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チャンドラーの資本主義社会批判

「レイモンド・チャンドラー読本」という特集雑誌の中で船戸与一が書いているチャンドラー批判の評論の中で、少し面白い引用があった。(その評論全体の主張そのものは的外れだと思うが。)
「長いお別れ」の中で、ポッターという金満家がフィリップ・マーロウに言うセリフらしい。

「人間は昔から金に動かされやすい動物だった。人口の増加、戦争に要する多額の軍事費、税金の重圧、--こういったものが人間をさらに金に動かされやすくしている。ふつうの人間は疲れて、怯えている。疲れて、怯えている人間に理想は用がない。まず家族のために食事を買わねばならないのだ。我々は社会の道徳と個人の道徳がいちじるしく崩れ去ったことを見てきている。人間の品度が低下しているのだ。マス・プロの時代に品質は望めないし、もともと望んでいない。品質を高めると長持ちするからなのだ。だから型を変える。いままであった型を無理にすたらせようとする。商業戦術が生んだ詐欺だよ。ことし売ったものは一年たったら流行おくれになるように思わせないと、来年は商品を売ることができない。我々は世界で一番きれいな台所と一番光り輝いている浴室を持っている。しかし、アメリカの一般の主婦はきれいな台所で満足な食事を作ることはできないし、光り輝いている浴室はたいていの場合、防臭剤、下剤、睡眠薬、それに、化粧品業界と呼ばれている信用だけに頼る事業の商品の陳列所になっている。我々は世界で一番りっぱな包装箱を作っているんだよ、マーロウ君。しかし、中に入っているものはほとんどすべてがらくただ





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酔生夢人
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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