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天国の鍵13

その十三 アリーナ

 最初の村でハンスたちは食べ物と飲み物を手に入れ、農家に泊めてもらって一休みしたあと、旅を続けました。ピエールとヤクシーはグリセリード語ができるので、便利です。ハンスは二人の話すのを聞いていて少しずつおぼえようと思いました。
 それから少し大きな村に来ました。その村でピエールは馬を二頭買いました。お金は金の粒をわたしています。アスカルファンをでるときに用意してあったのでしょう。
 三人とも乗り物ができたので、早く旅ができます。
 山脈の上はもう雪がつもっていたのに、ここではまだまだ暑(あつ)くて、日陰にはいるとほっとするくらいです。
 三人が乾いて埃(ほこり)っぽい街道の木陰で休んでいると、馬に乗った騎士たちが数名、向こうからやってきました。
 騎士たちは三人の前で馬を止め、馬上からたずねました。
「お前たち、十歳くらいの娘が通るのを見なかったか?」
ピエールがグリセリード語で、見なかったと答えると、騎士は
「そうか、確かにこの方向だと思ったが……」
とつぶやいて、他の騎士たちとともに、西の方に向かって馬を走らせて行きました。
 騎士たちがいなくなった後、ピエールたちのいた木の後ろの藪(やぶ、木の茂みです)からがさがさと音がしました。
 おどろいてふりむくと、藪から一人の女の子が出てきます。
「やれやれ、見つかるところだった」
 男の子のようにズボンをはいて、顔はほこりっぽく汚れてますが、赤毛のとてもかわいい子です。美人といってもいいでしょう。一目でハンスはこの子にのぼせてしまいました。でも、よく見ると、この子はずいぶん気が強そうで、わがままそうです。
「へへっ、間抜けなやつら」
遠くに行った騎士たちのあとを目でおいながら、その女の子は言いました。そして、ピエールたちに向かってにやっと笑って言います。
「ねえ、なにか食べ物ないかな。おなかぺこぺこなんだ」
ハンスがあわてて皮袋から食べ物をだそうとすると、ヤクシーがそれを止めました。
「待って。その前に、あなたは何者か教えてちょうだい。どうしてあの騎士たちに追われていたの?」
 すると女の子はヤクシーをにらんで言います。
「なんだっていいじゃないか。ケチンボのおばさん!」
「まあ、口の悪い子。名前は?」
「シル……いや、アリーナだ。名前言ったから、早く食べ物くれ」
どうも、アリーナという名前は嘘(うそ)みたいです。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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