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行政権と民主主義

國分功一郎という人のブログから転載。
私は概して、物事を根本から考えることが好きである。それが「常識を疑う」「権威を疑う」という私の根本姿勢にもつながっていると思う。
哲学者という人種が、その「物事を根本から考える」ことの専門家なのだろうが、私は「権威」を信じない人間なので、哲学者の著書や発言とは無縁である。むしろ、マドモワゼル愛さんや「In Deep」の岡さんなどのブログに哲学を感じる。あるいは、夏目漱石の「吾輩は猫である」などは、私から見れば「哲学小説」である。
というわけで、私は現代の専門哲学者という人種をほとんど信じていないし、尊敬もしていないのだが、下記記事の筆者の國分功一郎は哲学的姿勢で政治(現実問題)の根本を考える姿勢があり、注目している人物の一人だ。
下記記事は「民主主義の根本を考える」趣旨の一文の後半である。前半も面白いが、省略した。ここでは、

「民主主義というと我々は立法の部分だけを考えがちだが、なぜ行政の部分が民主的であるのかどうかを問題にしないのか」

という、言われればあっと思う発言がある。
要するに、日本も他の国も同じだろうが、民主主義国家とされている国がやがて官僚支配になっていくのは、「行政における民主主義的手続きの欠如」から来ているわけだ。まして日本のように行政府提出立法という不可思議なものが存在すれば、国会が行政府に乗っ取られるのは理の当然だ。行政府とは、すなわち高級官僚の王国であり、そこには国民の手は及ばない。
我々の問題は、実は国政選挙でどの党を選ぶかではない。行政官僚の一つ一つの行為をいかにして明るみに出し、コントロールできるようにするか、ということである。

*私は「内閣」という言葉よりは「行政府」という言葉が事実に即していると思う。「内閣」という言葉には「国会によって組織された行政機関」というイメージがあるが、実際はその逆で、「行政機関が国会を支配している」のは多くの人の知るところだ。つまり、「事務員が経営陣を陰で支配する会社」のようなものだ。


(以下引用)


「政治的決定の正統性」が問題にされるとき、実際に念頭に置かれているのは立法権のことである。特にルソーがその代表であろうが、近代の政治哲学は、神や君主によって基礎づけられて立法の根拠をどうやって民衆に見出すかに腐心してきた。とはいえ、多と一を結びつけるという政治の課題は全く変わっていないので、結局は「神」や「君主」が「民衆」に取って代わったに過ぎない。にもかかわらず、民衆は自分たちにこそ主権があると教えられているから、現実との矛盾に不満をもつ。この不満をどうにか解消しようと政治哲学等々が頑張る。今だと「熟議」なるものが注目されている。
 こうして議論が盛んになっている際に忘れられていることがある。それは我々にとってもっとも身近な権力、行政権のことである。具体的に考えてみて欲しい。道路を作る。保育園を作る。原発を作る。すべて行政が行うことである。行政は我々の生活に直結している。にもかかわらず、我々が「民主主義」と言う時に念頭に置くのはいつも議会のことなのだ。


 実は立法権の領域と行政権の領域を厳密に区別するのは難しい。行政は立法を超えて作用することがあり得る。行政の行いが憲法に違反しているのではないかとする訴訟があり得るのはそのためである。にもかかわらず、立法権の正統性ばかりに気を取られていた政治哲学は、行政をどう民主主義的に運営するかについてほとんど論じてきていない。民主主義と言う場合、議論されるのはいつも議会、立法権のことなのだ。


 立法権における民主主義の実現はあまりに難題である。確かに難題こそ考えるべきだが、難題に労力を割きすぎるとその脇にある問題に目がいかなくなる。実際、行政権の民主主義的運営という問題は置き去りにされてきた。ならば、難題への挑戦をすこし中断して、行政権に民衆が参加できる仕組みを考えたらどうだろうか?


 いまはそうした仕組みがなさ過ぎる。たとえば我々には役所の行いを公的に規制する権限が与えられていない。住民投票には法的拘束力はないし、パブリック・コメントは無意味。それこそ立候補して行政の長になるしかない。これのどこか「民主主義」であろうか?


 我々は立法権のことを考えすぎるあまり、行政権についての思考を置き去りにしてきた。ここに新しく民主主義を作り上げていくヒントがあると私は考えている。

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