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「社会の全員、または最大公約数にとって」妥当する正義が「公正」である

「村野セリナの(以下略)」というブログから転載。
我が故郷、沖縄の琉球新報が褒められていて嬉しいが、実際、褒められていい内容の記事である。
政治の役割は国民を幸福にすることである、ということを琉球新報は良く知っている。沖縄に住んでいた頃は郷土新聞の良さはあまり感じなかったが、あいば達也氏のブログなどでも取り上げられたりして、沖縄の新聞は優秀なのだな、と知った次第だ。まあ、沖縄タイムスも同じように優秀かどうかは知らないが、少なくとも、沖縄のジャーナリズムは常に県民の立場に立って物を考え、発言しているのは確かだ。そして、これは全国紙にはまったく見られない姿勢である。
いったい、読売、産経、朝日、毎日などは、誰のために記事を書いているのだろうか。もちろん、事実は、それらが政府の御用新聞である、ということなのだが、では地方紙がすべて国民目線かというと、そうでもないようだ。であるから、琉球新報は褒められていい、ということである。
記事が長いので、日経と読売の記事は省略(蛇足だが、こういう場合は「割愛」とは言わない。割愛とは、「惜しいけど省略する」ということだ。読みたくもない記事の場合に使う言葉ではない。)しようかと思ったが、それでは比較ができないだろうから、全部掲載する。
引用したブログタイトルが不正確で申し訳ないが、人名は難しくて、「せりな」がどういう漢字か覚えきれないので、御免蒙る。読み方も間違いかもしれない。「セレナ」か?「村野セリナの」の後も覚えきれない。「社長室広報室」、だったかと思う。どうも長すぎるブログ名や難しいブログ名は、私には鬼門である。
蛇足だが、「正義」はしばしば主観である。アメリカが他国を侵略し、その国民を大量虐殺しているのもアメリカにとっては正義かもしれない。だが、他国から見れば、明らかな悪事である。我々は「正義」ではなく「公正」を社会の指標としなければならないだろう。

(以下引用)

G8サミット社説で琉球新報が使った「公正」という言葉が日経や読売にないのは偶然ではない。
• ジャンル : 政治・経済
• スレッドテーマ : 国際経済
   

ちょっと遅くなってしまいましたが、先日のG8サミットの結論として各新聞社が社説を出していました。

何紙か読んでみたのですが、現在の世界経済や金融の惨状の原因を公正に直視したうえで、今回のサミットの意義と課題を「新自由主義の自己中心性」や「緊縮財政原理主義」から脱して論じているのはほとんどただ一紙、琉球新報だけのように思われました。
●琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
G8サミット 公正で妥当な成長戦略を
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-191431-storytopic-11.html
2012年5月21日

 政策軸の転換をこれほど明確に示した会合も珍しい。主要国(G8)首脳会議が採択した首脳宣言は「成長と雇用の促進が不可欠だ」と強調した。経済討議の声明では「財政健全化と成長の両方を追求」とうたったが、軸足を「成長」に移したことは明らかだ。
 債務危機脱出に向け、緊縮一辺倒で思考停止することなく、本質的な解決策を模索しなければならない。各国は協調し、その「解」を見いだす努力をしてほしい。
 経済政策見直しの流れは不可逆的と見るべきだろう。フランス大統領選とギリシャ総選挙で財政緊縮派が敗れただけではない。ドイツでも地方議会選挙で政権与党が大敗し、欧州全域で緊縮財政への反発が広がっているからだ。
 確かに、債務危機を考えると野放図な財政出動はできない。だが緊縮一辺倒では経済が萎縮し税収が上がらず、かえって財政が悪化しかねないのも事実だ。その意味で欧州の潮流にはうなずける点がある。
 そもそも欧州危機の何が問題なのか。緊縮に反発するギリシャを非難する声が多いが、ギリシャの借金は合法的商行為であり、借り手責任もあれば貸し手責任もある。貸し手もこの間、利子という名の利益を十分に得てきたはずだ。
 もともと経済が強かったドイツは「最強の通貨」マルクからユーロへの移行で通貨の価値が薄まり、極めて有利になった輸出でもうけを得てきたはずだ。ギリシャなど経済の弱い周縁国は逆に輸出が不利になった。今の通貨危機は過去の利益-不利益の裏返しである以上、「つけの支払い」にも似て、ドイツなどのリスク負担はあながち理由がないことではない。
 フランス新大統領のオランド氏は公約で企業に再投資を求めて過大な株主配当をけん制した。企業の集団解雇費用を引き上げ、株価上昇を図るための解雇を防ぐことも提案する。
 成長のため、あるいは雇用を増大させるため、資本と労働の分配の現状を改める考え方だ。弱肉強食の新自由主義から転換する可能性を秘めており、傾聴に値する。
 フランス一国でこれを実行すれば企業は他国に逃避するから、有効にするには各国で足並みをそろえる必要がある。こうした視点も含め各国は経済政策を考え直し、すり合わせの努力を続けるべきだ。
(転載ここまで)

まず、『そもそも欧州危機の何が問題なのか。緊縮に反発するギリシャを非難する声が多いが、ギリシャの借金は合法的商行為であり、借り手責任もあれば貸し手責任もある。貸し手もこの間、利子という名の利益を十分に得てきたはずだ。』という部分は、利益を得てきた勢力が自分が利益を得てきたことに口を拭って危機の原因だけをギリシャ国民に押し付ける欺瞞と非道をずばり指摘しています。これこそが世界的な金融危機の解決に向けた公正な態度というものだと思います。

それから、フランスの大統領フランソワ・オランド氏のフランス国内向けの政策公約に触れて、「資本と労働の分配の現状を改め」て、「弱肉強食の新自由主義から転換する」ことの重要性を指摘したうえで、「フランス一国でこれを実行すれば企業は他国に逃避するから、有効にするには各国で足並みをそろえる必要がある。こうした視点も含め各国は経済政策を考え直し、すり合わせの努力を続けるべきだ」と提言しています。

サミットとは、各国が自分の利益だけを正当化する場ではなくて、地球規模の問題を各国の協調で解決していこうという大枠を作る場であると考えれば、この提言は非常に本質的なものです。

地球規模の金融経済問題の解決のためには、自分だけが利益を得て問題や混乱や不幸を他者に押し付けて知らんぷりという態度はどの国にも、どの経済勢力にも許されません。そもそも、他者の問題や混乱や不幸は金融経済危機という形で必ず自分にも跳ね返ってくるように世界は出来ているのです。サミットとは、そのことを改めて多くの人に意識させる機会でなければなりません。

そういう意味で、オランド仏大統領の「公正、平等」という国内での主張は、国際的にも適用される必要があります。この社説で使われている言葉を繰り返すなら、「公正、妥当」な戦略を全世界に拡大することが絶対に必要なのです。ただの「戦略」ではありません。「公正、妥当」な戦略です。

そういう視点を持っている琉球新報は本当に貴重な報道機関と言えます。どの報道機関も「危機に協調して対処してほしい」とは言いますが、そう言うだけでは足りないのです。

さて、琉球新報を読んだうえでほかの新聞を読んでも、希望のある高揚はありません。希望も高揚もないだけではなく、特に日本経済新聞と読売新聞が最低です。なぜなら、「成長と財政再建の両立」のために「日本は消費増税関連法案の成立に全力を挙げ」などと、オランド大統領のフランスがすでに葬った消費税増税をしつこく主張しているからです。

消費税増税には問題があるということを日本の新自由主義新聞の代表格の日経と読売は理解していないか、あるいは、理解したうえで何食わぬ顔で強欲自己中心主義を押し通そうとしているのかどちらかなのでしょうか。なぜ日本の新自由主義新聞がそうするかというと、私の想像ですが、そうした方が自分たちだけの利益になるからでしょうね。

まず、うちの関連記事を二つ見てから、日本経済新聞と読売新聞の「自分勝手な」社説をごらんいただきたいと思います。

■フランス上院で右派与党の提出した社会保障目的付加価値税率上げ法案が否決された。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3218.html

■消費増税ではなくて富裕層課税強化をもっと堂々と叫ぼう、フランスのように。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3268.html

では、まず日経から。
●日本経済新聞
欧州危機と北朝鮮への行動が問われる
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE6E3E4E6E3E5E4E2E0E3E2E7E0E2E3E08297EAE2E2E2
2012/5/21付

 欧州債務危機の克服や北朝鮮の挑発行動阻止に一応の結束は確認したが、その決意を確かな行動で示せるのか。主要8カ国(G8)の首脳会議(サミット)が不安を残したまま閉幕した。
 特に注目を集めたのは欧州危機への対応だ。G8の首脳宣言は、経済成長と財政再建の両立が事態の打開に必要と訴えた。6月の再選挙を控えるギリシャには、ユーロ圏にとどまるよう求めた。
 信用不安に悩むギリシャに緊縮財政を迫るだけでは、深刻な景気後退から抜け出せない。一方で財政悪化を放置すれば、債務不履行の危険が高まる。G8が財政再建の努力だけでなく、成長への配慮も求めるのは当然である。
 ただ具体策を示さない限り、市場の動揺は収まらない。欧州連合(EU)は23日の首脳会議で、柔軟な対応を協議すべきだ。財政規律を重んじるメルケル独首相と、成長を重視するオランド仏大統領の歩み寄りが欠かせない。
 欧州危機の悪化に備えておく必要もある。万一の場合も想定し、金融機関の資本増強を急いだ方がいい。EUと国際通貨基金(IMF)の支援枠が十分かどうかも、再検証してもらいたい。
 成長と財政再建の両立は欧州だけの課題ではない。日本は消費増税関連法案の成立に全力を挙げるとともに、今夏に発表する「日本再生戦略」の肉付けを急ぐべきだ。11月の大統領選をにらんだ駆け引きが激しい米国も、必要な経済政策を滞らせるようでは困る。
 日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)は6月の首脳会議で、成長と雇用拡大の行動計画をまとめる。G8が世界経済の安定に指導力を発揮し、新興国に応分の貢献を促すのでなければ、存在意義が薄れる一方である。
 政治分野では、北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの発射といった挑発行動に走らぬよう求める立場を確認した。北朝鮮への圧力に慎重なロシアも含め、結束を示せたのは一定の成果だ。だが中国の協力なしに、北朝鮮の暴走を抑えるのは難しい。G8が中国にも働きかけ、協力を促す必要がある。
 市民への弾圧が続くシリアとイランの核問題にも多くの討議時間が割かれた。原油の調達を中東に頼る日本も傍観者ではいられない。しかし、これらの問題に関心が奪われ、北朝鮮問題への対応が後手に回ることがないよう、米欧と緊密な連携をとってほしい。
(転載ここまで)
●YOMIURI ONLINE(読売新聞)
G8首脳宣言 ギリシャのユーロ離脱に懸念
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120520-OYT1T00950.htm
2012年5月21日付・読売社説

 米国で開かれた日米など主要8か国(G8)首脳会議(サミット)は、首脳宣言を採択した。
 G8宣言が、最大の焦点となった欧州債務危機の克服に向け、「強くまとまりのあるユーロ圏が重要」と指摘し、震源地のギリシャにユーロへの残留を促した意義は大きい。
 政局が混迷するギリシャは、来月17日に再選挙を実施する。その結果によっては、経済再建に行き詰まり、ユーロからの離脱を余儀なくされる恐れがある。
 そうなると、危機拡大でユーロが急落し、世界の市場の混乱に一段と拍車がかかりかねない。
 宣言が、「世界経済は強い向かい風である」と危機感を示し、ギリシャと、独仏など欧州に自助努力を求めたのは当然だ。
 ギリシャ国民が再選挙で、賢明な選択をするよう期待したい。
 とはいえ、ギリシャでは、財政再建に向けた緊縮策への反発が根強い。仏大統領選でも、緊縮財政見直しを掲げたオランド氏が当選し、今回のG8に初参加した。
 宣言が「成長と雇用の促進が必要不可欠だ」と明記し、経済成長と財政健全化を両立させる方針を打ち出したのは、これまでの緊縮策一辺倒への反省と言える。
 各国が財政規律を守るだけでなく、景気回復を実現する成長戦略を重視することは大事だ。だが、そのバランスは難しい。
 欧州の対応がまず焦点になる。緊縮策を重視するドイツと、軌道修正に動いたフランスが協調し、欧州再生の道筋を描くべきだ。
 日本も対岸の火事ではない。消費税率引き上げ関連法案を早期に成立させ、財政再建と景気拡大をともに目指さねばならない。
 世界経済の懸念材料である原油高騰に備え、宣言が、国際的な連携の姿勢を示したのも妥当だ。
 一方、G8は北朝鮮問題について、核実験に踏み切れば国連安全保障理事会に「行動」を取るよう求めることで一致した。野田首相が「国際社会として北朝鮮の悪行に対価を与えない」と、強い姿勢で論議を主導した。
 核実験の阻止には、北朝鮮に自制を促す中国の役割が欠かせない。G8は引き続き、中国に強力に働きかけるべきだ。
 依然として緊迫するシリア情勢についてもG8が憂慮し、必要に応じ国連による措置を検討する、としたのは適切である。
 混乱が続くアフガニスタンの自立も急務だ。7月に支援会議を開く日本は、国際的な体制作りに積極的な役割を果たすべきだ。
(2012年5月21日01時52分 読売新聞)
(転載ここまで)

読売が「緊縮策一辺倒への反省」を口にしながら、「消費税率引き上げ関連法案を早期に成立させ、財政再建と景気拡大をともに目指さねばならない」などと言ってしまうのは、フランスで起こっている政治の変化の理由を理解していないことを示していると思います。

そもそも、消費税引き上げは最悪の政策であることはうちのブログでは何度も書いてきた通りで、人々の購買力を弱めるから景気拡大に悪影響が出ます。それに、消費税率を上げれば悪影響なく税収があがって財政再建だって容易になるわけもないのです。

この点について、消費税の害悪に目をつぶり続ける社論を持つ日経や読売は「わかっていない」のか、「ずるい」のか、「卑怯」なのか、「詐欺的」なのかのどれかなのだと思うしかありません。

ここで、琉球新報の社説に戻るなら、その見出し、「公正で妥当な成長戦略を」というのは平凡なことを言っていると人は思うかもしれません。しかし、単なる「成長戦略」では、一部の一方的な犠牲で一部の利己的な利益だけを追求する勢力が現在のように世界を支配続けてしまうことを私たちは学んできたはずです。実際、フランスやギリシャの選挙結果を見ると、そのことを意識することなしに全世界的な金融・経済問題は解決できないことを知るべき人類史的な段階に入ったとすら私は思います。

琉球新報はそのことを意識しているからこそ、「公正で妥当な成長戦略を」という言葉を使っているのです。決してたまたま深い考えなしにこの言葉を使ったわけではないと私は考えます。

一方、日経と読売は上の社説の中で「公正」、「妥当」という言葉を使っていません。これは決して偶然ではないはずです。日経や読売の「経済成長戦略」には「公正さ」も「妥当性」も皆無とは言えないにしても非常に乏しく、自分たちの一方的利益だけの追求であることを問わず語りに示しているさりげない証拠だと思えるのです。ちょっとした言葉遣いの中に報道機関のホンネが出ますね。

「成長戦略」も「財政再建」も必要です。しかし、そこには「公正さ」や「妥当性」がなければ有害なだけです。その有害な「成長戦略」と有害な「財政再建」に向かって世界をさらに押そうとしているのが日本経済新聞や読売新聞であるということがG8サミット社説で浮き彫りにされた、私はそう思いました。


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