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著作権切れ映画鑑賞会

京都郊外山中の町に引っ越してひと月半ほどはネット接続ができなかったので、暇を持て余し、安いDVDプレーヤーを買ったのを機に、古い名作映画などを見直してみた。「音と映像社」という会社の通信販売で、80作で1万1600円、1作当たり145円という奴を購入したのである。だいぶ贅沢な出費だが、1作145円で洋画の名作をDVDで所有できるのだから、レンタルよりかえって割安かと思ったわけだ。もちろん、こうした映画は著作権切れの古い奴ばかりだ。しかし、私は、映画というジャンルは1970年代くらいで終わったジャンルだと思っているから、古い方がいいのである。
残念ながらその80作(ほとんどが娯楽映画だ)のリストにはベルイマンやフェリーニといった「純文学的映画」の大物は入っていないが、これまで見る機会のなかった映画をこれで見ることができるのだから、それでもいい。
で、これから書くのは、そうした映画を見ての勝手な評価である。ただし、この種の評価は、言うまでもなく、見る者の主観でしかない。期待値が低いと実際以上に高く評価してしまうこともある。
で、それぞれ10点満点で点数化してみたが、中には映像だけなら満点、ドラマとしては0点といったものもあり、最終得点はその平均だから、この点数自体もあまり当てにはならないのである。まあ、ただのお遊びだ。
最初の数字は通し番号である。カッコの中が評価点。その後に短評など。
とりあえず、20作品ほど。


1 「西部の男」:監ウィリアム・ワイラー主ゲーリー・クーパー(10点) 評:最高である。ゲーリー・クーパーの映画として最高ではないか?もちろん、監督の手腕である。クーパーの役は、まさしく彼のためにあるような役で娯楽映画のヒーローとしては最高に好感の持てるキャラである。助演のウォルター・ブレナンも最高。ヒロイン役の女優も美人ではないが、可愛い。細部のユーモアも最高である。最高ばっかり言っているが、ウィリアム・ワイラーは世界最高の監督なのだから、こう言うしかない。
2 「マクリン・トック」:監アンドリュー・V・マクラグレン 主ジョン・ウェイン(3点) 評:キャラ、ドラマとも魅力無し。元ネタはシェークスピアの「じゃじゃ馬馴らし」だろう。下手な換骨奪胎である。ジョン・ウェインのオカマ歩きだけが目立つ映画である。私はウェインは好きだが、その歩き方だけはどうも好きになれない。モーリン・オハラは虚栄心の強い頭の悪い女という損な役柄である。ウェインの娘役は生意気、その恋人も生意気、ウェインの役は威張り屋で傲岸で、キャラにまったく魅力なし。
3 「静かなる男」:監ジョン・フォード主ジョン・ウェイン(7点) 評:昔、劇場でも見たが、もっと面白くなりそうな話で、やや物足りない。詩情はある。宮崎駿の原点の一つか。延々と村の端から端まで続く男同志の殴り合いは、「ラピュタ」「紅の豚」などに引き継がれている。あるいは同じフォードの「ドノバン珊瑚礁」の方の影響か。
4 「ウィンチェスター銃73」:監アンソニー・マン 主ジェームス・スチュアート(6点) 評:ドラマ自体は悪くないが、風情が無い。ジミー・スチュアートの個性があまり生かされていない。
5 「シェーン」:監ジョージ・スチーブンス主アラン・ラッド(10点) 評:最高である。西部劇における詩情という点で最高峰だろう。子役があまり可愛くない顔なのが残念。もちろん、これまで数回見ているが、年を取るほど良さが分かる映画だ。アラン・ラッドは西部劇の似合わない優男だが、この映画ではその品の良さが生きている。
6 「復讐の谷」:監リチャード・ソープ 主バート・ランカスター(7点) 評:プログラム・ピクチャーだろうが、案外といい出来である。もちろん、バート・ランカスターの魅力が点数の半分。
7 「砂漠の鬼将軍」:監ヘンリー・ハサウェイ 主ジェームズ・メイスン(7点) 評:戦争映画としてはやや爽快感に欠けるが、史実とフィクションがうまく融合した、良い映画である。
8 「外套と短剣」:監フリッツ・ラング主ゲーリー・クーパー(5点) 評:有名監督なので期待して見た分、がっかりした面がある。主人公があまりに馬鹿すぎて、感情移入が難しい。スパイ映画としての出来はそう悪くはなく、細部には面白い部分もある。
9 「ヨーク軍曹」:監ハワード・ホークス 主ゲーリー・クーパー(6点) 評:全体としては面白いのだが、敬虔なキリスト教徒である主人公が戦場で敵を殺しまくるようになる理由付けが納得しがたい。劇場でも見た作品だが、評価は当時もこんなもの。もっと面白くできそうな話である。
10 「メンフィス・ベル」:監ウィリアム・ワイラー*ドキュメンタリー(5点) 評:ドキュメンタリーだから、ドラマ性は薄い。しかし、ウィリアム・ワイラーだから、結構見られる作品になってはいる。当時の空軍の戦略についての興味深い情報も得られる。「メンフィス・ベル」は飛行機の機体に描かれた美人のことのようだ。
11 「アフリカの女王」:監ジョン・ヒューストン 主ボガード&ヘップバーン(7点) 評:以前にも見たが、その時よりは面白く感じた。主役二人の演技を楽しむ映画である。もちろん、ヘップバーンはキャサリンのほうである。ボギーはオードリーとも「サブリナ」で共演したが。
12 「嵐が丘」:監ウィリアム・ワイラー主オリヴィエ&オベロン(10点) 評:これほどの傑作を、食わず嫌いで見逃すところだった。なにしろ、ラブロマンスが嫌いだから、監督がワイラーでもなければ、絶対に見ない種類の映画だ。もちろん、原作は読んでいるし、傑作だと思っている。しかし、文学作品を映画化してロクな映画になった試しはない。だが、やはりワイラーである。映画としての出来は最高。彼は、私の中では世界最高の映画監督だ。彼の映画で失望したことは一度も無い。これは黒澤やキューブリックにおいてさえも無いことだ。
13 「若草物語」:監マーヴィン・ルロイ 主ジューン・アリスン(7点) 評:なぜか好きな作品なので、3回ほど見ている。穏やかに心楽しく見られる映画である。昔は映画の後半が気に入らなかったが、今は、その非ロマンティックな現実性も悪くないと思うようになった。
14 「ローマの休日」:監ウィリアム・ワイラー主ペック&ヘップバーン(10点、いや20点) 評:ロマンチックコメディ映画史上最高の作品である。1点も非の打ちどころがない。完璧な作品、映画の至宝である。もちろん、これまで10ぺん近く見ている。できれば、これがカラー作品であったら……。
15 「地上最大のショー」:監セシル・B・デミル 主チャールトン・ヘストン(4点)評:ドラマ性が弱く、どこを見どころにすればいいのか迷う、大味、散漫な映画である。キャラにも魅力なし。ジェームス・スチュアートがほとんど顔を出さない役で出演している。サーカスについての豆知識が得られるのが取り柄の映画か。
16 「宝島」:監バイロン・ハスキン 主ロバート・ニュートン(7点) 評:見て損は無い映画だ。本来の主演は少年俳優だろうが、海賊キッド役の俳優がまさに「役者やのう」という感じで、ドラマを引っ張っている。原作の良さを最大限に引き出した良作である。
17 「類猿人ターザン」:監W・S・ヴァンダイクⅡ世 主ジョニー・ワイズミューラー(7点) 評:ドラマとしては最後のあたりが弱いが、全体的になかなか面白い。大昔の映画でも馬鹿にはできない。特に、主演のワイズミューラーの演技には感心した。水泳選手上がりの際物役者と思っていたが、普通の役者よりずっと上手い。ジェーンの足を引っ張って穴から引きずり出すシーンは可笑しかった。
18 「サムソンとデリラ」:監セシル・B・デミル 主ヴィクター・マチュア(7点) 評:思ったより面白く、よくできた作品だが、主人公サムソンの阿呆さは(原作、つまり聖書のとおりだが)見ていられない。洋画の主人公は女と見れば鼻の下を伸ばす阿呆ばかりである。しかし、サムソンとライオンの格闘シーンその他、場面場面は見ごたえがある。
19 「ベン・ハー」:監フレッド・ニブロ 主ラモン・ナヴァロ(7点) 評:作られた時代を考えれば、8点を献上してもいいくらいの堂々たるスペクタクル作品である。ワイラー版の「ベン・ハー」の戦車競走の場面は、実はこの映画とそっくりそのままである。本当に迫力がある。欠点は、主演俳優が昔風の弱弱しい感じの二枚目であること。敵役の俳優は、実に憎々しくていい。
20 「クォ・ヴァデイス」:監マーヴィン・ルロイ 主テイラー&カー(7点) 評:主役二人のキャラがあまりに不愉快な性格付けなので、感情移入が難しいが、全体の出来は優秀である。人間よりも風景やセットが素晴らしい。デボラ・カーは清純な乙女の役だが、ロバート・テイラー演じる役が最初は人間の屑みたいな性格なので、それに惚れるという設定だけで、もうアウトである。後で改心するにしても、観客の生理としては、この男キャラへの嫌悪感は拭い難い。したがってカーに対しても、この阿呆娘としか思わない。ピーター・ユスチノフ演じるネロ皇帝は、俳優なら誰でも演じてみたいキャラだろう。この映画でも主役の二枚目とヒロインはどんな危険に遭っても死なないという愚劣な鉄則(次回23番参照)のために、ラストのあたりがグジャグジャになる。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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