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西洋文明(資本主義)のエゴイズム全能主義の破綻と、東洋文明

「隠居爺の世迷言」記事で、話の冒頭は芥川龍之介の「杜子春」から始めているが、話を簡略化するために、「杜子春」関連の部分を全部省略して、「西洋文明論」として編集する。まあ、前に載せた鳥尾子爵(鳥尾小弥太)の西洋文明論に近い。昨今、同じ感慨を持つ人が増えているのではないか。つまり、西洋文明の下司さがあまりに度を超してしまい、その正体が世界中に知れ渡ってきたというわけだ。だが、その文明は人間の我欲、私利私欲という業に根差しているだけに、西洋文明、あるいは西洋諸国が没落しても、どこかで生き続ける可能性は高い、いや、たぶんそうなるだろうが、それを少しでも改善し、世界を地獄化から救えるのが、東洋文明の「我ただ足るを知る」である。

(以下引用)


 西洋文明はどこまでも積極的であり、あきらめることを知らない。悟りを開こうなどということは頭にない。一見すると、素晴らしく前向きな姿勢であるかのように思えるけれども、これは、方向性が正しい場合にのみ評価できることであって、特にアメリカの場合は、間違った方向へ足を踏み出した場合にも修正できない。

 これが実に始末に悪い。アメリカは建国後248年のうち、戦争をしていないのは17年間しかない。しかもすべての戦争が侵略戦争だったという。人類を、世界を、不幸に巻き込んでいる。しかし、アメリカ人はへこたれない。自分たちの欲望を戦争をすることによって満たそうとする構えを現在も維持している。

 嘘と暴力がアメリカの常套手段であり、いつも嘘と暴力を用いて相手から財産を略奪することを目的としている。また、それを繰り返しながら、一層強力な軍事力を整備し、一層相手の富を略奪しようとする。そうやって世界を支配しようとしてきた。



 私は芥川龍之介が好きだが、それ以上に夏目漱石を好んでいる。特に「吾輩は猫である」は若い頃の私にとってバイブルのようなものだったけれど、その中で八木独仙という登場人物に以下のように語らせている。

 「向こうに檜があるだろう。あれが目障りになるから取り払う。とその向こうの下宿屋がまた邪魔になる。下宿屋を退去させると、その次の家が癪に触る。どこまで行っても際限のない話さ。西洋人の遣り口はみんなこれさ。ナポレオンでも、アレキサンダーでも勝って満足したものは一人もないんだよ。・・・西洋の文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ。」

 「日本の文明は自分以外の状態を変化させて満足を求めるのじゃない。西洋と大いに違うところは、根本的に周囲の境遇は動かすべからざるものという一大仮定の下に発達しているのだ。」

 「山があって隣国へ行かれなければ、山を崩すという考えを起こす代わりに隣国へ行かんでも困らないという工夫をする。山を越さなくとも満足だという心持ちを養成するのだ。それだから君見たまえ。禅家でも儒家でもきっと根本的にこの問題をつらまえる。」

 夏目漱石がなぜ西洋と東洋の文明の違いに関心を持っていたかといえば、それは幕末以降の日本が欧米に脅かされ、常に旗色が悪かったからだ。それは150年前も現在も全く変わりがない。日本はいつも劣位に置かれ、属国扱いをされてきた。

 しかし、ついに現在、アメリカが不利な立場に置かれるようになってきた。BRICS等の台頭、特に中国とロシアの台頭がアメリカの世界覇権を脅かすようになった。アメリカは軍事力にしろ、経済力にしろ、これ以上の伸び代がない。BRICS等に肩を並べられ、今後優位に立てないどころか、将来的にはBRICS等の軍門に降る可能性すらある。


 まあ、自業自得だから、落ちぶれて大いに苦しむがいいのだけれど、問題は日本だ。右翼は日本が長い歴史を持った素晴らしい国であると自画自賛したがる。しかしその素晴らしい国が現在やっていることはといえば、落ちぶれゆくアメリカの腰巾着か提灯持ち程度のものでしかない。

 アメリカが衰退していく過程でいずれその支配力が弱まり、束の間の自由が日本に訪れるかもしれないけれど、そのようなときに日本は自国を明るく住みやすい国にできるだろうか。現在の日本を見ている限り、その可能性は低いように感じる。政治家や役人は平気で嘘を言い、賄賂が横行して利権が幅を利かせている。権力者や権力者と癒着した者が融通を効かせ合い、違法行為に及んでもツラッとしている。

 道徳的なことを問題にしているのではない。道徳が廃れてしまうと、国が発展するのは難しくなるものだ。アメリカを見ればよく分かる。



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