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裁判員制度は定着するか?

「毎日jp」から転載。
裁判員制度については、裁判の迅速化という面での効果はあったようだが、様々な面での裁判員の負担が大きすぎるのではないか、という感じがする。
なぜ、裁判を仕事としているわけでもない一般人が、関わった事件についての厳しい守秘義務を負わされるのか、疑問である。一般人を裁判に参加させた時点で、その裁判内容はもはやすべての秘密性を失ったと考えるのが当然ではないのか。つまり、もともと無理な制度なのだが、それを強引に実施し、今後も止める気はないようだ。
裁判員をやった一般人のほとんどが「いい体験だった」と言っているが、それはそうだろう。裁判という、普通の人間には一生縁の無いドラマを目の前で見られたのだから、面白い経験に決まっている。シドニー・ルメットの『十二人の怒れる男』や筒井康隆の『十二人の浮かれる男』、三谷幸喜の『十二人(十三人?)の優しい日本人』など、裁判ドラマは面白いものなのだから。しかし、被告の一生の運命を決める決定を、それが商売でもないのに、被告とはまったく無縁の普通の人間が下すというのはやはり理不尽である。まあ、米国の陪審員制度は、日本とは逆に、「お上など信じず、普通の人間同士が相談して物事を決めていく」という草の根民主主義の現われでもあるのだが、日本人にそれができるか、というと非常にこころもとない。
私に裁判員のお鉢が回ってきたら、私のような粗忽な人間では、「守秘義務」など守れませんと言って断りたいのだが、それは裁判員拒否の理由として成立するだろうか? 


(以下引用)



 ◆改正議論

 ◇部分修正の是非中心に
 裁判員法が定める「施行3年後の見直し」について、同法を所管する法務省は「3年間の実施状況を見て判断する」としており、本格的な改正論議は来年スタートする見通しだ。現在、有識者らで作る「裁判員制度に関する検討会」で課題の洗い出しが行われているが、大勢は「実施状況からみて抜本改正は必要ない」(同省幹部)。運用を担う最高裁も「制度は順調で大きな問題はない。今の段階で法改正の話は時期尚早」とみている。

 「致命的な不具合があり根本的な修正を要する点は、特に認められない」。3月1日にあった検討会の第5回会合で、制度設計にかかわった酒巻匡(ただし)・京都大大学院法学研究科教授は見解を示した。市民代表の立場から参加した主婦連合会の山根香織会長も「順調と思うが、良い見直しが図られ、より参加しやすい制度として定着することを期待する」と述べた。

 会合では「守秘義務が厳しすぎる」、「対象事件に覚せい剤密輸や性犯罪が含まれているのはどうか」などの意見も出たが、制度自体を否定する声はなかった。改正論議では「部分修正」の是非が中心になりそうだ。

 日本弁護士連合会は独自に「3年後検証小委員会」を設置しており、来春をめどに提言をまとめる。前田裕司委員長は「裁判員の熱意が制度を支える大きな力になっている」と評価した上で、修正については「特に守秘義務は緩和の方針を示したい」と語る。

 ◆分析

 ◇2月末現在、1899人に判決 全面無罪0.2%
 09年5月の制度開始から今年2月末までの裁判員裁判の実施状況を最高裁がまとめたところ、3225人が起訴され、1899人に判決が言い渡された。このうち1894人が有罪(このうち1人は一部無罪)で、全面無罪は0・2%の5人。有罪の1894人のうち、殺人罪などに問われた3人に死刑が選択された(今年3月、さらに2人に死刑判決)。一方、執行猶予とされた303人のうち173人(57・0%)に、保護司らの指導監督を受ける保護観察が付されたのが目を引く。

 判決を受けた1899人のうち、起訴内容を争ったのは660人(34・7%)。公判は平均約3・8回で、自白事件は同約3・5回、否認事件は同約4・4回。判決のための評議に費やした時間は平均505分だったが、否認事件になると同630分に増え、より慎重に議論されたとみられる。

 その結果、審理長期化の傾向も読み取れる。制度の設計段階では「対象事件の7割が初公判から判決まで3日以内で終わる」と想定されたが、実際に3日以内で終了したのは36・9%(701人)にとどまった。

 判決を不服として控訴した被告は31・8%(605人)。死刑判決を受けた5人は、いずれも弁護側が控訴した。

 1審で全面無罪となった5人の罪名は、覚せい剤取締法違反が3人、強盗殺人罪が1人、殺人罪が1人。このうち3人は検察側が控訴し、1審での無罪確定は覚せい剤取締法違反と殺人罪のそれぞれ1人だった。

 ◇裁判員8673人選出 「よい経験」95%
 昨年1年間で裁判員に選ばれたのは8673人。最高裁が実施したアンケートによると、63・1%が審理内容を「理解しやすかった」と回答し、判決のための評議では71・4%が「十分議論できた」と振り返った。

 裁判員に選ばれる前は「やりたくなかった」と「あまりやりたくなかった」を合わせて53・5%と過半数だったが、参加後の感想は「非常によい経験」と「よい経験」を合わせると95・2%。いずれも1年目とほぼ同じ数値で、重大で複雑な事件が増えた2年目も、刑事法廷を経験した裁判員の多くが制度を前向きにとらえたといえそうだ。

 ◆守秘義務

 ◇記者会見実態調査 「行き過ぎ介入」…地裁間で基準あいまい
 弁護士や法律学者らでつくる社団法人「自由人権協会」は、裁判員裁判の判決後に地裁職員が立ち会って開く裁判員らの記者会見の実態調査を行い、その報告書を先月公表した。最高裁などに情報公開請求して入手した資料などを基に計672件の会見の様子を分析。このうち45件について「記者と裁判員の質疑応答に、地裁職員が広い範囲で行き過ぎた介入をしている」などと改善を求めた。

 地裁職員の会見立ち会いは、裁判員が評議の内容など守秘義務に触れる発言をしないようにするのが主な目的だ。だが、同協会の報告書は、過度の介入に加え「守秘義務違反の基準があいまいで、各地裁で運用も統一されていない」と疑問を投げかけた。

 「行き過ぎ介入」の例として、大分では「感情移入せず冷静さを保たないと正しい判断はできないと思った」という裁判員の発言が評議内容に触れるとされた。また、「判決は妥当」との発言が名古屋では「感想」とされたが、岡山では「判決の論評にあたり守秘義務違反」になった。広島では「死刑の可能性も考えたが、事実を積み上げて冷静な答えが出せたと思う」との発言が守秘義務違反の恐れがあるとして、地裁側が報道自粛を求めた。記者の質問中に「守秘義務違反を誘発する」と、制止されたケースも複数あった。

 報告書はこうした発言規制の見直しを求めるとともに「(地裁ごとの)ばらつきは、あいまいな法規定に原因がある。守秘義務の範囲を限定したり、罰則規定をなくすことも検討することが望ましい」と指摘している。

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