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ザハ案が(現在地には)建築不可能な理由

前の記事の補足として、建築家森山高至氏のブログから、「ザハ案」が物理的に建築不可能である理由を明快に、かつ詳しく説明した部分を抜粋して転載する。中学生程度の物理理解力があれば、誰でも納得できるだろう。読み物としても非常に面白いので、「難しそうな話」だ、と敬遠せずにお読みすることをお勧めする。下手な推理小説よりずっと面白いと私は思う。



(以下引用)



 今回の審査委員長の安藤忠雄さんは、ザハの案について
「大丈夫や、やろうや」までは元気よく言いますが、
「わしが責任をもつ!」はまったく言いません。

むしろ
「わしは、、、デザイン(見た目)のことしか、、、わからへんのやし、、、」
と声が小さいです。

超歯切れ悪い感じ。

そして、「構造とかわし、、わからんし、、、和田先生がええ言うたから、、、」

とか、全然、闘ってない感じ。
逃げ腰。

なんやねん!どないなっとるんや!どこが、どうおかしいんか教えてくれよ!
と言っても誰も答えないので、
しょうがないんで、もう一回例のモデル図を見始めたんです。


すると、ヤヤヤ!これは!アカンやろ!というところを発見してしまったんです。

巨大な橋だというのは以前やりましたが、この絵のMain arch(truss)と書いてある主構造に注目してください。
メインアーチとうたってはいますが、、、これアーチになっていない。
アーチ風味。

アーチというのは元々、組積造いわゆる石積建築のときに窓や入口を開けるための手法です。
石は構造素材として押されることには強いが曲げや引っ張りは苦手なのですが、圧縮にはめっぽう強いんです。
これはどういう仕組みかというと、落ちそうな石が隣り合った石を押し合うことで落ちないで地面に垂直に荷重を伝達できるのです。
ローマの時代に大いに発展しているのは皆さんご存じと思います。


アーチで一番大事なことは荷重を垂直に変えるということなんです。
次に大事なことはその垂直荷重が支持地盤(この場合は岩盤でしょう)まで届いているというのが大事です。

と、いいますのもみなさん、とりあえず地面は固いもの、という認識だと思うのですが、建築や土木構造的にはそれほど固くはないのです。

身近にあるもので例えると、筆立てが机に乗っている状態、
これは固い岩盤の上にビルが建っているのと似た状態です。


では、岩盤ではない普通の地盤の場合はどうか?というと、
机じゃなくてもっと柔らかいもの、スポンジよりも固くて多少粘りのあるような、、


「ういろう」くらいじゃないかと思います。
この「ういろうの生板」の上に先ほどのペン立てを置いた状態が、通常の地面と建築の関係に似ています。
なので、重量で微妙に凹む感じ、揺らすとプルンプルンする感じです。


で、ザハ案の構造に戻りますと
アーチと書いてアーチでないのはライズが低いということによりますが、同時に、ライズが低いけどアーチなので、構造的に非常に不利なことが起きています。

それは、巨大なスラストの発生です。
スラストというのは、ちょうど氷の上でスケート靴履いて外向きに股を広げたらどうなっていくかを想像していただくとわかりやすいでしょう。

手近にあったティッシュペーパーの箱の蓋を切って実験してみました。
軽く曲げるだけで自重は支えられるアーチになったようですが


ということになってしまいます。

そこで、ちょっと細工をしてみたのがこれです。


これはタイバーと言われる処理です。

アーチをもたせるには、このスラストという横に滑る力、股裂きにならないように端部に水平変位が起こらないように拘束する必要があるのです。

ザハ案にはビラビラをとった最新形の模型を発表しています。
このメインアーチの部分を赤く塗ってみました。


なんか、メインアーチの周りの縁も大層デカいんですが、主構造に絞って現在どのようになっているかを分析してみましょう。
断面形状をわかりやすく模式化するとこうなっています。

メインアーチの端部よりも競技フィールドは下がっているため、そこにタイバーとかを通すことはできません。

無理に入れようとするとこうなります。


競技観戦どころではないですね。
ただの使えない橋の周りに屋根かけた状態です。


なので、上からのパースを見ても空間です。水平部材はない。
とすると、基礎梁でスラスト抵抗を負担させるのか?ということになり、途中から地中に埋まっていくのですが、実質の橋のスパンが今まで以上に大きくなり600mを超えてきます。


なので、構造モデルの説明では夢みたいなこと書いてあります。
左下のThrust block foundation直訳すると、スラスト止め基礎。

なんだろう、この希望的観測的な部材、本当に建築の構造わかっている人が書いたものなんだろうか、、、超怖いんですけど

しかも垂直方向に向かって、、、


これだけのスパンの横力をもっとも非合理な垂直方向に向かって、引き抜きで対処しようというものですが、
これが、国立競技場周辺の地盤データです。


地下30mまでいっても全然岩盤とか出てこないんだけど、、、

地下50mとかまでアンカーするつもりなんだろうか。

Thrust block foundationというのは下図の赤丸ようなものなのですが、これはエドモントンにあるスパン250mの橋の図面です。
これ見てもお分かりのように、アーチのスラスト(横すべりと跳ね上げ)を押さえようというのが目的なので軸力方向に圧縮と引っ張りに効かすように斜めに打ち込まれているのが分かりますよね。

新国立競技場の今の配置でそれやったら、超ヤバイんですけど。
なぜなら、すぐ近くに地下鉄大江戸線が通っているからなんです。




地下ホームがちょうど地下30mくらいだから、
斜めにアンカーするのはかなり危険だと思いますしそもそも地盤が、データ見る限りシルトから細砂とかだからまだ「ういろう」状態だと思うんですよね。

このアーチのライズとスパンと敷地断面を模式化してみるとこんな感じです。


ドンピシャで駅に当ててんじゃないでしょうか、、

以上、この新国立競技場が根本で抱えているであろう構造的諸問題を私なりにあぶりだしてみました。

こんなんじゃ、どこから手をつけていけばいいのか、本当にわからなくなっているのではないかと、とても心配です。

杞憂であればいいのですが、、、
この件、友人の構造家ともう少し詰めてみたいと思います。

ちなみに、今年おこなわれたロシアのソチ冬期五輪のメインスタジアムが同様に二本の巨大なトラスアーチを掛けたものですが、
大きさは新国立ザハ案の半分くらいですからね。



この工事中の橋のはしっこに見えるスラストブロックの部分、ぱっと見ちょっとした川の土手?コンクリートの護岸?くらいに錯覚しそうですが


とてつもなくデカいです。
5~6階建てのビルくらいあります。


ソチは地盤がいいのか、
杭打たないで、地面に鉄板敷いて直接基礎みたいなのですが、この根本部分で原発工事並みの物凄い鉄筋工事やっています。


現場の周りも空いているし、すぐ海ですしね。


五輪の実行委員に選ばれた方々も今回のコンペ審査員の先生方も、
ソチのドーム計画を調べてみれば、新国立競技場のコンペ案が非常に危ういものであると分かっていただけるんじゃないかと思います。


とくに新国立競技場コンペの建築審査員の方々はもしかしたら、その見識は本当にデザイン(見た目の形)のみで、構造エンジニアリングや技術的知識や施工や実施設計について、今まで人任せでなんにも考えてきてないんじゃないか、、、とすら思えてくる事態なんです。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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