サイモン・フレイザー、BBCニュース
ミャンマーの元指導者アウンサンスーチー氏(77)が22日、住宅での軟禁状態から、首都ネピドーにある刑務所の独居房へと移された。
ノーベル賞受賞者のアウンサンスーチー氏は昨年2月、同氏らが率いていた民選政権が軍事クーデターで転覆させられた際に、軍に拘束された。
この1年間は、ネピドーの非公表の場所で軟禁されていた。
同氏はこれまでの裁判で、合わせて禁錮11年の刑を言い渡されている。その罪状は、政治的動機から作り出されたものだとして多くの非難が出ている。同氏も否認している。
独居房での収監によって、アウンサンスーチー氏はますます外の世界から隔絶することになる。同氏は軍事政権下で15年間拘束され、世界的な民主主義の象徴となったが、ほぼすべての期間、自宅での軟禁だった。
今後の裁判では、刑務所内に設置された特別法廷に出廷すると考えられている。同氏はミャンマー国内で、今も高い人気を得ている。
特別につくられた部屋に
司法筋がBBCビルマ語に話したところでは、アウンサンスーチー氏は22日に、刑務所内に特別に用意された部屋に移送された。同氏の仲間で、大統領の座を追われたウィンミン氏も、同じ刑務所で似たような独居房に収監されているという。
アウンサンスーチー氏の健康状態は良好で、女性刑務官3人が同氏を支援するという。
軍事政権は簡単な声明を発表。アウンサンスーチー氏が刑務所に移ったことを明らかにし、ミャンマー(ビルマとも呼ばれる)の刑法に沿った措置だとした。
人権団体は、これまでの秘密裁判をごまかしだと非難している。非公開の審理は一般市民やメディアに公開されず、アウンサンスーチー氏の弁護士はジャーナリストと話すことを禁じられている。
アウンサンスーチー氏が、いつまで独房に閉じ込められるかは不明。同氏は軍によるクーデターの後、公の場から姿が見られなくなった。
BBCのジョナサン・ヘッド記者は、アウンサンスーチー氏の軟禁場所は明らかにされていなかったが、親しい仲間数人と一緒だったことが知られていると伝えている。
AFP通信は、情報筋の話として、アウンサンスーチー氏のスタッフと飼い犬は、同氏と一緒に刑務所には行っていないと述べた。
アウンサンスーチー氏がこれまでに有罪判決を受けた罪状は、扇動、汚職、新型コロナウイルス関連の規則違反、電気通信法違反などだ。
今後も新たな裁判が続く予定で、軍はアウンサンスーチー氏を一生拘束するのが狙いだと非難されている。仮にすべての罪状で有罪となった場合、同氏は計190年以上の実刑判決を受けるとみられている。
人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソン・アジア局長代理は、「私たちが目にしているのは、ミャンマー暫定軍事政権がアウンサンスーチー氏に対し、かなり懲罰性を強めている動きだ」とAFP通信に話した。
「政権は明らかに、彼女と彼女の支持者を脅かそうとしている」
弾圧で約2000人死亡か
軍事クーデターは、アウンサンスーチー氏が率いていた国民民主連盟(NLD)が総選挙で地滑り的に勝利した数カ月後に発生した。
軍は不正投票があったと主張したが、独立した選挙監視団は、投票はほぼ自由で公正だったとした。
クーデターを受け、広い範囲で抗議デモが発生。軍は民主化運動家や活動家、ジャーナリストらを弾圧した。
アウンサンスーチー氏やNLDの多くのメンバーらを含め、1万4000人以上が拘束された。
ミャンマーの人権団体、政治犯支援協会によると、軍による弾圧で2000人近くが死亡した。
軍に対する反対運動は広く行われており、国内のいくつかの地域では武力紛争になっている。