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初心者や新人、新規参入者に冷たい社会

西の京に帰ってきて、すぐにネット接続はできたのだが、NTTからの料金催促状が、ほとんどひと月留守にしていたのに7000円も請求されるという馬鹿な請求額が来ているので、電話契約もネット契約も打ち切ろうかと思案中である。
電話もネットも無ければ無いで私は生きていけるが、それをやめると家族から文句を言われそうなので、とりあえず格安のネット契約でも無いか、探すつもりだ。
まあ、こんな個人的な話などどうでもいいが、人によってはそういう話の方が面白いとか、参考になる、ということもあるかもしれない。
さて、ネット上での話題は相変わらず低調である。今の日本はTPPやACTAや人権救済法案やら何やらで危機的状況にあるが、あまりにそういう状態が長く続いているのでみんな徒労感や倦怠感に捉われているような感じだ。本当は原発事故による放射能汚染もまだ継続中であるのだが、もはや騒いでも無駄、という感じで日本国民は汚染食品を大人しく購入して食べて放射能を体内に蓄積している。乳酸菌やら何やらが放射能に効く、と言われてもイワシの頭を信心するような気にしかなれない。放射能へのあきらめは、日本国の政治的経済的崩壊へのあきらめにもつながり、ある種のニヒリズムが日本社会全体を覆っている気がする。
山科恭介(有名人なので敬称略)がブログをやめるとか言っていて、それも寂しい限りである。沢山のファンのためにも、やはり続けてほしいものだ。ブログなんて、架空の相手とのお喋りなのだから、書いたものに責任など感じなくてもいい、というのが私のスタンスだ。日常のお喋りにいちいち責任を持って発言する奴はいない。そういう気軽なものなのだから、書きたくなければやめればいいし、書きたくなったらまた書けばいい。

実は、下記の文章は昨日書いたものだが、わざわざブログに載せるような文章でもないなあ、と思って没にしかかっていた。しかし、「わざわざブログに載せるほどの文章」など、べつにこれまで書いてもいなかったのだから、書いた時間を無駄にしないために掲載することにする。

私は「考えること」自体が趣味だから、そういう「思考素材」を与えてくれるのなら、世界政治だろうが身近な出来事だろうが、題材としては何でもいいのである。
今日はネット上には面白い話題も無いので、少し足を延ばして、普段はあまり訪問しないブログを訪ねてみた。

「レジデント初期研修用資料」という妙な名前のブログから転載。
研修医のためのアドバイスや感想などを書いたブログで、普通の人が読んでも面白い。筆者は非常に合理的な頭を持っているので、問題の切り口がユニークであることが多く、世の中に罷り通る不合理に慣れ切った人間には新鮮な感じがあるかと思う。
この「オーダー」とは、つまり医者から看護師への「注文」「指示書」だと思うが、その書き方も教えないで「オーダー」を突き返す、というのは、昔の職人世界ではよくあったやり方で、職人世界よりは一見知的レベルが高そうに見える医療の世界でも同じようなものだったんだな、と思う。
そういう不合理、かつ、いじめに近いような行為はどの世界でもあるのだろう。そして、そうした職人世界的やり方をむしろ擁護し、称賛するのが世の常である。案外知られていないことだが、学校の生徒の間では「いじめ容認」の意見が実は多いのである。

学校の部活などでの「先輩への絶対服従」も似たような問題だ。「自分はそうやってきたから、後の者にも同じやり方をさせる」わけである。なぜ、自分はそれで酷い目に遭ってきたから後輩にはそれをやらせたくない、という気持ちになれないのだろうか。

元記事について一言だけ書いておけば、最初に出てきた「オーダー」については、「オーダー用紙」に必要事項を最初から印刷し、研修医が事項ごとに空欄に書き込めば、それで済む話だ。何が必要事項なのかを教えもせずに、それをいちいち突き返すというのは単なる初心者いじめであり、看護師たちのストレス解消手段の一つだったのではないだろうか。それを黙認したままで、改善しようともしない病院上層部の人間的レベルも想像がつく。


(以下引用)

歩きかたと登りかた

研修医だった大昔、患者さんが病棟に上がってきても、オーダーを出すのが大変だった。
ある病名を背負った人に何を行うべきなのか、知識としては一応持っていたのだけれど、それをどうすれば「オーダー」という記法に落とし込めるのか、思うところを書いても、病棟からは「これでは指示を受けられません」なんて突き返されたり、「ふつうに点滴をつないでおいてくれればいいから」と言われた患者さんがいて、じゃあ「ふつう」とは何なのか、ラクテックなのか、ソリタT3なのか、まずはそこから分からなかった。生まれて初めて処方した「ふつうの」輸液製剤は10% EL 3号で、それを書いたら「どうしてEL なの?」なんて、先輩の研修医から怒られた。
駆け出しの本当に最初のこの頃、けっこう長い期間途方に暮れて、たまたま集中治療室の患者さんを受け持つ機会があって、婦長からはじめて、「オーダーの書きかた」を教えてもらった。オーダー用紙には「病名、重症度、安静度、検温の回数、尿測とモニター、酸素の有無、食事、点滴、内服」を、この順番で書く。それだけのことを教わることで、各病棟から突き返された研修医の落書きは、ようやく「オーダー」として通じるようになった。

当たり前のことは難しい

今の研修病院なら、こうした「オーダーの書きかた」みたいなものを教えない施設はさすがにないだろうけれど、昔はこうした「当たり前」の知識については、研修医が各自で発見するものだと考えられていた。研修医が学ぶべきはもっと高度な知識であるべきで、当たり前のことは、わざわざ教えるまでもないからと。
知識の序列は立場が変わると異なってくる。慣れた人なら重要さが順番の要になるけれど、研修医は切実さで序列を付ける。もっとも切実な知識、オーダーの書きかたや「ふつうの点滴」の出しかたは、先輩の序列では「重要でない」ものだから教えてもらえなかったし、教科書に「ふつう」を求めて、答えを探すのは大変だった。
知っていることと、オーダーできることとの差異は本当にわずかなのだけれど、一度知った人間にとっては意識するまでもないことが、研修医には絶望的な壁に思える。一度聞いたら自分も壁の向こう側にいけるのに、どれだけ勉強しても、知識を「オーダー」へと落としこむその最後の半歩が超えられず、けっこう長い期間惨めな思いをする研修医はたぶんそれなりにいるのではないかと思う。

見えるものはずいぶん違う

カルテの書きかたには決まりがあって、最初の方に「主訴」が、患者さんの訴えを記載する欄がある。研修医はたいてい、主訴の欄に病名を書いて、「病名を自分でしゃべる患者さんがいるわけないだろう」なんて、上の先生から怒られる。
立場が異なると、風景はずいぶん変わる。外来を受け持つ上の先生にとっては、例えば肺炎の患者さんは咳や発熱、呼吸困難を訴えて病院に来る人だけれど、研修医にとっての肺炎は、上司から「肺炎みたいな患者さんを病棟にあげるから、先生見ておいて」と紹介される病気して認識される。病棟に来た段階で、患者さんの多くは自分の病名を聞いているし、「どうしましたか?」なんて今さら尋ねても、「外来で肺炎だから入院が必要だと言われました」なんて答えが返って、それをそのままカルテに書くと、あとからまた怒られる。
肺炎に関する知識なら、上司はたぶん、問診や聴診における肺炎の特徴や、肺炎に対して使われる抗生剤の理論的な背景を大切だと考える。研修医はたいてい、「肺炎」という病名が付けられた患者さんにどんな検査を予約すればいいのか、どんな食事を出せばいいのか、安静度をどうすれば怒られないのか、酸素はどうなったら使うべきなのか、そんな知識を切実だと考える。
教科書には大切な知識が沢山記載されているのだけれど、切実な何かが書かれていなかったり、そうした知識を探すのがやけに難しかったりする。

歩きかたと登りかた

山に登るのに必要なのは「歩くこと」であって、「登山とは何か」みたいな深いテーマを学ぶのは、歩き出してからのほうがいい。
成功するための哲学を教えてくれる人は多い。それが重要なことなのだろうし、教える側にも「教えがい」がある。「その業界でスタートするための方法」を教えてくれる人はあまりいない。事務手続きやお金の話みたいな、成功哲学に比べればあまり大切に見えない話が多いし、どうにも高級に遠いから、話す側も面倒だからなのだと思う。
そうした傾向が真実であったとして、結果としてたぶん、「成功できる知識があるのにスタートできない」新人が、世の中には増えていく。
そこで成功するために必要な知識と、そこで食べていく上で切実な知識とは大いに異なる。前者のほうが面白くて大切だけれど、最初に後者を習得しないと、スタートするための障壁がどんどん重たくなっていく。成功するための知識が増えていくほどに、スタートするための知識の欠落が相対的に大きくなって、結局その人は動けなくなる。
山に登ることは、実はそこまでものすごい知識が必要なわけではないのに、「頂上を目指すことの素晴らしさ」を熱心に説いた結果として、登山客を減らしている「山が好きな人」が、社会のいろんな場所にいるのではないかと思う。
スタートするためには何が必要なのか。それにはどんな手続きが必要で、たとえばどれだけのお金がかかるのか。困ったときには何が役に立つのか。誰に援助を求めればいいのか。オーダー用紙や契約書の文面の文面は、どんな型に従って書くのが無難なのか。若い人を教える機会なんてもうないんだけれど、そういうのをまとめてみたかった、あるいはそういうのがあれば、研修医の時の苦労は少しでも減らせただろうなと思う。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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