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天国の鍵57

その五十七 あいかわらずの作者の長口上

美意識(びいしき)なんてむずかしい言葉ですが、ようするに、きれいと汚いを見分けて、汚いものを避(さ)け、きれいなものを選ぶ気持ちです。単に外面だけでなく、考え方や行動においても、きれいなものと汚いものがあります。卑怯、卑劣などは汚いものです。たとえば、多くの子供が一人の子供をいじめるなんて、卑劣以外のなにものでもありません。それを汚い行為だと思いもしないところがいじめ問題の最大の問題なのです。
そんなふうに物事を考え、判断する力は、残念ながら学校では教えてくれません。哲学は、教わるものではなく、自分で考えるものなのです。そして、自分で考えることほど楽しく有益(ゆうえき)なことはありません。もちろん、自分に無い知識は謙虚(けんきょ)な気持ちで学ばねばなりません。しかし、考えること自体は、他人ではなく自分がやるものなのです。自分で考える人間は、すべて哲学者であり、他人に考えてもらっている人間は、大学の先生でも偉い人でも哲学者ではありません。
ふつうの人間が、満足のいく人生をおくろうと思うなら、物事を良く考えることが一番だと私は思います。考えることだけでなく、考えるための材料として、知識を得ること、物事を知ることも大事です。みなさんの中で、勉強が好きな人間は少ないと思いますが、ものを知ることは大きな喜びを与えるものです。勉強がつまらないのは、勉強のせいではありません。その勉強が、みなさんの好奇心の対象になっていないからなのです。もしも、数の不思議にとりつかれたら、算数は魔法となり、世の中の仕組みに興味を持ったら、政治経済の知識は君たちの剣となり、盾となるでしょう。そうして、人生は剣と魔法の騎士物語になるのです。中でも、何よりも、未知の世界への鍵となるのは、語学です。魔法でよその国に行くまでもなく、英語やフランス語、ドイツ語の本をひらけば、そこに一つの世界があらわれます。いや、外国語にかぎりません。科学も数学も、本はすべて一つの世界なのです。しかし、みなさんが言葉を知らなければ、それらの世界は永遠にみなさんには閉ざされたままなのです。もちろん、本だけでなく、他の人間も、一つの世界です。
私たちは、毎日顔を会わせている人間のことすらほとんど知りません。人間は自分の内面をなかなか外に表そうとしないものなのです。人間という奴は本とはちがって、扱いがむずかしいものですから、他人を知るというのは大変な仕事です。でも、それが好きな人なら、その大変さも苦痛ではなく、喜びでしょう。
天国の鍵、それは「指向性(しこうせい、志向性でもいい)」、つまりその人が何を求めるかということです。人間は自分の求めるものを自分で知っているとは限りません。自分に合わないものを求めて自分を苦しめていることが多いのです。また、その苦痛は自ら作り出した幻想であることが多いものです。たとえば恋愛の苦痛なんて、妄想的苦痛がほとんどです。だって、相手は、あなたの内面をどうすることも本当はできないのですから。
この話も、むずかしい言葉がどんどん出てきて子供が読むのは大変ですが、わからない言葉は前後関係から考えてみてください。できれば、辞書などひいてくれたら確実です。

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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