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日本病ではなく、時代病か

今日の「徽宗皇帝のブログ」の流れで、「カレイドスコープ」で言及されていた記事をついでにここに掲載しておく。詳しく読んではいないが、2002年当時の日本(小泉による日本破壊前)の政治経済状況への苛立ちから来る論考のようで、今となってはむしろ当時の日本人の「ネガティブな感情」こそが正しい日本観を示していたのだが、そのネガティブな感情が「小泉改革」への過剰な期待となって、あの暴走を生み出した(もちろん、マスコミによる誘導の結果だ。)点が間違いだったという解釈が適切なのではないか。
いずれにしても、この「日本病」は、私の言う「日本人の遺伝的精神疾患」ではなく、2002年当時の時代病にすぎないようだが、現代に於いても日本人考察の叩き台の一つにはなるものだろう。

下記記事の考察に対しては、その結論部分(「イギリス病の克服は、鉄の意志を持つ宰相サッチャーが行った「ビッグバン政策」によって、克服された。彼女は、イギリスに経済の自由化という原則を貫いて強烈な外資の流れを作った。小泉改革では、この 流れがまったく作れない。よって日本病的体質の人物では、日本病克服は不可能と判断せざるを得ない。」)とは真逆に、小泉が日本を「新自由主義の地獄社会」にしたことからも、「見る目がない」と言わざるを得ない。この筆者はサッチャーリズムの信奉者のようだが、サッチャーがイギリスを表面的には建て直しながら、極端な下層階級いじめ政策を行ったことへの批判も無さそうである。






(以下引用)



「日本病」を考える


-現代日本人のネガティブな感情-





 
1 日本病の心的傾向

最近何処からともなく言われるようになった日本病というものを考えてみよう。


かつてイギリス病ということが盛んに喧伝されたことがある。周知のようにイギリス病とは、産業革命をいち早く起こしたイギリスという国家が、市民階級が次第に自分たちの権利意識に目覚め、やがては世界第一位の債権国となり、「ゆりかごから墓場まで」と言われるような世界に並ぶ者のないような福祉大国を建設するに至ったのであったが、ある時から、それが足かせとなり、いつしか国民がその権利にあぐらをかくようにようになり、汗を出して働かなくなって、イギリスという国家そのものが国際競争力を失って、信用を失墜してしまった状態を指す言葉である。


ひとつの例を挙げれば、イギリスの高級車に「ジャガー」というものがあるが「○○年のジャガー」はトラブルが多いと言われたりしたものだ。失業率も高止まりして、ひどい時には、失業手当てが、巷の最低賃金を上回る状態もあったようだ。もちろんこのようにイギリス病は、病とは言っても、身体的な病ではない。それは社会学的あるいは社会心理学的な意味における国民の労働意欲減退症候群とも言うべき心の病的傾向のことであった。


そのイギリス病の一般的な解釈を「広辞苑」の第五版で探したのだが、既に死語となっているのか見あたらない。「現代用語の基礎知識」でも同様であった。つまりは現在の時点で「イギリス病」という国民病はこのイギリス社会から末梢されたと見るべきであろう。


イギリス病に変わって、世界中で喧伝され始めたのが、日本病という困った症状の心的傾向である。
日本病の特徴は以下のような点であろう。

 
第一に、日本病の感染者は、自分が日本病の病に罹っていても、容易にそれと気づかないという傾向が強いこと。(感染意識の欠如)

第二に、日本病の感染者は、全てにおいて受動的な心的傾向を伴うこと。
(積極的行動の欠如)


第三に、日本病の感染者は、極端に自分が突出を恐れ、出る杭は打たれるという教訓を心に刻んでいること。(顕著な中産階級意識)


第四に、日本病感染者は、封建時代の権化とも言うべき、徳川家康の信奉者が多いこと。(見ざる・言わざる・聞かざるの思想)


第五に、日本病感染者は、恥という日本文化の根底にある心的傾向を務めて無視するか、完全に忘れ去っていること。(恥の文化の喪失)


第六に、日本病感染者は、政治とは世襲的な労働であり、選挙において、自分が誰に投票しようと無意味であると諦念の気持を持っていること。(政治的諦念)


第七に、日本病感染者は、依然としてアジア諸国に対する優越意識を持ちながら、アメリカを始めとする欧米先進国に対しては、卑屈な劣等意識を引きずっていること。(プチ?脱亜入欧意識)


第八に、日本病感染者は、日本の欠点ばかりを探して、長所を見ようとしないネガティブな心的傾向を強く持つこと。(ネガティブな傾向)


第九に、日本病感染者は、自分がリスクを負って先頭に立つことを極力避ける傾向があること。(冒険精神の欠如)


第十に、日本病感染者は、目の前で犯罪が起こっても、それがテレビの中か、テレビゲームの中で起こっていると考えてしまう傾向があること。(テレビ中毒症)


第十一に、日本病感染者は、他人事(ひとごと)意識が強く、たとえ親子友人間にあっても、すべてにおいて他人のことで関与を避ける傾向がある。(他人事意識)


第十二に、日本病感染者は、物事の本質をブランド化する傾向が強く、かつブランドを神の如く神格化する傾向と、それに時として過剰依存する傾向がある。(ブランドへの過剰依存意識)


以上の特徴から、日本病を、一般的にこのように定義することが出来るのではないだろうか。日本病症候群は、日本人の2000年前後の心の傾向であり、それは国家としての日本が、バブル経済の後処理に結果として失敗したために、経済の低迷が十年にも及び、その不安と自信喪失から来る否定的な心的傾向である。しかもそれは極端な「他人事意識」を伴った鬱病的な傾向である。
 
 


2 イギリス病克服過程と日本病


日本病の克服には、どんな処方箋が必要であろう。かつてイギリス病を克服したサッチャー政権は、ビッグバン改革と言われるような徹底した自由化の経済政策を通して、外資の導入と福祉政策の見直しを計り、一方では低所得者層にも家を持たせるような夢と希望を与えるような税制度を導入することも忘れなかった。こうして不治の病とも言われたイギリス人の心の病をサッチャー政権は克服したのである。そのことから首相サッチャーは鉄の女(鉄の意志を持った女性という意味)と呼ばれたのである。 


もちろんサッチャー改革によって、イギリスは多くのものを失ったことも事実だ。先の例に挙げたイギリスの名門企業「ジャガー社」もアメリカのビッグスリーの傘下に入ったように多くの企業が買収され、資本系列では、イギリス系の企業という名目は外れた。しかしサッチャーの政策は、名よりも実をとったのである。日産が英国工場を建設した時、サッチャーは満面に零れるような笑みを浮かべて、日系企業の進出を向かえたものだ。 


さらに世界の為替市場で、トップの売買高を誇るロンドンのシティは、アメリカのマンハッタン(世界一の株式市場)と並んで、世界中の為替ディーラーをイギリスに吸収した。このような方式をいつからか、エコノミストは「ウインブルドン方式」と呼ぶようになった。この言葉は、もちろんテニスのウインブルドンテニス大会から来ている。この大会は、世界の四大テニス大会の中でも最高の権威と栄誉とされる大会だ。年に一度、世界最高のテニスプレイヤーたちが、夏のイギリスウインブルドンに集い、「ウインブルドンチャンピオン」という世界最高の栄誉をイギリス王家から授かるために、二週間の間、白熱した戦いを繰り広げるのである。確かに最近英国の選手が、ウインブルドンチャンピオンになったという話を聞いたことがない。それでも主催国としてのイギリスの権威と栄誉は変わることはない。多くの名門企業を、外資系企業に売り渡す結果となった。要するに病を克服するためには多くの痛みが伴ったのである。 


しみじみと考えてみれば、「ジャガー社」のような名門企業が、どんどんと買い取られて、イギリス人の気持ちとすれば、面白いはずはない。しかしモノは考えよう、これから経済を活性化していけば、必ず買い戻す時も来る。鉄の女は、心の中でそのように思っていたのかもしれない。彼女の柔軟な政治姿勢は、少々右寄りだ。と指摘されたこともあった。でも彼女の政治姿勢は、現実主義的と指摘した方が当たっている。例えば、世界のソ連邦最後の「皇帝」(書記長職を指す)となった改革者ゴルバチョフを最初に西側のマスコミに好意的に紹介したのは、サッチャーだった。彼女はモスクワにゴルバチョフを訪ねて、会談をして、一発でこの人物が、東西の政治構造を変革する人物と見抜いた。そして「彼は話の出来る人物。単なる共産主義の教条的な人物ではない」と語った。それが彼女とゴルバチョフが、まるで恋人のように枯葉の舞うモスクワの公園のベンチで寄り添うような写真と共に西側のマスコミが報道することによって、世界の冷戦構造に風穴を開ける役割を果たした。すぐに鉄の女は、時のアメリカ大統領レーガンに電話をし、あっという間に、ソ連邦は民主化を遂げ、ベルリンの壁の崩壊に象徴されるような事態が到来したのである。イギリス病の克服だけではなく、サッチャーという人物の鉄の意志は、結果として世界平和にも大きな貢献を為したことになる。 


所詮イギリス病、あるいは日本病と言っても、人間の心が作り出している幻影の経済的な反映に過ぎないのだ。だから日本病克服の処方箋は、イギリス病同様、鉄の意志をもった指導者の出現とそれを取り巻くブレーンが効率よく仕事をして、このような方法をとれば、日本は必ず良くなる。しかもそれが夢を生むような現実的で柔軟なものでなければならないのである。さてそこでイギリス病克服の過程を踏まえて、我が日本をみればどうなるであろう。果たして小泉改革と言われるものが、日本病克服の究極の処方となり得るであろうか。
 


3 小泉総理も日本病?


現在の小泉政権が行っている「聖域なき財政再建」とは何か。小泉政権成立してほぼ一年になるが、効果の方はさっぱり見えてこない。ますます景気 は混迷を深くしていて、このままでは本当に日本経済が奈落の底に落ちて行きかねない底知れぬ不安というものを感じてしまう。 


当の小泉氏は、言語は明瞭なのだが、やはり日本病に冒されているようで、何事にも「他人事」口調が目につく。アジア無視、脱亜入欧の思想は如何 ともしがたく、首相就任後、早々に靖国問題でアヤを付けたものの、何とかそれを「日本病の世相」を逆手にとって、それをうまく乗り切ったのであったが、どこよりも早く行った外遊先は、やはりアジアではなく世界の盟主同盟国のアメリカであった。そこでブッシュ大統領に、大盤振る舞いの待遇を受けると、わが小泉首相は、すっかり良い気分になって、2001年 9月11日に同時多発テロが起こると、早速自衛隊を、後方支援と称して、インド洋に差し向けるような早業も披露した。(もちろんこれとて憲法論議ソッチノケで実に危なっかしい政策だが・・・) 


ところが肝心の内政はと言えば、小泉改革の目玉であった道路公団の民営化は遅々として進まず、出てきたのは外務省の不祥事であった。それを先頭になって、旗を振るかと言え ば、流石に日本病の進行は早く、他人事症状は進み、「女の涙は武器だ」とか「言葉の暴力も悪いが、実際の暴力もいかん」などと、完全な無関心の日本病症状は強まる一方だ。 


これを見かねて、ある女性経営者が、このように発言したと新聞に載っていた。 
「小泉さんは、ライオンだとずっと思ってきたが、とんでもない。あの人はライオンではなくキツネだ。キツネは早く、山に帰った方がいいのではないか」 
その発言を耳にして以来、確かに彼の顔がライオンからキツネに見え始めたから不思議だ。 


かつて数年前、自民党橋本政権も、小泉政権ほどではないが、高い支持率に支えられて、「イギリス病」克服の歴史に習い「日本版ビッグバン政策」を 実行しようとしたことがあった。しかし極端な緊縮型の経済政策が、アダとなって、不況の深刻化から、国民の支持を失って、倒れたことがあった。いっ たい橋本時代の「日本版ビッグバン政策」と今回の「聖域なき財政再建政策」にどんな違いがあるというのだろう。エコノミストではないので、明確な発言は出来ないが、少なくても経済効果として、出てきたものは、国民の非常にネガティブな経済心理の蔓延という以外にないような気がする。つまり余りに 緊縮的な財政政策を続けている余り、活力のある企業グループのエネルギーをも奪ってしまっているのだ。 


こうなると、日本病の第13個目の症状として、「過剰の自信喪失」という一項を加えたくなる。この十年以上に及ぶ日本政府の過剰な緊縮的財政政策 は、日本国民の心理に「過剰な自信喪失」とも言うべきネガティブな心理情況を生み出していることを我々はしっかりと自覚すべきである。これはまさに「トゥレイト・トゥリトル」(遅すぎ・少なすぎる)な財政政策が生み出した日本病の一症状そのものではないだろうか。 


もしも小泉政権がこのまま続いて行けば、残るのは、硬直しきった大銀行や政府に守られた半官半民のような企業しかなくなってしまう危険すらある。もはや銀行は中小企業になんか、目もくれられないようなひどい経営状態になっているのだから、このままで行けば日本から中小企業やベンチャーだっ て、なくなってしまう可能性も出てきた。要するに日本経済は、まったく夢がなくなってしまった。おそらくソニーやトヨタなどの企業は別にして、日本の学 生だって、海外に渡って、外資系の企業に職を探す者が当然でるであろうし、それが嫌な者は、公務員になる道を目指すことになるだろう。そうしたら日本には、ますます公務員に成りたい人間ばかりが増えて、役人国家というような駄目な国になってしまうであろう。これではまるで明治の日本の資本主義の勃興時期のような有様ではないか。


結論である。イギリス病の克服は、鉄の意志を持つ宰相サッチャーが行った「ビッグバン政策」によって、克服された。彼女は、イギリスに経済の自由化という原則を貫いて強烈な外資の流れを作った。小泉改革では、この 流れがまったく作れない。よって日本病的体質の人物では、日本病克服は不可能と判断せざるを得ない。


もはや小泉氏が日本病なのは、その度重なる他人事発言からも包み隠せない事実と言うべきだ。佐藤 
 
 



 




2002.3.14
2002.3.15

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