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通貨価値の差を吸収するユーロシステム

「泉の波立ち」から転載。
書かれた意見が正しいかどうかは別として、見方が面白い。欧州統一通貨(ユーロ)というのは、国家ごとに見れば、普通なら貿易黒字によって自動的に自国通貨高となるはずが、統一通貨によって自国通貨安のまま、貿易黒字を積み上げることができ、富める国が無制限に富むことになる、ということだろうか。EU本来の趣旨から言えば、ドイツが貿易で稼いだ金は、ギリシアなど、EU内の他国支援に回すべきだろうが、そうはなっていないようだ。EUのメリットを享受しているのはドイツだけかもしれない。(EUを欧州軍事同盟と見れば、また別の話になる。)

(以下引用)


● ニュースと感想  (9月11日b)

 「ドイツの健全財政」について。
 日本は莫大な借金を抱えているというのに、ドイツは超健全財政だ。
 《 46年ぶり無借金のドイツ、新規国債発行ゼロ 》
ドイツのショイブレ財務相は9日の連邦議会(下院)で、連邦政府の 2015年予算案に関し、新規国債の発行を旧西独時代も含め 46年ぶりに停止し、「無借金」で歳出をまかなえる見通しになったと明らかにした。
 欧州財政・金融危機対策でも、「緊縮財政」による財政健全化路線を主導したドイツは、16年以降、連邦政府に財政均衡の実現を法律で義務づける徹底ぶりで歳出削減に取り組んでおり、堅調な経済状況による税収増が後押しした。ただ、緊縮財政の影響で、老朽化した道路や橋といった社会基盤の改修に予算が十分回らないなどの弊害も指摘されている。
( → Yahoo 読売新聞 2014-09-10
 これを見て、「ドイツは素晴らしい」と感嘆する人々が多い。しかし、そうか? 
 通常、この手の「うまい話」というのは、ない。どこかでメリットがあれば、他のどこかでデメリットが生じるものだ。特に、市場経済では、うまくバランスが取れるように自動調整されるのが普通だから、このような異常な状況が起こることは、普通はあり得ない。なのに、こういうことがあるとしたら、どこかが歪んでいることになる。それは、何か? 
 すぐに思い浮かぶのは、「ユーロという共通通貨」だ。このせいで国の間のレートが固定レートになっているのも同然だ。ここから、次のことがわかる。
 本来ならば、無借金にすれば(増税と同じで貨幣価値が上昇して)通貨高になるはずだ。ところが現実には、共通通貨のせいで通貨高にならない。そのしわ寄せは、南欧などの貧乏国に来る。貧乏国がユーロで苦しむ。結局、「富めるドイツと窮乏する貧乏国」という対二が生じる。
 全部をまとめると、「貧乏国を犠牲にして、ドイツだけが繁栄する」という構図ができる。これは、どいつにとってはありがたい状況だが、貧乏国にとっては最悪の状況だ。とすれば、これを「成功」と呼ぶことはできない。「他人を犠牲にしての繁栄」というのは、一種の「富の泥棒」みたいなものだからだ。「他人を不幸にすることで私は幸福になりました。羨ましいでしょ?」なんて言っているやつがいたら、(不幸にされた側から)ぶんなぐられても当然だろう。
 ともあれ、「ドイツは無借金になった」という状況を見て、「素晴らしい」「羨ましい」などと思うのは早計だ。それはいわば「泥棒って素敵だなあ」と思うのと同様だ。

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