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良寛「地震の後の作」

「阿修羅」に珍しい投稿があったので、転載し、私自身の訳文を付けておく。
良寛による「地震後の作」という漢詩らしい。まるで3.11後の日本を予見したかのような作品で、興味深い。

(以下引用、および追加現代語訳)注は夢人による。


日日日又日日
日日夜夜寒裂肌
漫天黒雲日色薄
匝地狂風巻雪飛
悪浪蹴天魚竜漂
墻壁相打蒼生哀
四十年来一回首
世移軽靡信如馳
況怙太平人心弛
邪魔結党競乗之
恩義頓亡滅
忠厚更無知
論利争毫末
語道徹骨痴
慢己欺人弥好手
土上加泥無了期
大地茫茫皆如斯
我独鬱陶訴阿誰
凡物自微至顕亦尋常
這回災禍尚似遅
星辰失度何能知
歳序無節己多時
若得此意須自省
何必怨人咎天效女児


日々(ニチニチ)日々 又日々            毎日毎日、また毎日
日々夜々(ヤヤ) 寒さ肌(ハダエ)を裂く       毎日毎晩、寒さが肌に沁みる

(予が性 寒さを怖る、因って以て発端とす)   (私は寒さが苦手なので、これを詩の
                       書き出しとする)
漫天の黒雲 日色薄く             空いっぱいの黒雲、日の光は薄く
匝地(ソウチ)の狂風 雪を巻いて飛ぶ        狂騒の大地の狂風は雪を巻いて飛ぶ
悪浪(アクロウ)天を蹴って 魚竜死し        大波が天まで逆巻き昇り、魚も竜も死に
墻壁(ショウヘキ)相打って 蒼生(ソウセイ)悲しむ     家々の壁はぶつかりあい、民草は悲しむ

四十年来 一たび首を廻らせば         自分が生きてきた四十年を振り返れば
世の軽靡(ケイビ)に移ること 信(マコト)に馳するが若し 人心の軽薄に移るは駆けるかのよう

況(イワ)んや 太平を怙(タノシ)んで人心弛(ユル)み   まして大平の世を楽しんで人心は緩み
邪魔の党を結んで 競って之に乗ずるをや   姦悪は徒党を組んで勢いに乗じている

恩義 頓(トミ)に亡滅(ボウメツ)し          恩義の心は滅亡し
忠厚 更に知る無し              忠厚の気風は知る人もいない

利を論ずれば 毫末(ゴウマツ)を争ひ        利を論じれば僅かな利益を争い
道を語るを 徹骨(テッコツ)の痴(チ)とす       道を語る者がいれば笑い物にする

己に慢り人を慢るを好手とし          己を誇り、人を欺くをうまい手だとし
慢上慢を加えて已む時無し           自惚れに自惚れを加えて止む時が無い

大地茫々 皆是(カク)の如し           大地は茫々としてみなこの通りだ
我独り惆悵して 其れ誰にか訴えん       私ひとり悲しんで 誰に訴えるのだ

凡そ物は微より顕に至ること固より其の勢い   およそ物事は微かから顕かへと移る
今日の災禍は猶遅きを怪しむ          今日のこの災厄は遅すぎたほどだ

語を寄す諸人能く信受せよ           さて皆さん、よく聞いておくれ
何ぞ必ずしも驟かに人を怨み天を咎めて 女児に效(ナラ)わん  人を恨み、天を恨むなどと
                          子供のようなことはするまいぞ

          沙門良寛書/地震後作


(注)
*「己に慢り人を慢るを好手とし」→「人を慢る」ではなく、「人を欺く」である。
*原詩と書き下し文にはかなり違いがあるが、主として書き下し文に従って訳した

*編集画面と掲載画面がまったく違うので(困ったものだ!)見づらいが、訳文は赤字で書いてあるので、読めないことはないだろう。



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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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