道となる。

そのためには「文化や価値観」の再構築が欠かせない。しかし文化も価値観も、
一朝一夕ででっち上げられる代物ではない。天皇制一つ取っても、
稲作や古典芸能、寺社文化、アジア交流史などと密接に結び付いている。

家の柱の1本であっても、安易に抜けばその家全体が傾きかねないように、
「天皇制だけを廃すればいい」という発想は、文化の成立過程を全く無視した
浅薄過ぎる考えだ(雁屋がそこに思い至れないのが不思議だ)。
むしろグローバル勢力の方が天皇制の日本文化に置ける重要性を知っている。
だからこそ天皇制解体を狙うと見るべきだろう。

筆者は、江戸時代以前の日本が完璧な価値観を持っていたと主張する気はない。
身分差別は今より苛烈だったし、公的な社会保障も存在しなかった。
しかし当時の日本は中国とも朝鮮半島とも適度な距離を保てていた。
資源を浪費することもなく、金貸しがここまで強い力を持ってもいなかった。

村八分もある一方で、時には村人同士協力して一揆を起こすこともあったし、
仏教の中にも平等や個性を尊重する思想はあった。神道の自然や祖先に対する
畏怖の念は、今日叫ばれる自然保護の重要性を先取りしたものだったはずだ。
こと価値観においては、今の日本より進んでいたところも多々あったと言える。

なおこの中で朝廷の果たしていた役割というと、洛中で歌を詠み、
稲荷に位を与え、京都の寺社を庇護するという、極々文化的なものだった
(もちろん寺社を保護したのは国体を護持し、外難を廃する目的もあった)。

それが明治維新によって瞬く間に「大量消費、工業重視」「アジア進出」
「財閥、金貸し」を是とする西洋発祥の近代資本主義に毒されてしまった。
天皇制も「文化的権威」から「国粋主義の旗印」に歪められたのである。

二百年ばかりの西洋型民主主義の利点と引き換えに、千年単位で築かれた
日本文化の長所(夢人注:「日本文化の長所」が「一揆」や、「仏教」の一面や「神道」の一面だけで、また朝廷の存在は「洛中で歌を詠み、稲荷に位を与え、京都の寺社を庇護するという、極々文化的なものだった」という程度のものなら、日本文化など大切にする必要などない、と思う読者が多いのではないか? )まで壊してしまうのは、どう考えても間違いだ。
まして西洋型民主主義の行き詰まりは欧米を見れば明らかである。
西洋型民主主義は、同じ西洋発祥の金融資本主義に勝てないでいるではないか。


■天皇制は現状維持が最善

「天皇バンザイ」の保守は、明治政府への回帰を企図しているに過ぎない。
しかし明治政府は日本の伝統の破壊者だから、そこに回帰しても結局は
グローバル左翼と同じくよき日本文化を破壊する。それが現在の自民党政権だ。

自民の別働隊である維新が、文楽をはじめ大阪の伝統文化を破壊したのは
その鏑矢だったと言えよう。また思えば相撲、歌舞伎といった日本文化に
マスコミがケチをつけ始めたのは、東北地震に前後していた。

我々が今しなくてはいけないことは、明治維新の矛盾と過ちを正しく認識し、
日本の文化、伝統を活用した日本型の民主主義を構築することだ。

その上で、こと天皇制に限って言えば、じつは現憲法下では明治維新以前の
政治力を持たない「文化的権威」に立ち戻っていることを指摘したい。(夢人注:この部分は私とまったく同意見)

運良くあるべき姿に戻って70年無事なものを今、ことさら攻撃する行為は、
廃仏毀釈以上の日本文化の破壊に繋がりかねないし、世界的に見ても
地域文化の多様性がまた一つ失われることを意味する。文化的多様性を
謳うなら、それぞれがまず自国の文化を守るのは当然ではないか。(夢人注:この部分もまったく私と同意見)


■それでも天皇制を「憎む」人へ

それでも個人的に天皇制への憎悪感情に囚われている人に問いたい。

天皇制を攻撃したところで、TPPや原発がどうにかなるのか。
それで庶民の生活が改善したり、自殺者が減ったりするのか。(夢人注:傾聴、傾聴!)

小泉や竹中がのうのうとしているのに天皇制だけ叩くのはどういうことか。
天皇制を利用する勢力は、それがなくなっても別の御輿を担ぐだけではないか。(夢人注:Hear hear!)

「日本の右翼が戦後ずっと情報操作に踊らされ中韓を憎むように仕向けられていた」と言うのであれば、自分達左翼(夢人注:この部分から、筆者が右翼陣営であることが推定できる。つまり私とは反対陣営。)も同様に「自国の文化を過剰に憎むように仕向けられていた」とは微塵も考えられないのか。

中国や朝鮮半島との友好を言うなら、それを牽引してきた天皇制を廃すれば
なおのことアジア交流の歴史を否定することになることが分からないのか。

イデオロギーの病理に囚われて、本当の敵を自ら利したり、生活すら苦しい
人々を救うことよりも自分の教条主義の満足に血道を上げたりする。
そんな愚行に走ってはいけない。

「日本の伝統文化を守りつつ、人々の日々の暮らしを重んじる社会」は可能だ。

いやむしろ「よその国と盛んに戦争しながら、日本の伝統文化を守る社会」や
「金融資本主義に毒されつつ、人々の日々の暮らしを重んじる社会」の方が
あり得ないのは明らかではないか。

「伝統文化」と「日々の暮らし」が二者択一の考えであるかのように
思わされているとしたら、それは自国の文化を知らないことに付け入られ、
「資本による支配」に都合のいい価値観を刷り込まれているということだ。

「最初から海外に逃亡済みのブルジョワ左翼」(夢人注:なぜ「ブルジョワ」が「左翼」?社会主義も共産主義もブルジョワを敵としているはずだが?)も「愛国と言いつつ日本を金持ちに差し出す奴隷頭保守」も、けしてあなたを守ることはない。
土地すらも核で汚染される今、この国に残って生き延びる方法、
国際大資本に抵抗する手段となるのは「文化と価値観」しかない。





■まず文化的素養を身に付けよう

(夢人注:ここに特定ブログ、ツィッターへの攻撃があったが、私の愛好し、尊敬する、或るブログへの攻撃のように見えるのでカットする。多分、別のブログだとは思うのだが、念のため、である。)



もちろん仏教は朝鮮半島伝来だし、密教は中国からもたらされたものだ。
こうした伝統文化に敬意を表することはむしろアジア友好に役立つ。
カルト保守の言う「親天皇、中韓敵視」も、グローバル左翼の言う
「反天皇、アジア友好」も、じつはどちらも根本的に歴史への無知から来る。

文化的基盤を持たない人間は、ただの知識の面はもちろん思考の基盤も
脆弱になり、他人に騙され易くなってしまう。

何も天皇制や宗教色の強いものでなくてもいい。和歌や俳句、民謡、
地元のお祭りといった身近な日本文化を見直してみることが大切ではないか。


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