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天国の鍵10

その十 魔法の教え

 しぶしぶではありましたが、ロレンゾはハンスに魔法をいくつか教えてくれました。その一つは、グラムサイトと言って、ふつうの人間には見えないものを見る力です。たとえば妖精などが見えるし、地底の小人の抜け穴などもわかるそうです。また、隠れた宝物を見つけることもできるそうですが、いつでも思いどおりに見えるとはかぎらないそうです。
「心がちょうど、見たいものと調子があったときに見えるのじゃ」
 ロレンゾはそう言いました。皆さんは、ラジオのチャンネルを合わせるようなものだと思えばいいでしょう。
 やり方は聞きましたが、ハンスにはなにも見えません。
「そのうち見えるようになるさ。気長にれんしゅうすることだ」
 ザラストと同じことを、このロレンゾも言ってます。まったく、ハンスのまわりの魔法使いって、なんて地味なやつばかりなんでしょう。作者のわたしもあきれてしまいます。マンガなら、原子爆弾くらい強力な魔法がどんどんでてくるのにね。
 そのほかに、ハンスは空中浮遊の魔法を教わりました。
「もっとも、実はこれはわしも成功したことはない。だが、できたら面白いだろうな、と思っておぼえたんじゃ。れんしゅうすれば、お前はできるかもしれんぞ」
 なんだか、たよりない魔法使いです。
「わしはもう魔法にはあまり興味(きょうみ)がないんじゃよ。神さまの作ったこの世界でじゅうぶん満足じゃ。花や木や太陽がこの世にあることくらい素晴らしい魔法はない。人間がどんな想像力をはたらかせても、こんなものは考え出せないのじゃ。それを考えると魔法でカエルを一匹つくりだしたところで意味もないことじゃが、魔法にはそれすらできないんじゃよ」
 ロレンゾはそんなことを言います。ザラストもカエルを例にだしましたが、カエルになにか意味でもあるのでしょうか。それとも、二人ともカエルコンプレックスなのでしょうか。(カエルがこの話になにか関係すると思った方は、忘れてください。作者自身が、なんだかカエルってのは魔法的な生き物だな、と思っているだけですから。あの顔も体も魔法使いを思わせます。そうじゃありませんか?)
 そのほか、いくつか魔法を教わりましたが、そのどれも、じっさいにできるためにはれんしゅうが必要(ひつよう)だ、ということで、それが本当の魔法かそうでないかは、今のところはわかりません。
 ところで、この家の主人マルスは、まだ二十二、三歳の若者でしたが、マチルダのような美人がなんでこんな若者と結婚したのかな、と思うくらい平凡でおとなしい若者です。もっとも、体だけはたくましく、農夫としてはすばらしいはたらきができるだろうな、と思われます。彼は他の人々とあまり話が合わないようで、他の人々の会話が昔話になると、とほうにくれたような顔をします。すると、マチルダが気を使って話題を変えるのです。

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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