「ゲスくて有能」なタイプの営業マンなら「常識だろ」と言うでしょうが、
一般人には意外と知られてない、とても効果的なエグい販売テクニックを一つご紹介。
たとえば、どこで買っても150万円ぐらいする、いい感じの自動車が、
90万円で売っている。
破格の安さだ。こんな安いの見たことない。
これほど明らかにお買い得のやつは、めったに出くわさない。
店員に確認してみても、この値段で間違いはないと言う。
見ているうちに、他の客が、こちらに近づいてくる。
あちらの客が、この値段に気がついたら、先に買われてしまうかもしれない。
これを逃したら、こんなチャンスは二度とやってきそうにない。
そこであなたは、他の客に買われる前にと、
即座に購入契約書にサインする。
店員が、その契約書を持って、店の奥へと入っていく。
契約の手続きをするためだろう。
店員が出てくるまでの間、
あなたは、超お得な買い物をしたことで、最高の気分になっている。
いまや、「ほぼ自分のものになった」自動車を眺めながら、
その自動車を使って行う、いろいろなことを空想する。
この自動車の後部に、子どもたちを乗せよう。この広くて快適なスペース、広い窓、高い天井、子供たちは大喜びするだろう。妻も喜ぶだろう。そうだ、これだけ広ければ、自転車も載せられるぞ。いや、バーベキューセットだって載せられる。海に遊びに行く時も、旅行に行くときも、たくさん荷物を載せても、とても快適だぞ。ほう。カタログを見ると燃費もすごくいいんだな。衝突時の安全性も高いのか。これは、普通の値段で買っても悪くない買い物だぞ。
。。。
かなり時間が経ってから、
ようやく店員がでてくる。
そして、店員が申し訳なさそうに告げる。
「大変申し訳ございません。
上司に確認いたしましたところ、この値段は、担当の者のミスであることが分かりました。
正しい値段は。140万円でした。」
しかし、自分がその車を買うと、どんなに素晴らしいことになるのか、
それがどれだけ自分の生活を豊かにするのかの理由を、
脳内で大量に創りだしてしまっていたあなたは、
140万円でもその車がお買い得に見えるようになっている。
「140万円でも、一般に売られている150万円よりは、
まだ安いじゃないか」などと、自己正当化を始める。
だから、140万円であることが分かっても、あなたは
その車を買うことにしたのだった。
しかし、そもそもあなたは、90万円だからこそ、
その車を買うと決めたのだった。
なのに、その「そもそもの買う決意をするに至った根拠」が崩れたというのに、
あなたはその車を買うという決意を変えなかった。
これはなぜだろうか?
その理由は、あなたは買う決意をしてしまった後、
たくさんの「他の買うべき根拠」を自分で作り出していたからだ。
そして、それらの「根拠」は単なる空想でもなんでもなく、
紛れも無く事実であり現実だったからだ。
家族が喜ぶのも、天井が高いのも、自転車やバーベキューセットが載せられるのも、燃費がいいのも、全て「事実」なのだ。
「90万円」と誤表示したミスは、偶然起きることもあるし、
意図的に起こされることもある。
しかし効果は同じだ。
この卑怯な販売テクニックの1つ目のキモは、
「客の誤解」から「訂正」までに、
しばらく「時間」を置くことだ。
店員が奥へ行って、なかなか出てこなかったのは、
この「時間」を作るためだ。
この時間を置くことによって、
客は、「その商品を自分が買うべき理由」をどんどん頭のなかで増殖させていく。
客は、自分の「これを購入することに決めた自分の判断は正しい」という
自己正当化のための証拠と理屈をありとあらゆる記憶から引っ張ってきて、
どんどん組み上げていく。
その結果、自分の信念を揺るぎないものにする。
それが狙いなのだ。
2つ目のキモは、
「すでに店員は撤回と謝罪をしている」ということだ。
店員は潔く自分の間違いを認め、それについては、誠実な謝罪をしている。
もはや、少しもウソをついていないのだ。
誠実に間違いを認めて謝罪している店員を、
これ以上責めることは難しい。
3つ目のキモは、
この「勘違い&撤回」テクニックを使っても、
詐欺で訴えられることはほとんどない、ということだ。
本当に価格表示ミスだったのか、狙ってやったのかを、
証明することは非常に難しいからだ。
ほぼ完全犯罪が、簡単に成立してしまうのだ。
4つ目のキモは、
その客自身が創りだした「購入すべき理由」は、
全て事実だということだ。
事実なので、否定のしようがない。
5つ目のキモは、
それらの「買うべき理由」は、店側が洗脳によって客に刷り込んだのではない、
という点だ。
客が、自分で自分を、勝手に洗脳しただけだ。
客が自発的に「その車を買うべき」という強固な信念を育て上げたのだ。
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もちろん、
「ここまでゲスいことをやってまで、売上を上げたいとは思わないわ」
という営業マンも多いだろう。
しかし、これをやる営業マンは結構いる。
それも人格破綻者などではなく、普通に気のいい人だったりするので油断ならない。
一方で、一消費者としては、このテクニックは知っておくにこしたことはない。
知らなければ、こういうテクニックを平然と使ってくる
「騙される方が悪いんだ」「授業料だよ」という営業マンのカモにされるだけだからだ。
もちろん、この記事へコメントをする人は、
「こういうテクニックを使う営業マンは、人間性を疑うよね」
「うちは、絶対こんな汚いことはしませんから」
というポジショントークのコメントをした方がいい。
実名を明かしてネットをしている人なら、
なおさらである。