「ギャラリー酔いどれ」から転載。
消費税は「生きていることに対する税」だという表現は面白い。いや、面白がっている場合ではなく、政府に対して怒りの声を上げねばならないのだが、「まあ8%くらいいいや」とつい思ってしまうのが「テーゲー主義」の沖縄生まれの私の体質か、それとも「長いものには巻かれろ」という日本人の体質か。
実際には「8%」というのは大きな数字なのだが、数字が一桁台だとたいしたことがないように感じてしまうのがズボラでおおまかな人間の性質なのだろう。買い物などをしていても、予想した金額よりかなり多い金額がレジの画面に出てきて驚くのが常だ。
これがいきなり「10%」だったら、今頃革命が起きていたのではないか。そう考えると、財務省はなかなか知恵があったと言うべきだろう。もちろん、悪知恵である。
(以下引用)
◆http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155168
日刊ゲンダイ 2014年11月25日
◎ 税制の“大御所”富岡幸雄氏 「消費税は不義の子、廃止に」
☆過去の政権は「国民だまし討ち」の連続だ
安倍政権は消費税10%を17年4月まで先送りする。
それを御旗にして衆院を解散、総選挙に挑むわけだが、
「先送り」で国民が拍手喝采すると思っているところがふざけている。
貧乏人をますます苦しめる消費税は、「延期」ではなく「廃止」が当然なのである。
1989年の消費税導入時から「反対」を貫いてきた税制の大御所は、
「消費税こそがあらゆる諸悪の根源」とバッサリだ。
――今回は景気が良くないから増税先送りということになりました。
いつの間にか、消費税の議論が
景気の議論にすり替わっているような印象を受けます。
その通りですよ。 景気いいから消費税を上げていい、悪ければ上げない。
そういうことではないんです。
議論する本質は、「そもそも、税とは何か」 「どうあるべきか」でしょう。
税法学者は何をやっているんだろうね。
税は社会、政治、経済、あらゆるものに絡んでくる。
税とは国家のバックボーン(背骨)なんですよ。 社会の公正さの鏡といってもいい。
税は公正でフェアでなければならない。
そうでなければ、社会が、国家が歪められてしまう。
――消費税はそうではない?
だから、問題なんですよ。 あってはならない税制。 許されない税制なんですよ。
――それは逆進性があるからですか?
それもありますが、その前に、消費税は人間が生きていることにかかる税金なんですよ。
人は生存するためにパンを買う。ものを買わなければ生きていけない。
消費税はそこにかかってくる。
100円のパンを買わなければ、生きていけないのに、108円かかる。
この8円ってなんですか?
――払えない人間は生きていけない。 死ねっていうような税金ですね?
そうです。 逃れられない税金なんですよ。 それも貧しい人ほど、負担率が割高になる。
税というものには、応分負担の原則があるんです。
強い人、体力がある人が大きい荷物を持つ。 そうでない人は軽い荷物にしてもらう。
もっと体力がない人は持たなくてもいい。
困っている人の荷物は持ってあげる。 それが社会の仕組みであり、税の基本なんです。
それを消費税は踏みにじってしまう。
だから、25年前に消費税が導入される時も、私は体を張って反対したんです。
■消費税が上がって もらえる年金が増えましたか?
――衆院予算委員会の公聴会で、
〈消費税は低所得者に過酷な税制であり、高所得者への減税である〉
〈こんな税制を導入すれば、内需の停滞、物価の上昇を招く〉と述べられている。
〈税の公正と正義を取り戻せ〉と主張されていましたね。
危惧は当たってしまいました。
消費税が導入された1989年の大納会で株価は3万8915円という最高値を付けました。
その後、下がる一方じゃないですか。
失われた20年、経済暗黒の時代が続いている。
非正規雇用が拡大し、若者は目の輝きを失っている。 社会が公正さと活力を失ったからですよ。
消費税という税制の歪みだけが原因ではありませんが、
消費税導入、引き上げの歴史を見てください。 政治家による国民だましの連続ですよ。
中曽根さんは売上税はやらないといって、同日選をやって、大勝した。
その後、売上税を言い出したため、退陣した。
後を継いだ竹下内閣は、中曽根さんがだまし討ち選挙で得た数で消費税法案を通したのです。
今年8%に上げましたね。 社会保障と一体改革ということでしたよね。
消費税を上げなければ、社会保障が崩壊するような言い方をした。
まさしく脅迫ですよ。
それで消費税が上がって、もらえる年金が増えたんですか。
医療費の自己負担が減ったんですか。 全部逆じゃないですか。
消費税というのは、こうして国民をだましてきたんです。
私に言わせれば不義の子です。
10%への引き上げを延期すればいいってもんじゃなくて、
中止、廃止にしなければいけません。
☆安倍首相が言う「トリクルダウン」は起こらない
――増税分が社会保障にも回らず、財政再建にも寄与していない。
なぜ、こういうことが起こるんでしょうか?
法人税減税に回っているからですよ。
――安倍政権は法人税の減税を明言していますね。
そうしないとグローバル競争に勝ち残れないという 財界の要望を受けて。
今回が初めてではないんです。
消費税は1989年に3%で導入されて、97年に5%、2014年に8%になりました。
法人税は84年に43.3%でしたが、消費税導入時の89年に40.0%になり、
90年には37.5%、98年に34.5%、99年には30.0%になり、
2012年には25.5%まで引き下げられました。
さらに来年以降、現在38.01%の法定正味税率(法人税、法人住民税、法人事業税の合計)
を20%台にするというのですから、さらにどんどん下がっていく。
その結果、法人3税の税収は最高であった1989年の29.8兆円から現在は
17.6兆円まで下がっている。
89年からの累計では255兆円が減収です。
この間の消費税の税収は合計282兆円なのです。
――消費税分がごっそり、法人減税の穴埋めに回っていることになりますね。
しかも、生きている限り逃げられない消費税と違って、
法人税は さまざまな税逃れの手法や 租税特別措置による政策減税の恩恵がある。
グローバル企業であればあるほど、税金が安い国や
タックスヘイブンの国に本社を移してしまうから、日本で法人税を払わない。
ここにこそ、日本の税制の歪みと欠陥がある。
消費税を上げるくらいならば、まず、法人税を改めるべきです。
20%でいい。 大儲けしている大企業がちゃんと税金を払ってくれれば、
消費税なんか要らないのです。
■消費増税を法人税減税に回す日本には希望がない
――先生の近著、「税金を払わない巨大企業」には衝撃の事実が書かれていますね。
企業利益に対する法人税納税額=実効税負担率をはじいていますが、
1位の三井住友フィナンシャルグループは1479億8500万円の利益に対して
納税額は300万円でたった0.002%、
2位のソフトバンクは788億8500万円に対し、
500万円でこちらは0.006%。
怒りが込み上げてきますね。
トーマス・ピケッティという学者が
「Capital in the 21st century(21世紀の資本)」
という本を書いています。
世界で大きな評判になっていますから、もうすぐ邦訳が出るでしょう。
2世紀にわたる世界20カ国のデータを分析し、
資本主義が発展しても富を分かち合えない、と結論づけています。
資本主義は放っておくと、どんどん格差が拡大するのです。
富める者はどんどん投資を拡大して、巨大化する。
つまり、安倍首相が言うようなトリクルダウンは起こらないんですよ。
彼は格差を是正するためには所得や資本にかける累進課税がベストだと言っています。
――ということは消費税を拡大させて、法人減税に回している日本はどうなっちゃうんですか?
だから、希望がない国になってしまったんです。 すべては消費税のせいですよ。
諸悪の根源は消費税です。 文明国家であってはならないことをやっているわけですよ。
――財務省はEUでも付加価値税が主流だといいますよね。
なんで悪いところをマネするの?
――増税しないと、財政危機懸念が高まり、国債の金利が跳ね上がるとも?
嘘ですよ。 米国だって、日本の消費税には反対しているんですよ。
輸出企業には消費税還付金があるからです。
米国には消費税がないのはなぜだかわかりますか? 不公平だからですよ。
嘘ばっかり書いている新聞にだまされてはいけません。
▽とみおか・ゆきお 1925年3月20日、山梨県生まれ。
中央大学名誉教授。国税庁を経て中大商学部助教授から教授へ。
政府税制調査会特別委員など歴任。
「税金を払わない巨大企業」(文春新書)が大きな話題に。
消費税は「生きていることに対する税」だという表現は面白い。いや、面白がっている場合ではなく、政府に対して怒りの声を上げねばならないのだが、「まあ8%くらいいいや」とつい思ってしまうのが「テーゲー主義」の沖縄生まれの私の体質か、それとも「長いものには巻かれろ」という日本人の体質か。
実際には「8%」というのは大きな数字なのだが、数字が一桁台だとたいしたことがないように感じてしまうのがズボラでおおまかな人間の性質なのだろう。買い物などをしていても、予想した金額よりかなり多い金額がレジの画面に出てきて驚くのが常だ。
これがいきなり「10%」だったら、今頃革命が起きていたのではないか。そう考えると、財務省はなかなか知恵があったと言うべきだろう。もちろん、悪知恵である。
(以下引用)
◆http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155168
日刊ゲンダイ 2014年11月25日
◎ 税制の“大御所”富岡幸雄氏 「消費税は不義の子、廃止に」
☆過去の政権は「国民だまし討ち」の連続だ
安倍政権は消費税10%を17年4月まで先送りする。
それを御旗にして衆院を解散、総選挙に挑むわけだが、
「先送り」で国民が拍手喝采すると思っているところがふざけている。
貧乏人をますます苦しめる消費税は、「延期」ではなく「廃止」が当然なのである。
1989年の消費税導入時から「反対」を貫いてきた税制の大御所は、
「消費税こそがあらゆる諸悪の根源」とバッサリだ。
――今回は景気が良くないから増税先送りということになりました。
いつの間にか、消費税の議論が
景気の議論にすり替わっているような印象を受けます。
その通りですよ。 景気いいから消費税を上げていい、悪ければ上げない。
そういうことではないんです。
議論する本質は、「そもそも、税とは何か」 「どうあるべきか」でしょう。
税法学者は何をやっているんだろうね。
税は社会、政治、経済、あらゆるものに絡んでくる。
税とは国家のバックボーン(背骨)なんですよ。 社会の公正さの鏡といってもいい。
税は公正でフェアでなければならない。
そうでなければ、社会が、国家が歪められてしまう。
――消費税はそうではない?
だから、問題なんですよ。 あってはならない税制。 許されない税制なんですよ。
――それは逆進性があるからですか?
それもありますが、その前に、消費税は人間が生きていることにかかる税金なんですよ。
人は生存するためにパンを買う。ものを買わなければ生きていけない。
消費税はそこにかかってくる。
100円のパンを買わなければ、生きていけないのに、108円かかる。
この8円ってなんですか?
――払えない人間は生きていけない。 死ねっていうような税金ですね?
そうです。 逃れられない税金なんですよ。 それも貧しい人ほど、負担率が割高になる。
税というものには、応分負担の原則があるんです。
強い人、体力がある人が大きい荷物を持つ。 そうでない人は軽い荷物にしてもらう。
もっと体力がない人は持たなくてもいい。
困っている人の荷物は持ってあげる。 それが社会の仕組みであり、税の基本なんです。
それを消費税は踏みにじってしまう。
だから、25年前に消費税が導入される時も、私は体を張って反対したんです。
■消費税が上がって もらえる年金が増えましたか?
――衆院予算委員会の公聴会で、
〈消費税は低所得者に過酷な税制であり、高所得者への減税である〉
〈こんな税制を導入すれば、内需の停滞、物価の上昇を招く〉と述べられている。
〈税の公正と正義を取り戻せ〉と主張されていましたね。
危惧は当たってしまいました。
消費税が導入された1989年の大納会で株価は3万8915円という最高値を付けました。
その後、下がる一方じゃないですか。
失われた20年、経済暗黒の時代が続いている。
非正規雇用が拡大し、若者は目の輝きを失っている。 社会が公正さと活力を失ったからですよ。
消費税という税制の歪みだけが原因ではありませんが、
消費税導入、引き上げの歴史を見てください。 政治家による国民だましの連続ですよ。
中曽根さんは売上税はやらないといって、同日選をやって、大勝した。
その後、売上税を言い出したため、退陣した。
後を継いだ竹下内閣は、中曽根さんがだまし討ち選挙で得た数で消費税法案を通したのです。
今年8%に上げましたね。 社会保障と一体改革ということでしたよね。
消費税を上げなければ、社会保障が崩壊するような言い方をした。
まさしく脅迫ですよ。
それで消費税が上がって、もらえる年金が増えたんですか。
医療費の自己負担が減ったんですか。 全部逆じゃないですか。
消費税というのは、こうして国民をだましてきたんです。
私に言わせれば不義の子です。
10%への引き上げを延期すればいいってもんじゃなくて、
中止、廃止にしなければいけません。
☆安倍首相が言う「トリクルダウン」は起こらない
――増税分が社会保障にも回らず、財政再建にも寄与していない。
なぜ、こういうことが起こるんでしょうか?
法人税減税に回っているからですよ。
――安倍政権は法人税の減税を明言していますね。
そうしないとグローバル競争に勝ち残れないという 財界の要望を受けて。
今回が初めてではないんです。
消費税は1989年に3%で導入されて、97年に5%、2014年に8%になりました。
法人税は84年に43.3%でしたが、消費税導入時の89年に40.0%になり、
90年には37.5%、98年に34.5%、99年には30.0%になり、
2012年には25.5%まで引き下げられました。
さらに来年以降、現在38.01%の法定正味税率(法人税、法人住民税、法人事業税の合計)
を20%台にするというのですから、さらにどんどん下がっていく。
その結果、法人3税の税収は最高であった1989年の29.8兆円から現在は
17.6兆円まで下がっている。
89年からの累計では255兆円が減収です。
この間の消費税の税収は合計282兆円なのです。
――消費税分がごっそり、法人減税の穴埋めに回っていることになりますね。
しかも、生きている限り逃げられない消費税と違って、
法人税は さまざまな税逃れの手法や 租税特別措置による政策減税の恩恵がある。
グローバル企業であればあるほど、税金が安い国や
タックスヘイブンの国に本社を移してしまうから、日本で法人税を払わない。
ここにこそ、日本の税制の歪みと欠陥がある。
消費税を上げるくらいならば、まず、法人税を改めるべきです。
20%でいい。 大儲けしている大企業がちゃんと税金を払ってくれれば、
消費税なんか要らないのです。
■消費増税を法人税減税に回す日本には希望がない
――先生の近著、「税金を払わない巨大企業」には衝撃の事実が書かれていますね。
企業利益に対する法人税納税額=実効税負担率をはじいていますが、
1位の三井住友フィナンシャルグループは1479億8500万円の利益に対して
納税額は300万円でたった0.002%、
2位のソフトバンクは788億8500万円に対し、
500万円でこちらは0.006%。
怒りが込み上げてきますね。
トーマス・ピケッティという学者が
「Capital in the 21st century(21世紀の資本)」
という本を書いています。
世界で大きな評判になっていますから、もうすぐ邦訳が出るでしょう。
2世紀にわたる世界20カ国のデータを分析し、
資本主義が発展しても富を分かち合えない、と結論づけています。
資本主義は放っておくと、どんどん格差が拡大するのです。
富める者はどんどん投資を拡大して、巨大化する。
つまり、安倍首相が言うようなトリクルダウンは起こらないんですよ。
彼は格差を是正するためには所得や資本にかける累進課税がベストだと言っています。
――ということは消費税を拡大させて、法人減税に回している日本はどうなっちゃうんですか?
だから、希望がない国になってしまったんです。 すべては消費税のせいですよ。
諸悪の根源は消費税です。 文明国家であってはならないことをやっているわけですよ。
――財務省はEUでも付加価値税が主流だといいますよね。
なんで悪いところをマネするの?
――増税しないと、財政危機懸念が高まり、国債の金利が跳ね上がるとも?
嘘ですよ。 米国だって、日本の消費税には反対しているんですよ。
輸出企業には消費税還付金があるからです。
米国には消費税がないのはなぜだかわかりますか? 不公平だからですよ。
嘘ばっかり書いている新聞にだまされてはいけません。
▽とみおか・ゆきお 1925年3月20日、山梨県生まれ。
中央大学名誉教授。国税庁を経て中大商学部助教授から教授へ。
政府税制調査会特別委員など歴任。
「税金を払わない巨大企業」(文春新書)が大きな話題に。
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