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地方主権社会?

「本音言いまっせー!」というブログから転載。「孫埼亨の視点」とあるから、孫埼亨の文章を紹介したものだろう。
私は実は孫埼亨をそれほど高くは評価していない。彼のベストセラー「戦後史の正体」(だったか?)の内容は、ネット世界では常識にすぎないものであり、それを政治の世界では或る程度の地位のある知識人が一般人に向けて書いたところに意義があったということだ。この書があれほど大きな驚きで世間に迎えられたことの方が、ネット知識人にはむしろ驚きだろう。参考までに、私がネットに最初に触れた頃に感銘を受けた、或る人物による「日本戦後史略史」的な文章をこの記事に続けて転載する。(多分、明日になる。うまく転載できるようなら、彼の文章をシリーズで紹介していきたい。)その文章は今から10年以上も前のものだが、孫埼の「戦後史の正体」と比べて少しも見劣りするものではなく、むしろ短い文章の中に日本戦後史の正体を明瞭に描き出した名文章であると思う。筆者は白石隆というが、同名の政治学者ではなく、山口県に住む市井の中小企業経営者のようである。

さて、私が孫埼亨を評価するのは、彼がいわば「日本属国論」を堂々と出版したという点にある。これが副島あたりなら、「際物著作家」「自称政治学者」の書いたもの、ということでまったく注目されないだろうが(私は副島の功績は認めている。ここに書いたのは副島への「世間の評価」を私が推測したものだ。)、まがりなりにも実際の政治の世界に身を置いた者が書いたという点で孫埼の書は世間を瞠目させたのである。(「瞠目」程度の熟語がワードでは出てこない! これでは日本人の漢字知識は劣化する一方だろう。)
その意味で孫埼の功績は大きいが、彼の知識や分析力自体はべつに高いものではない、と私は見ているわけだ。
前置きが長くなったが、私が下の文章を転載したのは


「小さな中央政府・国会と、大きな権限をもった効率的な地方政府による「地方分権・地域主権国家」が実現し、

技術創造型のベンチャー企業をはじめ「ものづくりの知恵」を蓄えた中小企業経営者や自立的農業者、それにNPOや協同組合などの市民セクターが生き生きと活動する「共生型・資源循環型の市場経済」が発展して、持続可能な成長とそのもとでの安定した雇用が可能になっているだろう。」

という部分に非常に引っ掛かるものを感じたからだ。
「地方分権」「地域主権社会」というものは、はたしてそのような天国になるのだろうか。いったいこのような楽観的な予測が可能な、どんな根拠があるというのだろうか。
孫埼の主張は、見方を変えれば「国家主権喪失」肯定論、「グローバル社会」肯定論ではないだろうか。地域主権とは何か。はたしてそれは国家主権の喪失を補うだけの機能を持ちうるだろうか。それとも、単に新自由主義的グローバリズムの下部組織にしかならないという可能性は無いのか。私はむしろ後者である可能性が高いと思う。
確かに官僚支配国家の腐敗は極度に達している。だが、それは中央集権国家であるからだろうか。地方主権国家になれば官僚支配が無くなるというどんな根拠があるのか。
何か新しい国家システムを提示するなら、単なるお題目ではなく、具体的な見取り図と思想基盤を提示するべきだろう。それがなければ、「現政権(独裁者etc)を倒せば地上の天国が来る」と信じて人形使いに操られる未開国の国民と同じことである。
もちろん、下の文章に続けて、「地方主権国家」の詳細な内容や理論的根拠が書かれているのかもしれないので、これはただの疑惑を述べただけである。まあ、私は幾つかの会社で会社員勤めをしていた頃に、いろんな「社内改革」が常に社員の労働強化にしかならなかったという経験を積んでいるので、「改革」というものには概して疑い深いのである。耶律楚材の「一利を興すは一害を除くに如かず」は政治や組織における最高の金言だと私は考えているが、たいていの場合、「一利を興す」提言は、「提案者にとっての」一利であるのが後になると分かるものなのである。もちろん、ただ思慮が浅いために、一利と思うことがその裏に多大な害悪を潜ませていることに気づいていないという場合も多い。孫埼氏の「地方主権論」は、その類だろうと私は思っている。これは橋下の「道州制」と同じく、「国家解体思想」であって、「国家再生思想」としては問題の多い思想ではないだろうか。


(以下引用)


明治国家以来の、欧米に追いつき追いこせという単線的な目標に人々を駆り立ててきた、官僚主導による「強制と保護の上からの民主主義」と、そのための中央集権・垂直統合型の「国家中心社会」システムは、すでに歴史的役割を終えた。

 これに代わって、市民主体による「自立と共生の下からの民主主義」と、そのための多極分散・水平協働型の「市民中心社会」を築き上げなければならない。 

いま必要なことは、すでに人口の7割を超えた戦後世代を中心とする市民のもつ創造的なエネルギーを思い切って解き放ち、その問題意識や関心に応じて地域・全国・世界の各レベルの政策決定に参画しながら実行を監視し保障していくような、地球市民的な意識と行動のスタイルをひろげていくことである。

小さな中央政府・国会と、大きな権限をもった効率的な地方政府による「地方分権・地域主権国家」が実現し、

技術創造型のベンチャー企業をはじめ「ものづくりの知恵」を蓄えた中小企業経営者や自立的農業者、それにNPOや協同組合などの市民セクターが生き生きと活動する「共生型・資源循環型の市場経済」が発展して、持続可能な成長とそのもとでの安定した雇用が可能になっているだろう。




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