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「萃、升、困、井」の占断

45:萃(沢地萃)【×○○ ×××】「集まる」*「萃」は「すい」と読む。

萃(の卦)は通る。貞固であると利がある。問題事は信頼できる人に相談するといい。大事を決行するのもいい。

*卦辞に意味不明の言葉がいくつかあるが、何やら偉い人が何かを祭って犠牲を捧げる、みたいな話で、庶民には無関係だろう。「萃」は集まる意味で、大地の上の沢は、水が集まって沢になるわけだから、上卦沢、下卦地で沢地萃となる。物や人が集まると、当然そこには利が生まれる。と同時に、不測の事態や揉め事も起こりやすくなる。そこで象伝には「君子以除戎器 戒不虞」とある。「虞」は「虞犯」の虞で、「恐れ」、つまり、「可能性」の意味だ。「虞犯少年」は犯罪の恐れのある少年の意味。「不虞」は、「恐れを持たないこと」「事故や事件の可能性を考えない迂闊さ」の意味。「戎器」は武器だが、「除する」は「除く」ではなく、「掃除する」意味のようだ。つまり、武器の手入れ(もちろん、比喩だ)をして突発事態に備えよ、ということらしい。

46:升(地風升)【××× ○○×】「上昇」*「升」は「しょう」と読む。

升(の卦)は基本的には通る。(地位などの上昇の結果)偉い人に会う可能性があるが、心配は不要。南に行けば吉。(「南征」を本田氏は「前進する」「上昇する」意味だとしている。)

*「升」の字は人名で「のぼる」と読むから、これが「上る」意味なのはすぐに想像できる。正岡子規の本名が「升」である。この卦は「志は行われ、慶(よろこ)びがある」という大吉の卦である。象伝が面白い。「地中生木升 君子以順徳 積小以高大」、つまり、地中に木が生えて高く上っていく(成長していく)ように、君子は従順の徳により、小を積んで高大となる」。本田氏は「徳を順(つつし)み」と読んでいるが、変な読み方だと思う。徳は慎むものではない。慎むようなものは徳ではない。「徳に順(したが)い」ならまだいいが、やはり「順徳」で一語とすべきだろう。なお、巽(風)の卦は木の象徴でもあるので、地の下に風があるのではなく、地の下に木があるという解釈になる。


47:困(沢水困)【×○○ ×○×】「苦しむ」

困(の卦)は通る。問題が起こっても、大人(たいじん、度量や見識のある者)は、咎はない。だが、占う者(占断の該当者)の言葉は他人に信じられないだろう。

*易経の原文だと卦辞の途中に唐突に「貞」の字があるが、貞がどうなのか意味不明である。貞であれと言っているのか、貞であるとマズイと言っているのか。本田氏は例によって「貞(ただ)し」と読んでいて、この場合はその方がいいのかもしれない。つまり、「占いの該当者の考え自体は正しい」ということか。しかし、「困」の字は言うまでもなく困難や困苦を示す字だ。悪卦である。自分が大人(たいじん)かどうかは、自分では分からないだろう。彖伝では「口を尚(たっと)べば乃(すなわ)ち窮するなり」とある。自分の言葉が他人に信じられないというのは、確かに最悪の困難だろう。弁舌や言い訳ではどうにもならない窮地である。
象伝には、「占う者が君子なら、こういう場合は使命を遂げることを最優先する」とあり、それは非常に素晴らしい行動だが、小人(つまらない人間)には不可能であり、大人にしかできない。大人は、使命を果たすことで、その言葉もやっと信じられ、咎も受けない、ということかと思う。つまり、大義名分があっての行動のみ吉であり、私利私欲による行動は、必ず咎を受ける、そういう卦だと思われる。つまり、「困は亨(とお)る」とは、「大人として行動すれば」願望は通る、という、限定条件付きの占断だということだ。

48:井(水風井)【×○× ○○×】「井戸、賢人を養う」*「井」は「せい」と読む。

井(の卦)は、何かの事業をしても肝心な部分が抜け落ちていて、失うものも得るものもない結果になる。無駄骨折りという意味ではマイナスである。たとえば井戸に釣瓶を下すこと自体、その釣瓶が壁石に当たって壊れることもある。日常茶飯事もそういう危険は常にある。要するに、この卦は凶である。


*卦辞が分かりにくいので解釈が長くなった。本田氏の「賢人を養う」は、彖伝の「井は養って窮まらざるなり」を敷衍した解釈だろうが、特に「賢人を」養うという趣旨の言葉は無さそうである。井戸自体は庶民生活の根幹のような存在なので、賢人だけを養うものではない。
















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酔生夢人
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男性
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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