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「象のうんこ」の意味

穂村弘という歌人がいて、私は現代短歌というのはあまり好きではなくてほとんど読まないのだが、彼のエッセイが好きで、古本屋で見つけると買ったりする。(古本の販売代金からも著者に印税が5%くらい行くように法律を作らないと、文芸は滅びると思う。古本で安く買えるから、人々の多くは新書を買わないのである。私もそうだ。)
で、彼の代表作は、おそらく、これになると思う。

サバンナの象のうんこよ聞いてくれ だるいせつないこわいさびしい

「象のうんこ」を歌った短歌は空前絶後だろう。しかもそれが現代の若者の孤独感と見事な対比になっている。サバンナの乾いた風に吹かれる象のうんこは、動物園の象のうんこの不潔さや惨めさが無い。そして、孤独な若者が「聞いてくれ」と願う相手は若い美しい女性でも何でもなく、「サバンナの象のうんこ」なのである。もちろん、象のうんこはそんな嘆きなど聞きはしない。それでも、そういう相手でもどこかに存在しているだけで、何かの救いにはなるわけだ。
実際、相手が若い美しい女性だと、彼はじぶんの「だるいせつないこわいさびしい」思いを訴える気にもなれないだろう。訴えるだけでも死にたくなりそうだ。しかし、相手が象のうんこなら、正直に自分の孤独と絶望を訴えることができる。それは、相手が「この世界に存在する悠々とした何か」を象徴しているからではないか。べつに、象自体に聞いてほしいわけでもない。自分の「だるいせつないこわいさびしい」という気持ちは、いつもは自分だけの心の中に飲み込んでしまっているものだろう。だが、深夜、ふと目覚めた時、サバンナの象や、そのうんこを思うと自分を縛り付けている何かからの救いがその世界にあるような気になるわけだろう。
象のうんこという、雄大で無意味な存在が、現代の都会の小さな孤独と見事に対比されている。


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HN:
酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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