カダフィ殺害によるリビア動乱終結に関連して、「ちきゅう座」から浅川修史という人の記事を転載する。
リビアに対するアメリカの姿勢(動乱終結後の利権獲得の意思)を教えるという点では有益な記事だが、筆者自身の意見は、聞くに値しないと思う。アフリカ諸国の中で、リビアはかつてのイラクと並んで、もっとも「善政」を敷いていたことは明らかであり、その平和な国が欧米によって転覆されたという事実の前には、どんな屁理屈も無意味だろう。リビアがテロ組織を支援していたなど、欧米の口上でしかないし、世界のテロ組織のほとんどは欧米政府の下部組織でしかないことは、もはや常識ではないか。
(以下引用)
クリントン国務長官、リビアを電撃訪問 リビアは再度「欧米の植民地」になるという意見も
2011年 10月 19日時代をみる リビア植民地浅川 修史
<浅川 修史(あさかわしゅうし):在野研究者>
クリントン国務長官は、10月18日、リビアの首都トリポリを電撃訪問した。国民評議会のジャヒール議長らと会談した。席上、クリントン国務長官は1100万ドルの新規援助を約束した。逃亡中のカダフィ大佐について、「米国はカダフィ大佐が近々、拘束されるか殺害されることを望む」と踏み込んだ発言をした。
以下は、中東・エネルギー・フォーラム リビア情勢の記事である。
この記事の後、筆者の蛇足を付け加える。
中東・エネルギー・フォーラム リビア情勢より引用
リビアを訪問し新規援助を約束したクリントン米国務長官(10月18日時点)
<電撃訪問で新規援助1100万ドルを約束したクリントン米国務長官>
クリントン米国務長官は、2011年10月18日、地中海のマルタから対空ミサイル防護装備を備えた軍用機でリビアの首都トリポリを電撃訪問し、5時間という短い滞在中に国民評議会のジャリール議長、ジブリール暫定首相ほかと会談のうえ新規援助1100万ドルを供与することを明らかにした。
米国の新規援助は、携帯式地対空ミサイルをはじめとするカダフィ政権の保有していた武器類の回収や内戦での負傷者向けの医療支援、米国への留学を含む教育計画の再開、遺跡事業への資金供与などで構成される。今回の新規援助によりリビアで2月に反政府デモが起こって以降の米国の支援額は合計1億3500万ドルとなる。
トリポリ滞在中のクリントン米国務長官の主な発言をまとめれば凡そ次のようになる。
① 解放されたリビアの地に立つことを誇りに思う。米国は貴方たちの戦いにおいて貴方たちの側についたことを誇りに思うし、貴方たちがこの道を歩き続ける限り米国は貴方たちの側に立つ。
② 困難な部分が今、始まった。現在最も重要なのはカダフィ大佐とカダフィ政権が新生リビアを邪魔しない様にすることである。カダフィ大佐が問題を引き起こさぬよう、米国は出来る全ての事を行いたい。
③ 米国はカダフィ大佐が近々、拘束されるか殺害されることを望む。そうなれば、カダフィ大佐を恐れる必要がなくなるからだ。(編集部注:これまで米国は慎重姿勢を保ち、カダフィ大佐が殺害されるとの言い回しは避けていた。それだけに、この発言は注目される)。
④ 戦闘は終了していないが、NATOは市民への脅威が続く限り保護を継続する。
⑤ 米国はリビアを統一するために必要な行程を取るとの国民評議会の約束に勇気づけられた。
⑥ 全ての戦闘集団の全てが新政府に加わらねばならない。
今回クリントン米国務長官が支援を約束した新規援助の中で、米国が最も力を入れているのがカダフィ政権時代の武器類、なかでも携帯式地対空ミサイルの回収である。米国務省は既に14人の武器専門家をリビアに派遣すると共に、他国にも協力を求めている。
(10月19日、記)
(筆者の蛇足)
「リビアは欧州(連合王国、フランス、イタリア中心)の問題」と位置付けていた米国が、政治的にも前面に出た。
リビア政変は、チュニジア、エジプトで起きた「アラブの春」が引き金になったが、カダフィ大佐の反撃で反政府側は窮地に陥った。NATO軍の介入がなければ、反政府側は壊滅していた。
NATO軍はカダフィ政権側の空軍力を壊滅させたうえ、反政府側に航空支援を行った。資金や武器も提供した。
カダフィ政権に理解を示す立場をとれば、「人道支援を旗印に、連合王国、フランス、イタリアがNATOの枠組みを使って、カダフィ政権を倒した」と解釈できるだろう。
今後は、米国と欧州3国が中心となり、リビアの混乱を収束させて、新生リビア創設に動く。リビアは軽質成分が多い良質の原油を産出する。欧米の技術が入れば復興も早い。欧米がリビアの原油・ガス利権の取得に動くことは容易に予想される。
気の早い識者は、「将来リビアがUAEなど湾岸諸国のような発展をする」と見る。湾岸諸国の発展は連合王国がコンサルタントを送り込み、法律などのインフラを整えたことが寄与している。リビアも同様かと思われる。
一方で、欧米の植民地主義から離脱し、反植民主義の一つの旗頭だったリビアが再度「欧米の植民地」になることに憤りを持つ人々がいることは理解できる。
ただ、カダフィ大佐は、産油国とはいえ、人口が少なく、周囲への文化的影響力も小さいリビアに過大な負担をかけた。西(トリポリタニア)と東(キレイナイカ)の対立や部族による割拠という問題を解決できなかった。
反植民地主義を掲げたということだけで、カダフィ政権に感情移入することは筆者にはできない。
サハラ・アフリカへの影響力拡大や、IRAから南アフリカまで世界のいわゆる「テロ組織」への支援など手を広げ過ぎた。国民は不満を持った。その間隙を欧米に突かれた。
湾岸諸国にように石油収入をより多く国民に分配するという「レンティア国家」の政策を採用すれば、事態は異なったかもしれない。
(終わり)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1669:111019〕
リビアに対するアメリカの姿勢(動乱終結後の利権獲得の意思)を教えるという点では有益な記事だが、筆者自身の意見は、聞くに値しないと思う。アフリカ諸国の中で、リビアはかつてのイラクと並んで、もっとも「善政」を敷いていたことは明らかであり、その平和な国が欧米によって転覆されたという事実の前には、どんな屁理屈も無意味だろう。リビアがテロ組織を支援していたなど、欧米の口上でしかないし、世界のテロ組織のほとんどは欧米政府の下部組織でしかないことは、もはや常識ではないか。
(以下引用)
クリントン国務長官、リビアを電撃訪問 リビアは再度「欧米の植民地」になるという意見も
2011年 10月 19日時代をみる リビア植民地浅川 修史
<浅川 修史(あさかわしゅうし):在野研究者>
クリントン国務長官は、10月18日、リビアの首都トリポリを電撃訪問した。国民評議会のジャヒール議長らと会談した。席上、クリントン国務長官は1100万ドルの新規援助を約束した。逃亡中のカダフィ大佐について、「米国はカダフィ大佐が近々、拘束されるか殺害されることを望む」と踏み込んだ発言をした。
以下は、中東・エネルギー・フォーラム リビア情勢の記事である。
この記事の後、筆者の蛇足を付け加える。
中東・エネルギー・フォーラム リビア情勢より引用
リビアを訪問し新規援助を約束したクリントン米国務長官(10月18日時点)
<電撃訪問で新規援助1100万ドルを約束したクリントン米国務長官>
クリントン米国務長官は、2011年10月18日、地中海のマルタから対空ミサイル防護装備を備えた軍用機でリビアの首都トリポリを電撃訪問し、5時間という短い滞在中に国民評議会のジャリール議長、ジブリール暫定首相ほかと会談のうえ新規援助1100万ドルを供与することを明らかにした。
米国の新規援助は、携帯式地対空ミサイルをはじめとするカダフィ政権の保有していた武器類の回収や内戦での負傷者向けの医療支援、米国への留学を含む教育計画の再開、遺跡事業への資金供与などで構成される。今回の新規援助によりリビアで2月に反政府デモが起こって以降の米国の支援額は合計1億3500万ドルとなる。
トリポリ滞在中のクリントン米国務長官の主な発言をまとめれば凡そ次のようになる。
① 解放されたリビアの地に立つことを誇りに思う。米国は貴方たちの戦いにおいて貴方たちの側についたことを誇りに思うし、貴方たちがこの道を歩き続ける限り米国は貴方たちの側に立つ。
② 困難な部分が今、始まった。現在最も重要なのはカダフィ大佐とカダフィ政権が新生リビアを邪魔しない様にすることである。カダフィ大佐が問題を引き起こさぬよう、米国は出来る全ての事を行いたい。
③ 米国はカダフィ大佐が近々、拘束されるか殺害されることを望む。そうなれば、カダフィ大佐を恐れる必要がなくなるからだ。(編集部注:これまで米国は慎重姿勢を保ち、カダフィ大佐が殺害されるとの言い回しは避けていた。それだけに、この発言は注目される)。
④ 戦闘は終了していないが、NATOは市民への脅威が続く限り保護を継続する。
⑤ 米国はリビアを統一するために必要な行程を取るとの国民評議会の約束に勇気づけられた。
⑥ 全ての戦闘集団の全てが新政府に加わらねばならない。
今回クリントン米国務長官が支援を約束した新規援助の中で、米国が最も力を入れているのがカダフィ政権時代の武器類、なかでも携帯式地対空ミサイルの回収である。米国務省は既に14人の武器専門家をリビアに派遣すると共に、他国にも協力を求めている。
(10月19日、記)
(筆者の蛇足)
「リビアは欧州(連合王国、フランス、イタリア中心)の問題」と位置付けていた米国が、政治的にも前面に出た。
リビア政変は、チュニジア、エジプトで起きた「アラブの春」が引き金になったが、カダフィ大佐の反撃で反政府側は窮地に陥った。NATO軍の介入がなければ、反政府側は壊滅していた。
NATO軍はカダフィ政権側の空軍力を壊滅させたうえ、反政府側に航空支援を行った。資金や武器も提供した。
カダフィ政権に理解を示す立場をとれば、「人道支援を旗印に、連合王国、フランス、イタリアがNATOの枠組みを使って、カダフィ政権を倒した」と解釈できるだろう。
今後は、米国と欧州3国が中心となり、リビアの混乱を収束させて、新生リビア創設に動く。リビアは軽質成分が多い良質の原油を産出する。欧米の技術が入れば復興も早い。欧米がリビアの原油・ガス利権の取得に動くことは容易に予想される。
気の早い識者は、「将来リビアがUAEなど湾岸諸国のような発展をする」と見る。湾岸諸国の発展は連合王国がコンサルタントを送り込み、法律などのインフラを整えたことが寄与している。リビアも同様かと思われる。
一方で、欧米の植民地主義から離脱し、反植民主義の一つの旗頭だったリビアが再度「欧米の植民地」になることに憤りを持つ人々がいることは理解できる。
ただ、カダフィ大佐は、産油国とはいえ、人口が少なく、周囲への文化的影響力も小さいリビアに過大な負担をかけた。西(トリポリタニア)と東(キレイナイカ)の対立や部族による割拠という問題を解決できなかった。
反植民地主義を掲げたということだけで、カダフィ政権に感情移入することは筆者にはできない。
サハラ・アフリカへの影響力拡大や、IRAから南アフリカまで世界のいわゆる「テロ組織」への支援など手を広げ過ぎた。国民は不満を持った。その間隙を欧米に突かれた。
湾岸諸国にように石油収入をより多く国民に分配するという「レンティア国家」の政策を採用すれば、事態は異なったかもしれない。
(終わり)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1669:111019〕
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